• ブランド
    特設サイト
公開日 2017/03/23 09:30

【集中連載】現地で見たNetflix “最強” の理由(1)ユーザーを1300のクラスタに分類するレコメンドエンジン

Netflix本社を取材
山本 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
Netflixオリジナルコンテンツの最新作『アイアン・フィスト』の配信が3月17日から世界同時に始まった。この機会に合わせて米Netflixが本社ツアーを実施し、コンテンツの制作と配信のために投入する最新のテクノロジーを世界各国から集まったジャーナリストに公開した。

当サイトでは、本イベントに関連するドルビー・ラボラトリーズのツアーと、Netflix本社のツアーを全2回のレポートで紹介してきた。今回から短期集中連載として、Netflixのテクノロジーについて、より具体的な内容へと深く入り込んでみよう。

アメリカのロスガトスに本社を構えるNetflixを訪問した

ユーザーの「行動履歴」を反映した高精度なレコメンエンジンの開発

Netflixは現在、全世界190以上の国々でサービスを展開している。本稿公開時点で世界9,300万人を超えているNetflix会員は、オリジナルのものを含む膨大なコンテンツを、PCのほかスマートテレビ、BDレコーダーなどのAV家電、Apple TVやChromecastなど外付けストリーミング機器、スマホやタブレットなどのモバイル機器、またゲームコンソールなどで視聴できる。

これだけ多くのユーザー、多種多彩なデバイスが同時にアクセスするNetflix。それを安定的に、かつ快適に提供するため、Netflixが特に力を入れている技術が、今回の本社ツアーで説明された。本稿ではまず、ユーザーインターフェースやレコメンデーションエンジンを担当するVice President Product InnovationのTodd Yellin氏のセッションを紹介しよう。

コンテンツパーソナライゼーションやUIまわりの技術を語るTodd Yellin氏

「Netflixには日々、たくさんの数のコンテンツが追加されています。レコメンデーションや検索エンジンなどを含め、Netflixの視聴体験そのものを、世界のどの地域にお住まいの方々にも快適に味わってもらえるようプラットフォームを整備することが、私のチームのミッションです」とYellin氏は切り出した。

「Netflixでは常にユーザーフレンドリーな体験を追求しています。誰だって、エンターテインメントコンテンツはカウチでリラックスしながら楽しみたいですよね? Netflixのコンテンツは様々なデバイスで楽しむことができますが、どんなデバイスを使ってもユーザーインターフェイスが統一されていて、スムーズな操作性が実現されていることが理想です。新しい機能は既存の機能とA/Bパターン比較を丁寧に行いながら、最終的にはユーザーの要望が強く帰ってきたものを優先しながら実装していきます」。

Yellin氏からは直近で、スマートテレビ向けのインターフェースについて行われたアップデートの内容が紹介された。まず、作品ごとのトップページに表示されるイメージ画像。従来は数枚の静止画によるスライドショーだったものが、動画のプレビューに変更されている。現在は1シークエンスを3回ほどループする仕様だが、これもユーザーからの反響をみながら長さを調節していくという。

これまでパソコンのインターフェースをスマートテレビでもそのまま踏襲してきたが、スマートテレビの場合はより動画プレビューとの親和性が高いと判断したことが、改善を図るきっかけとなった。サービスのローンチ後も、ユーザーからの反響を見て細かなポイントまで迅速に改善を図るやり方が『Netflix流』とYellin氏は胸を張る。確かにスマートテレビ、スマホとも、一昨年秋の国内ローンチの頃から比べると、使い勝手はかなりチューンアップされている。

モバイルアプリについては、レーティング(作品評価)機能が従来の5段階での星取り評価から、よりシンプルなサムアップ&ダウンに切り替わる。「インド・日本・韓国をはじめとするアジア各地域では特に、Netflixをモバイルで視聴するユーザーが増えています。各地域のユーザーから集めた声が反映された格好です」とYellin氏は説明する。

Netflixで公開されているコンテンツにより手軽に評価(レーティング)が加えられるよう、5段階の星評価からサムアップ・ダウンによる簡易な選択方式が採用される

レコメンデーション周辺の「パーソナライゼーション機能」のブラッシュアップもYellin氏のチームが担当する領域だ。Yellin氏は「Netflixの世界展開が拡大していくほどに、私たちが強く感じていることがあります。それは、アルゴリズムの構築にとって重要なクラスターの選別基準を、国籍や性別、年齢などの分類に分けることにあまり意味がなく、むしろ『行動履歴』をベースにしたアルゴリズムの方が、よりユーザーの好みを正確に把握できるという確信です」と説明する。

「Netflixでは行動履歴を基準にしたユーザーの好み(テイスト)を1,300以上の“テイストコミュニティ”と呼ぶクラスタに分類しています。“あなたにおすすめ”する内容については、ユーザーのある好みの傾向だけが強く結果に反映されてしまうと不便なものになってしまいます。より多様性に富んだ、思わず見たくなるようなおすすめリストをつくるためには、テイストコミュニティからの関連性を元にしたレコメンデーションの法則を上手に導き出すアルゴリズムがカギを握っています」。

おすすめタイトルとしてヒットした作品のページに入ると、トップに「パーセントマッチ」の数字が最低55%以上〜最大100%の値で表示される機能追加も実施する。もちろんその作品を視聴してみないことには、レコメンドが正しかったかどうかはわからないが、パーセンテージの高い作品はつい見てみたくなるという心理が働きそうだ。

ユーザーの好みを学習したパーソナライゼーションエンジンにより、新たにユーザーの好みをパーセンテージで予測する機能も加わる

この機能は日本でスマホを使ってチェックしてみたが、近いタイミングで世界各地域に向けてロールアウトされる予定。本稿執筆時点の3月21日にはまだ日本のサービスに追加されていないようだったので、機会を改めて精度をチェックしてみたい。

Yellin氏は、今後も様々なデバイスでNetflixの視聴体験を最適化するために、UIやレコメンデーションの改善を積極的に推し進めていくと力強く語った。レコメンドの精度をより高くしていく一方で、Facebookやツイッターなど他社のソーシャルサービスと連携し、友だちなど他者からのオススメをレコメンド結果に反映していくことについては否定的だったのが印象的だった。

(山本 敦)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 女子プロゴルフ「パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント」、4/26からの放送・配信予定
2 売価アップも品薄も問題にしないアキュフェーズの強さに感服 <販売店の声・売れ筋ランキング3月>
3 ソナスの新製品スピーカー「Lumina II Amator」が鋭い立ち上がり <ハイファイオーディオ売れ筋ランキング3月>
4 Prime Video、『ゴジラ-1.0』ほかゴジラ邦画実写全30作品や、Prime独占EP配信の『岸辺露伴は動かない』第4期など5月配信
5 ゲオ、43V型で4万円を切る狭額縁デザインの4K液晶テレビ
6 Anker、最大半額セールを楽天で実施中。完全ワイヤレスイヤホンは割引でさらにポイントアップも
7 『鬼滅テレビ -柱稽古編放送直前SP-』5/4 13時25分から無料配信。公開生放送の観覧受付開始
8 KEF、「LS60 Wireless」など一部スピーカー製品を値下げ。4月25日より
9 スカパー!、スティック型ストリーミング端末「スカパー!+(プラス)ネットスティック」を新開発
10 Netflixで「ご利用世帯の登録」画面が表示された場合の対処法は?
4/26 10:36 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー192号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.192
オーディオアクセサリー大全2024~2025
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2024~2025
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.21 2023 WINTER
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.21
プレミアムヘッドホンガイド Vol.31 2024 SPRING
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.31(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2023受賞製品お買い物ガイド(2023年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2023年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX