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貴重なヴィンテージ管も紹介

真空管アンプ基礎講座:「300B」「845」など代表的な出力管を知ろう

公開日 2021/12/30 08:00 飯田有抄(真空管解説:岡田 章)
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■試聴で音の違いを体験! 三極管の艶やかさと多極管の余裕

実際に球とアンプ形式の違いを音で確認してみた。使用したスピーカーは、 低能率型84dB(ソナス・ファベール「Lumina I」)と、高能率型93dB(クリプシュ「R-51M」)の2種類。

低能率タイプのスピーカー
Sonusfaber「Lumina T」能率:84dB(価格:108,900円/ペア税込)

高能率タイプのスピーカー
Klipsch「R-51M」能率:93dB(価格:39,800円/ペア税込)

アンプは出力管に多極管6BQ5のシングルアンプ(トライオード「Ruby」/出力3W)、300B使用のシングルアンプ(トライオード「TRV-A300XR」/出力8W)、そして多極管KT88のプッシュプルアンプ(トライオード「TRV-88SER」/出力35W)の3種類である。試聴した音源はコダーイ作曲の「ハーリ・ヤーノシュ」組曲第4曲「合戦とナポレオンの敗北」で、打楽器や金管楽器の活躍する華やかなオーケストラ作品である。


【低能率型スピーカー+6BQ5】(Lumina I+Ruby)
一番軽やかな組み合わせ。晴朗でクリアな響きが思いのほか心地よい。若干低音の弱さと、高音のシャンシャンするような響きは気になった。

【低能率型スピーカー+300B】(Lumina I+TRV-A300XR)
低音がグッと感じられ、全体的に太く滑らかな印象。音場が一気に広がった。

【低能率型スピーカー+KT88】(Lumina I+TRV-88SER)
金管楽器の華やかさなど、全体的に作品の派手なキャラクターが生きる。ひとつひとつの音の輪郭がはっきりするような印象で、定位がクリアになった。300Bアンプと比べると余裕はあるが、音質のテクスチュアはやや大味な印象に。

「三極管アンプ、シングルアンプは出力が小さいといっても、ひ弱に聴こえるわけではありませんね」

【高能率型スピーカー+6BQ5】(R-51M+Ruby)
スピーカーの違いがはっきりと分かった。金管楽器やタンバリンの響きが鮮やかに。やはり低音にやや物足りなさを感じたが、気分転換に音楽を聴くには申し分のない音質。
【高能率型スピーカー+300B】(R-51M+TRV-A300XR)
楽器ごとの音色の違いが鮮やか。特に木管楽器と金管楽器のキャラクターの違いが見事に再現される。エレガントで立体感に溢れ、音楽鑑賞として楽しい時間が過ごせる。
【高能率型スピーカー+KT88】】(R-51M+TRV-88SER)
能率の低いスピーカーよりも余裕が出たため、耳に刺さるような強さではなく、ふくよかで豊かな音になった。太く派手なキャラクターは変わりなく、明るく強めの響きが好きな人にはたまらないだろう。

高能率型スピーカーと組み合わせると、音がラクに鳴る印象

奥深く魅力満載の真空管の世界。まずはご自分の耳と感性で、好みのものを選んでみてはいかがだろうか。


本記事は『季刊・analog vol.73』からの転載です。

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