公開日 2025/03/19 08:00

iFi audioは「市場をリードするテック・カンパニー」。グローバルセールス担当者がブランド理念を熱弁

「世界初」の技術を積極的に採用
筑井真奈
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英国のオーディオブランドで、日本でも高い人気を誇るiFi audio。同社のグローバルセールス担当のマイルス・ロバーツ氏が来日し、iFi audioのフィロソフィーやブランド戦略について披露するカンファレンスが開催された。

iFi Audioのグローバルビジネス部ディレクターのマイルス・ロバーツさん

iFi audioは、2012年に創業。2013年よりトップウイングが日本における輸入代理店業務をスタートしたが、2024年夏より(株)エミライに移管。今回のイベントは、エミライが代理店になったことで、改めて日本のオーディオ市場に向けてiFi audio、そしてそのサブブランドであるSilentPowerを紹介する内容となっている。

発表会に先立ち、エミライの取締役・島幸太郎氏は、現在のオーディオマーケットについて、「パーソナルライズされた環境で音楽を楽しむシーンが増えています」と言及。「ポータブルオーディオ、ホームオーディオといった利用場所の分類ではなくて、ユーザーの楽しみ方を軸とした新たな製品が登場してきています。また、単に音楽を楽しむだけではなく、さまざまなサービスと連携して生活を豊かにするものとして進化しています」と分析する。

エミライの島幸太郎氏

またiFi audioというブランドについて、「昨年から代理店業務をスタートし、さまざまな意見交換を重ねていく中で、オーディオ愛好家的なセンスに根ざした、最新技術をもったブランドと確信しました」と紹介。そして、「製品の使いこなしのアイデアには、ユーザーの感動や没入感をもたらす、オーディオブランドとして必要不可欠な哲学があります」と、オーディオならではの独自の世界観を持つブランドであることを改めて強調した。

マイルス氏は、オーディオ市場においてすでに35年以上のキャリアを重ねており、もともとはサウンドクラフト、スチューダー、SSLといったプロ向けオーディオ製品の欧州セールスを担当。その後、イギリスのスピーカーブランド・PMCのマネージャーに就任。2010年からiFi audioにジョインして、ヨーロッパ、アジア、アメリカなど全世界のセールスを担当しているという。

マイルス氏は、「iFi audioにとって日本はとても大事なマーケットです」と宣言するとともに、“テック・カンパニー” としての誇りを持つiFi audioの歴史について改めて解説した。

iFi audioは、ハイエンドオーディオブランド・AMR(Abbingdon Music Research)の新ブランドとして2012年に創設された。その背景についてマイルス氏は、「世界的な金融危機」と「ネットワーク環境の発展」があったという。「2008年頃に、リーマンショックなどの金融危機が起こり、HiFiオーディオ市場にも経済的に大きなインパクトがありました。そしてもうひとつ、テクノロジー面でも大きな変化があり、Wi-Fiやモバイルネットワークが大きく普及していきました。そんな中で、“パーソナル・オーディオ” の可能性が今後広がっていくと考え、iFi audioという新しいブランドを立ち上げました」と、コンパクトで良質なオーディオに対する需要が高まっていた背景を振り返る。

ハイエンドオーディオブランド、AMRのサブブランドとして設立。現在はプロ向けのiFi studioブランドと、オーディオソリューションとしてのSilentPowerも展開

iFi audioのヘッドオフィスはイギリスのサウスポートにあり、セールスやマーケティングといった主要な業務を担当している。またiFi audioが重視しているR&Dチームは、イギリスのほか中国にも拠点をおき、東西のさまざまな市場の動向を調査したうえで製品開発を行っている。生産は中国、ベトナムの専門の工場で行っているほか、メキシコにも新しい工場を計画しているという。

iFi audioのヘッドオフィス

イギリス本国には約50人、グローバルでは200人以上のスタッフを擁しているが、その33%がR&Dの専門スタッフとなっており、先進的な技術開発に非常に力を入れているブランドであるとも強調する。

現在のホームオーディオの主力ラインナップ。100ポンド以下から4,000ポンドまで幅広い

現在のポータブルオーディオの主力ラインアップ。小型プロダクトからMEMS対応のDiabloまで展開

マイルス氏はiFi audioの製品開発の哲学として、以下の4つのポイントを重視していると教えてくれた。「美しいデザイン」「回路設計技術」「高品質な生産クオリティ」「さまざまな市場関係者とのパートナーシップ」、そしてこれらの4点をそれぞれ連携させて強化していくことが重要だと考えているという。

特に回路デザインについては、クアルコムやXMOS、テキサス・インスツルメンツ、バーブラウンといったグローバルなチップメーカーと緊密に協力しながら製品開発を行ってきたという。さらに、「ただチップを買ってきて搭載するだけではなく、その可能性を最大限 “拡張” できるような開発を行っています」と自社の高いカスタマイズ技術に自信を見せる。

ブランドとしても30以上の特許を所有しており、過去の製品を振り返ってみても、DSD再生やアップサンプリング技術、電源におけるアクティブ・ノイズ・キャンセリング、高品位なBluetoothコーデックへの対応、MQAへの対応、MEMS対応アンプの開発など、「世界初」のプロダクト、市場を “リードする” 技術を積極的に製品に実装してきた。

「世界初」の技術を積極的に製品に実装してきた

また生産のクオリティコントロールについても、基本的にパーツはすべて内製していること、またアップル社やソニーなどにパーツを提供しているプレミアムプラスのサプライヤーと契約を結んでいると説明。またISO9001/ISO14001といった品質管理・環境マネージメントシステムのルールや、国ごとに異なる電源や無線のルールを遵守した製品開発を行っているという。

最後の「パートナーシップ」の具体例として、JVCケンウッドとの「K2」テクノロジーについて言及。2024年に発表した小型USB-DAC/アンプ「GO bar Kensei」は、JVCケンウッドブランド以外の製品で初めて「K2テクノロジー」を搭載された製品となる。JVCケンウッドの高音質化技術が世界で評価されたことは、日本のオーディオ市場にとっても大きな驚きであった。

JVCKenwoodの「K2テクノロジー」ともコラボレーション

K2は、1987年から当時の日本ビクターとビクター音楽産業が中心となった研究を重ねてきた高音質化情報処理技術で、圧縮によって失われた高音域を補正する技術となる。K2の特徴について、JVCケンウッドの音質マイスターである秋元秀之氏は、「(周波数ではなく)時間軸方向の信号処理を行なっている点」があると解説。

さらに、ビクタースタジオは長年の音楽制作による「マスターデータ」を大量に保有しており、その「マスターデータ」が補間データ作成時の基準となっていると説明。「失われたデータを勝手に作っているものではありません」とコメントするとともに、「最終的にはエンジニアが耳で確認して判断しています」というK2技術の理念を強調した。

マイルスさんとJVCケンウッドの音質マイスター・秋元秀之さん(右)

「GO bar Kensei」についても、ビクタースタジオのエンジニアも試聴し、音質を保証したプロダクトとなっており、iFi audioとJVCケンウッドチームの強固なパートナーシップを伺わせる。

右がK2HDを搭載した「GO bar Kensei」

iFi audioのブランド横展開としては、2023年にはプロ向けオーディオブランド「iFi STUDIO」を立ち上げている。スタジオの制作環境も変わり、iFi audioの技術がスタジオ向けにも高く評価されたことがその背景にあり、スタジオ向けのDACやヘッドホンアンプなどをラインナップ。グラミー賞を受賞したレコーディングエンジニアのジム・アンダーソンも愛用しているという。

2024年にはアクセサリー類を中心とした「SilentPower」ブランドを創設。「LAN iSilencer」などがiFi audioのアクセサリーとして非常に成功を収めたことから、新しいブランドとして始動することになったのだという。

マイルス氏の話をうかがって、改めてiFi audioはオーディオ市場における「先駆者である」という思いを強く持った。ここ日本においても、ホーム/ポータブルを問わず、小型でお求めやすく、パーソナルなオーディオ製品群が、新しいオーディオファンの獲得に大いに貢献したことは言うまでもない。

強力な自社技術を背景に、未踏の地に挑むパイオニア。「わたしたちは市場をリードする先鋭的な存在であり、フォロワー(追従者)になりたいとは考えていません」。創業から10年を超えてなお、時代の先端を走り続ける信念の強さを改めて感じさせてくれた。

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