公開日 2016/09/07 10:00

ブランド70周年。DIATONEが新開発、NCV振動板採用スピーカーが描く新たな未来

【特別企画】注目のプロト機が登場
聞き手:林 正儀/構成:編集部
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自社開発新素材「NCV」を採用した“DIATONEの最先端”モデルが登場

林:振動板の素材を含め、パーツのほとんどを自社開発し発展を遂げてきたDIATONEですが、今度はカーボンナノチューブを採用した新素材「NCV」を使った振動板搭載モデルが具現化したわけですね。まだ試作機ということですが、今日初めて聴かせていただいて、その音には驚きました。

NCV振動板を採用したプロトタイプスピーカー

ちょっと話が遡りますと、三菱の4K対応液晶テレビにNCV振動板のスピーカーが搭載されたとき、条件の非常にシビアな薄型テレビという筐体のなかですごく正統派な、Hi-Fiサウンドを実現していてすごいと感心していたんです。佐藤さんとお話ししたときにも「NCVはできればHi-Fiスピーカーでもやって欲しい!」と口を酸っぱくして言っていたくらいなんですよ。なので、ついに!という感じです。ただ、まだ商品化は正式決定していないんですよね?

佐藤:そうなんです。この試作機を開発したのは、NCVという素材そのものの力をどれだけ引き出せるかという「挑戦」がまず大きな理由です。NCVはこれまでカーオーディオや4K対応液晶テレビに採用してきましたが、非常にポテンシャルが高い、と。そこで弊社の先端技術総合研究所や三田製作所、京都製作所が定期的に音響技術研究会を開いて検討を重ねていたんですね。

今年はDIATONEブランド創立70周年ということもあり、そういった社内の力を結集したものをひとつのカタチとして皆さんにご紹介することで、“DIATONEの最先端”をご体感いただきたいと考えました。

三菱電機(株)京都製作所 AV営業統轄部 商品企画担当部長 佐藤 岳氏

林:なるほど。原さん、この「NCV振動板」について、詳しく教えていただけますか?非常にオーディオ的な特性に優れているとか。

三菱電機が開発した新素材「NCV」を使った振動板

原:はい。NCVというのは「Nano Carbonized high Verocity」の略です。カーボンナノチューブと数種類の樹脂を最適に配合し、射出成形したのがNCV振動板です。DIATONEとしては過去にもアラミドハニカムやボロンなどの振動板を商品化しているんですが、量産できて、高性能で、ウーファーからトゥイーターまで作れる素材というのをずっと研究していたんです。NCV振動板ができあがったのは2011年。まず車載用オーディオに採用し、そこからさらにブラッシュアップを重ねています。今日聴いていただいたスピーカーに搭載されているのは第三世代目です。

最も進化しているのは、伝搬速度です。初代は秒速5,200〜5,300mで、これはアルミやチタンよりも優れた数値です。そして第三世代目は、秒速6,000mを超えるところまで来ています。しかも、紙にほぼ近い内部損失も有しているのです。ご存じの通り、内部損失がないと素材の固有振動が再生音に影響を与えてしまいます。こういう素材は、今のところ他にはないと自負しています。

NCV振動板はチタンやアルミニウムと同等の高伝搬速度と、紙と同等の固有音のなさ(内部損失の高さ)を実現しているのが大きな特徴だ

林:樹脂で金属にも負けないスピードが出るというのは驚きです。驚異的な素材ですね。

原:成形するときに、カーボンファイバーやナノチューブの配向が生まれて、その方向に音速が速くなっていくんです。しかもナノチューブがほどよく内部損失を生んでくれるんです。ちなみにこの配合や、コンデンスの方法には、三菱電機のノウハウが発揮されています。

林:トゥイーターは作りやすいけど面積の大きいウーファーは苦手…ということもないんですか。

原:ええ、どちらも同様に作れます。既にカーオーディオの方で直径25cmのウーファーまで実用化されています。音速が秒速6,000mを超える素材でトゥイーターからウーファーまでトータルで作れるスピーカーシステムは、そうそうないでしょう。


佐藤:たとえばベリリウムやダイヤモンドを使ったウーファーはありませんよね。なので結局、ウーファー用の伝搬速度の速い素材はなかなか他にはないんです。しかも我々のNCV振動板は内部損失にも優れている。そこが強みなんです。第三世代目のNCVは、音の立ち下がりが紙素材にかなり近くなったので、今回の採用に至りました。

林:でも新しい素材を、特にスピーカーに投入するのは難しいことでもあると思います。最終的に大事なのは「音質」ですから。

佐藤:伝搬速度がただ速ければいいというわけではないし、内部損失は有りすぎてもなさ過ぎても駄目。かといって「適度」の範囲は数値的に表せるものではないんですよね。なので最後はしっかり聴感でチェックしています。


原:音場が後ろに広がるスピーカーは数有れど、なかなか前に出てきてくれるモデルはありません。我々はそれを両立するために、ユニットはもちろんキャビネットの設計なども含めて、試聴を繰り返して最適な音を目指しています。


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