PR 公開日 2023/12/06 07:30

“静電型ヘッドホン” の最前線、スタックス修理の現場に潜入

静電型ヘッドホンの上手な扱い方も聞いた

■10年を越えて使われるイヤースピーカー、もっとも多い故障原因は「経年劣化」


実際のところ、イヤースピーカーではどんな故障が多いのか。訪ねた先のスタックスサービス課のスタッフに質問してみた。

「修理を依頼される製品は、平均的に10年以上使っていただいているものが多いです。長ければ20年、30年と使われた製品のご相談もありますが、修理が必要な原因として一番多いのは『経年劣化による左右のアンバランス』ですね」

長年愛用されることは珍しくないというイヤースピーカーだが、どんなに大切に扱っていようと、10年もすぎれば素材の劣化は避けられない。イヤーパッドやヘッドパッドがボロボロになったり、ケースホルダー(ハウジングを支える部位)が緩んだりといった症状が分かりやすい例だが、内部も同じように気温や湿度の変化、衝撃の影響などが溜まっていく。

「特に今年の夏は最高気温が40度近くなりましたが、そのような高温下においておくと、振動膜の接着部が溶け出して緩んできたりするんですね。それで、ユニットの不具合が起こりやすくなります。実際イヤースピーカーの修理依頼は、夏を過ぎた10月、11月ごろに増えるんです」

こうした経年劣化が積み重なることで、徐々に左右どちらかの音圧が小さくなっていき、ユーザーに不調として認識されることになるという。

スピーカーユニットの不調の場合、左右どちらか一方だけが故障している場合でも、両方のスピーカーユニットを新しいペアに交換することになる。スタックスのイヤースピーカーは、必ずスピーカーユニットを測定し、特性の揃ったマッチドペアを搭載しているからだ。

スピーカーユニットの不調の場合、故障は片側のみでも両方ペアで交換する

修理作業を終えた後は、さらに1週間エージングを行うことで、隠れた不具合が無いか様子を見る。そこで問題がなければ修理完了となり、約2週間かけて修理を終えた製品が依頼主の手元に戻っていくのだ。

修理作業を終えた後、1週間のエージングで隠れた不具合を洗い出す

ドライバーユニット(アンプ)も測定機器で検査。左右chごとに波形を測り、エージングを行っていた

スタックスの修理体制について、スタッフは次のように特徴を語る。

「スタックスでは、修理を行うサービス課と、開発、製造の部署はすべて同じ建物に入っていますので、故障の原因の特定と対策を連携して取ることができるのも強みです。修理のデータを開発に活かすこともあります。近年のイヤースピーカーはケーブルを着脱できるようにしていますが、これを採用してからケーブルまわりの故障率が大きく減っているんですよ」

近年のイヤースピーカーではケーブル着脱式を採用したことで、ケーブルまわりの故障率が大きく改善した

■「定期メンテナンス」を活用し静電型の音質を末永く楽しんでほしい


修理品や依頼主との確認を怠らず、開発/製造部署とも連携しているスタックスの修理体制。イヤースピーカーの音質を長きに渡り楽しめるようにとの心遣いがつまっているが、ユーザー側でも製品をより長く使い続けるためにできることはないのか、サービス課スタッフに聞いてみた。

まずひとつは、振動膜のまわりに触れないことだ。

「イヤースピーカーのケースは頑丈に作っていますし、振動膜を搭載するユニットも金属のメッシュやフィルターで守られています。ただ、振動膜の音を邪魔しないように薄くしていますので、フィルターについたゴミをピンセットで取ろうとしたり、掃除機で吸い取ろうとすれば、フィルターと振動膜まで破けてしまう恐れがあります。金属メッシュも、指で押すなどして凹みがつくと、振動膜の動きを妨げるようになるかもしれません」

イヤースピーカーについたゴミやホコリを取ろうとして、振動膜を破ってしまう事例がある

耳側をカバーする金属メッシュも、指で凹みがつくと振動膜と干渉する恐れも

前述の通り、スピーカーユニットの交換修理は左右ペアで行われるため、必然的に修理費も高くなりがちだ。イヤースピーカーのケース内にゴミが入って気になるという場合でも、カメラ用のゴム製のブロワーで優しく空気を吹きかけるに留めるのがよいだろう。

付着したゴミが気になったとしても、カメラ用のブロワーで優しく吹きかけるまでに留めておくと良い

同じように、振動膜に余計な負荷を与えないため、装着する際などイヤースピーカーの持ち方でも気をつけるとよい点がある。

「ケース外側の開口部をポンポンと触れたり押さえたりすると、わずかですが振動膜に負荷がかかります。すぐに故障に繋がったりはしませんが、何度も繰り返せば振動膜に負荷が蓄積し、寿命が短くなる可能性がありますので、イヤースピーカーを取り扱うときは両手でケースの横を持つことをお勧めします」

それからもう一つ、風呂上がりや汗を多量にかいた状態など、肌が湿った状態での着用を避けること。これはスピーカーユニットより、むしろイヤーパッドなどのトラブルに大きく関わってくるそうだ。

「スピーカーユニットはフィルターによってある程度湿気から守られますが、イヤーパッドはそうは行きません。天然皮革は水分にさらされることで縮んだり表面が硬化したりと、劣化が早まります。それに、水分と一緒に肌の皮脂や汚れも吸い込んでしまうので、場合によってはカビが生えることもあります」

「スピーカーユニットも、あまりに湿気にさらされ続ければフィルターにカビが生えたりしますし、古いモデルでそうなると交換修理もできません。体が湿っているときは、ちょっと涼んで乾かしてからお使いいただくと安心です。音楽を聴き終わったあと、イヤーパッドを乾いた布で拭っていただくと、なお長持ちするかと思います」

湿気はイヤーパッドの寿命に特に影響する。長時間装着した後は、乾いた布で拭くのも良い

サービス課では、ヘッドホンスタンドにキッチンペーパーを何重にも重ねて湿気を吸収させていた

こうしたイヤースピーカーの“いたわり方”をレクチャーした上で、サービス課のスタッフは、充実した修理体制を備えているからこそ、不調が起こる前に「定期メンテナンス」として利用してもらいたいと語る。

「弊社製品は長い間愛用いただけるように作っています。ただ表面上は壊れていなくとも、実際には10年経つと部品の劣化がどうしても避けられません。ですので、自動車や機械式時計などと同じ要領で、10年に1度くらいの頻度で『定期メンテナンス』としてお見せいただければ、トラブルのもとが大きくなる前に対処して、長く使い続けられることになります。愛用のイヤースピーカーを末永くお使いいただく上で、ぜひご検討いただければと思います」
(企画協力:有限会社スタックス)

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