公開日 2005/12/30 12:21

【WEB版 飯塚克味 コレクター魂】にっかつロマンポルノDVDで復活!

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2005年10月からにっかつロマンポルノの壮大なDVDリリースが始まっているのはご存知だろうか? にっかつロマンポルノは石原裕次郎や赤木圭一郎、宍戸錠などのスターや、川島雄三、鈴木清順などの名監督を輩出した名門スタジオ、日活が映画産業の衰退によって集客のためにスタートさせた成人映画である。

数多くの名作を世に出した映画会社だけに成人映画に踏み切る際には多くのスタッフが反対し、会社を去っていったとも聞くが、相当のスタッフたちが残ってロマンポルノに参加したこともまた事実である。

成人映画ゆえ、ジャンル成立に必要な濡れ場はどの作品にもある。しかし1本でも作品を見れば分かるが、作り手たちは観客の単純な性的興奮のために映画を作っていたわけではない。どの作品も時代を濃密に切り取り、当時の世相を見事なまでに反映させているのだ。それは今回リリースされた作品群を見れば一目瞭然である。

実は筆者は80年代の学生時代に初めてにっかつ作品に触れた。見た作品のタイトルは忘れてしまったが、その時は新宿の昭和館地下という名画座で3本立てだった。どういう訳だか、3本とも違う会社だったが、にっかつ以外の作品はとても映画と呼べる代物ではなく、筋を追うことすらままならなかった。それに比べるとにっかつ作品は撮影、録音といった映画に必要な基本的な技術はしっかりしているし、伝えたいテーマも明確。上映時間が1時間強とは言え、しっかりと映画を楽しませてくれたのだ。

特に80年代は現在の邦画界の中枢を担う金子修介、森田芳光や滝田洋二郎、また既に故人となってしまったが相米慎次や那須博之など多くの名匠を生み出している。また『リング』で知られる中田秀夫監督も日活出身で今回大量の作品がリリースされる小沼勝監督を師と仰ぎ、ドキュメンタリーも作っているほどだ。

このリリースは2ヶ月に1回、一度に15タイトルをリリース、合計150タイトルまで続くというもので1枚の価格が3,990円であることを考えると決して安くはないのだが、この機会を逃すといつまた見ることができるか分からないものばかりなので、可能な限り入手して損はないだろう。


根岸吉太郎監督『濡れた週末』
10月21日リリース分では先日、新作『雪に願うこと』で東京国際映画祭サクラグランプリを授賞した根岸吉太郎監督の『濡れた週末』、平成ガメラの金子修介監督作品『宇野鴻一郎の濡れて打つ』、『阿修羅のごとく』の森田芳光監督作品『ピンクカット太く愛して深く愛して』などがお薦めだ。いずれも助監督から監督に進出したばかりの作品で、どの監督も映画を作る意欲に燃えているのが作品からよく伝わってくる。


田中登監督『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』
12月22日にリリースされた中では田中登監督の『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』が何と言っても凄かった。同じ原作を基に実相寺昭雄監督、三上博史主演による94年作もあるが、おどろおどろしい雰囲気はこちらの方が断然勝っている。ピエロ姿の間男と情事にふける貴婦人・清宮美那子、そして屋根裏でのぞきを重ねる男・郷田三郎の何とも言えぬ退廃に満ちた世界観が低予算とは思えない映像の中で描かれる。郷田を演じるのは今や日本映画界には欠かせないバイプレーヤーでもある石橋蓮司。余計なお世話かもしれないが髪はふさふさだ。そして貴婦人はピンク映画界で大女優の地位を築いた宮下順子。二人とも乱歩の世界を表現するにはこれ以上はないと思わせる素晴らしい演技を披露している。

田中登監督はこの他にも『実録 阿部定』と『(秘)女郎責め地獄』も同時リリース。『実録 阿部定』はその年「キネマ旬報」で10位、「映画芸術」では2位にランクされるほどの高評価を得ている。その他にも吉永小百合主演『キューポラのある街』の浦山桐郎監督の『暗室』や、谷崎潤一郎原作の『鍵』といった作品も必見だ。

次回になる3月には『スチームボーイ』の大友克洋が原作を担当した『高校エロトピア 赤い制服』や『太陽を盗んだ男』の長谷川和彦が脚本を務めた『濡れた荒野を走れ』もリリースされる。

これまでにもアップリンクや他のメーカーからにっかつロマンポルノが発売されていたが、今回の違いは何と言ってもその高画質ぶり! オリジナルネガよりローコントラストニュープリントを起こし、更にテレシネしたマスターの傷や汚れまで修正されている。解説書には作品内容の他にDVD制作に関わったスタッフのリストまで付いているのだからその品質は保証付きである。

東京・渋谷でよく行われた女性限定のピンク映画オールナイトイベントには観客が殺到したそうだが、ロマンポルノでは女性の心情も丁寧に描かれているのでそれも当然のこと。派手なタイトルに紛らわされることなく、作品の真価をしっかりと見つめて欲しい!

(飯塚克味)

※文中の「にっかつ」「日活」はメーカー表記としては「日活」に統一されていますが、ロマンポルノ時代は「にっかつ」だったため、あえてそのように表記しました。

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