音楽の構成を解きほぐす快楽。進化するデスクトップオーディオ、IK Multimedia「iLoud Micro Monitor Pro」
アクティブスピーカーの注目プロダクトを紹介する連載<アクティブスピーカー最前線>、7機種目はイタリアのモニタースピーカーブランド・IK Multimediaの「iLoud Micro Monitor Pro」とサブウーファー「iLoud Sub」を取り上げよう。
音楽制作ユースを想定するイタリアのブランド
今回紹介するのは、スタジオ関連製品を手掛けるイタリアのブランドIK Multimediaのコンパクトなアクティブモニター「iLoud Micro Monitor Pro」とサブウーファー「iLoud Sub」。PCとの組み合わせに特化しており、音楽制作環境で使うことが想定されている。
iLoud Micro Monitor Proの外形寸法は106W×206H×158Dmmで、第5回で取り上げたruark audio「MR1mk3」以上にコンパクト。
モニター用途なだけあって接続性はごくシンプルで、音声入力はRCA/XLRアナログ入力のみ。あとは設置環境に応じたモードやEQの切り替えが可能だ。USB-Cは本機の大きな特徴となる音場補正機能を使う際に用いる。背面にボリュームノブを備えるが、基本は別途音量調節可能な機器を組み合わせることになるだろう。
ユニット構成は1インチ(25.4mm)・シルクドーム・トゥイーターと3インチ(76.2mm)・セルロース樹脂含有カスタムメイド・ミッドウーファーを搭載。高域/低域をそれぞれクラスDアンプで駆動するバイアンプ仕様で、小さくともスピーカーとしての仕様に抜かりはない。
壁の影響が比較的小さいフロントバスレフであること、また底面のフットが可動で上向きに角度を付けられる=トゥイーターを無理なく耳に向けられるため、設置の自由度は高い。
6.5インチユニット搭載のコンパクトサブウーファー
組み合わせるサブウーファーiLoud Subの外形寸法は244W×250H×283Dmmで、サブウーファーとしてはコンパクト。とはいえ机の上に置くようなものではないので、基本は机の下、足下に置くことになる。
ユニット構成は6.5インチ(約165mm)のアルミニウムウーファーと両側面の6.5インチのパッシブラジエーター。密閉でもバスレフでもなく、パッシブラジエーターが2発という構成はなかなか珍しい。
接続性は充実しており、RCA/XLR入出力にくわえ、PCとのデジタル接続のためのUSB-B入力も備える。Bluetooth接続も可能だ。
なお、iLoud Subはサブウーファーとはいえ、あくまでもメインとなるスピーカーの低域拡張を目的とするため、映像音響用のLFE入力を持たない。DACやオーディオインターフェースのアナログ出力をiLoud Subに入力し、iLoud Subからのアナログ出力をiLoud Micro Monitor Pro(または他のアクティブスピーカー)に接続する、という形になる。
iLoud Micro Monitor ProとiLoud Subのクロスオーバーは機器本体では50Hz/80Hzが設定可能で、音場補正機能を使う際の設定ポジションもある。
iLoud Micro Monitor ProとiLoud Subには共に測定用マイクが付属し、非常に充実した音場補正機能が利用できる。……のだが、その紹介のためにはかなりの文字数が必要で少々本連載のトーンに合わないことと、入り口のハードルを上げたくないこともあって、今回の記事では純粋に本体のみで使った場合のインプレッションをお届けする。音場補正機能については、後日補足記事として別途作成する予定だ。
「音源がどのように作られているか」を解きほぐす
さて、冒頭で述べたように、iLoud Micro Monitor ProとiLoud Subの組み合わせは仕様からして明らかに「PCとの組み合わせ」を前提にしており、テストもデスクトップ環境でのみ行った。念のため言っておくと、「PCとの組み合わせが前提であること」と「鑑賞目的で使用すること」は問題なく両立する。
まずはiLoud Micro Monitor Proを単体で聴いたが、真っ先に意識されたのは定位の精密さだった。筆者の幅160cmを目いっぱい使ってセットアップでも情報量は薄くならず、音源の構成要素は空間のあるべき場所に、そしてボーカルは中央にピンポイントに定位する。空間の見通しが抜群に良いため、結果的にパンニングの様子も手に取るようにわかる。
リスナーとして「音源がどのように作られているか」を解きほぐしていくような快感があり、これこそ「モニタースピーカーを観賞用に使う意味」だと膝を打った。
iLoud Micro Monitor Proはモニターらしい高精度な中高域は当然として、低域についてもサイズを考えればおおいに健闘している。さすがに空気を震わすとか腹に響くと形容されるようなものではないにせよ、かなり下まできちんと耳に届き、音として認識できるレベルの低域再生が実現されている。
そのうえで机の下に置いたiLoud Subと組み合わせると、当然ながら低域の感触は大きく変化する。クロスオーバーを50Hzに設定すると、サブウーファーとしての振舞いは穏当かつ教科書的で、iLoud Micro Monitor Pro単体の印象にはほとんど影響を与えないまま、低域の一番深い部分が拡張される。サイズ的な限界から聴こえなかった音が聴こえ、今まで見えなかった輪郭が見えるというイメージだ。
続いて80Hzに設定すると、明らかに低域が増強される、という印象になる。ベースラインが太く張り出し、バスドラムのキックも俄然存在感を増す。「フラットな帯域の拡張」とは異なるのだろうが、鑑賞目的、「音楽を聴く楽しさ」という点ではこちらに軍配が上がる。
また音楽以上にサブウーファーが威力を発揮するのが映像再生で、机上にはコンパクトなスピーカーしかないのに、出てくる音は深々とした低音を伴う大スケールというギャップもまた楽しめた。
iLoud Micro Monitor Pro はモニターの名の通りの精密な再生音を聴かせ、そしてiLoud Subとの組み合わせは、単に低域の充実というだけでなく、机に大型のスピーカーを置けない場合、いかに低域再生能力を得るかという課題に対する現実的な回答だった。机の上には置けずとも、机の下なら置き得るのだから。
省スペースでシステムを構築する必要があり、なおかつ音源の構成要素を分解する聴き方に快感を覚えるのなら、音場補正を勘定に入れずともじゅうぶんに魅力的な選択肢となるだろう。

