公開日 2020/12/16 06:20
山下達郎 独占インタビュー。徹底的に音にこだわり選んだ、新しいライブのかたちとは
第2弾配信ライブは12/26開催
■「ライブハウスツアーを見たい」と願うリスナーに向けて発信したい
ーーさて、7月に行われた第1弾『TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING』は過去のライブ映像を編集・配信したものでしたが、12月26日に開催される『Tatsuro Yamashita SUPER STREAMING ACOUSTIC LIVE in Live Music JIROKICHI supported by G-SHOCK』はこのために収録されたものを配信する、いわば本当の意味での「配信ライブ」です。
山下:僕はライブハウスから出てきた人間なので、いつかはライブハウスに戻ろうという思いで、ここ5年くらいライブハウスツアーを行っていたんです。ライブハウスの場合、多くてもキャパ120人、下手したら7,80人くらいなので、チケット倍率も100倍くらいに膨れ上がってしまいます。そういうことに対する心苦しさはあるのですが、その分ホールツアーもコンスタントに行ってきているので、言ってみればライブハウスツアーは自分にとって道楽みたいなものなんですよね。その意味では配信ライブをやってみるチャンスとしても良いかなと思って。
だからね、あくまで不特定多数に対する発信じゃないんですよ。ホールツアーは大体年間で50本やってるので10万人くらいの動員があるんですが、その中でも「ライブハウスも見たい」と思ってくださる層に対しての、僕の個人的なリスナーへのシンパシーに対する発信なんです。
ーーすると今後配信を行うとしてもライブハウスツアーを?
山下:それは分かりません。来年の7月からホールツアーが始まる予定ですけど、こういう情勢が続いてお客さんが本来の半分しか入れられない、なんて問題も起こりうるわけなので、未知数ですがホールツアーの配信をやる可能性も大いにあります。
ーー今回のライブは事前に収録したものを配信するかたちですが、リアルタイムでのライブ配信などは考えていらっしゃいますか?
山下:全くありませんね。ミックスやマスタリング無しでは高クオリティで届けられませんから。会場のPAアウトはあくまで会場の音場構成のためのものであって、それですら事故が起きることがあるのに、ましてやネット用にその場でミックスして出そうとしても十分な音圧が稼げません。僕も30年以上デジタルリマスタリングというものをずっとやってきて、それでようやく鑑賞に耐えられる音圧を出せているので、リアルタイムで配信する気は全くないです。
ーーなるほど。しかし昨今はこういう情勢もあって、多くの方が配信ライブに挑戦されていますよね。達郎さんは他の方の配信を見て、どういうことを思われますか?
山下:うーん…。結局ビデオソフトとあまり変わらないかな。配信って突き詰めていくと、どんどんテレビに近づいて行くんですよ。例えばテレビの音楽番組をひとつ作るとなると、時間をかけて台本やカメラ割りをしっかり作って、そういう準備をして本番を撮影するわけじゃないですか。配信でクオリティを高めるとなると、こういった工程が発生してどんどんテレビ的になっていく。ジレンマですね。
僕はあくまでお客さんの前でしかやったことなくて、今回のアコースティックライブで生まれて初めて無観客での演奏をやりましたけど、個人的には違和感が拭えないですね。うちの奥さん(注:竹内まりや)は、昔はテレビに出ていて経験が豊富なので、無観客状態にプレッシャーもないみたいですけど、僕はテレビに出たことないからカメラ目線とかも全然わからないですし。
次ページ「配信ライブ」はコロナ禍以降もビジネスチャンスとなり得るか
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