BluOSアプリの操作性もGOOD
【Qobuzを楽しむ10万円プラン】BLUESOUND×ADAMのアクティブSPで楽しむデスクトップオーディオ!
■オーディオ機器との連携がしやすいのがQobuzの魅力!
昨年10月に日本で待望のスタートを迎え、大きな注目を集めている音楽ストリーミングサービス「Qobuz」。Qobuzはいちはやくストリーミングで最大192kHz/24bitのロスレス/ハイレゾ配信を始めるなど、「TIDAL」と並んでオーディオファンに特化したサービスとして確固たる地位を築いている。また、TIDALと異なりストリーミングだけでなく、ハイレゾ音源のダウンロード販売も同時に行っていることが大きな特徴となっている。
さて、単に「ロスレス/ハイレゾでストリーミング配信を行っている」というだけなら、Apple MusicやAmazon Musicなど、日本で利用できるサービスは他にもある。それでは、Qobuzがそれらのサービスと決定的に異なる点とは何か。ずばり、「オーディオ製品との連携」である。
Qobuzは「オーディオ製品からサービスを利用する」ための仕組みを用意しており、それを用いた「Qobuzに対応するオーディオ機器」が数多く存在する(同様の機能はAmazon Musicにもあるが、実際に対応するメーカー/ブランドはごく少数に限られる)。
つまり、QobuzはPCを介することなく、対応するネットワークプレーヤー/トランスポートを導入すれば即座にシステムに組み込むことができ、しかも、対応製品も非常に多い。これはオーディオファンにとって、音楽ストリーミングサービスを自分のシステムに取り入れるうえで大きな追い風となる。
今回はそんなQobuzの日本スタートを受けて、「Qobuzを聴くためのシステム」を5つの価格帯、具体的には10万円・20万円・30万円・50万円・100万円という想定で構築し、それぞれ紹介・提案していく。
1億曲に及ぶ楽曲をロスレス/ハイレゾ品質で、しかもオーディオ機器を使って聴けるQobuzは、オーディオファンと音楽ファンの双方にとって極めて魅力的なサービスである。特にネットワークオーディオに興味を持ちながらも、CDのリッピングや音源のダウンロードといった作業にハードルを感じていた人にとっては、それを一気に解消するQobuzはまさに福音となり得る。
一連の記事を通じて、Qobuz導入の一助となれば幸いだ。
【Qobuzを楽しむ20万円プラン】JBL×ヤマハ、革新を続ける名門ブランドの最新ストリーミングサウンド
(3月17日公開予定)【Qobuzを楽しむ30万円プラン】
(3月24日公開予定)【Qobuzを楽しむ50万円プラン】
(3月31日公開予定)【Qobuzを楽しむ100万円プラン】
■アクティブスピーカーの活用でシンプルなシステムを構築
トップバッターとなるのは、Bluesoundのネットワークプレーヤー「NODE NANO」とADAMのアクティブスピーカー「D3V」から成るシステム。金額的には10万円を想定した、シンプル&コンパクトな構成だ。
NODE NANOはBluesoundの新製品で、従来の同社製品よりもサイズを小型化して低価格を実現している。従来機から一部端子や機能の省略はあるものの、同社の誇るプラットフォーム「BluOS」による、ネットワークプレーヤーとしての高い完成度は折り紙付き。また、DACチップにはESS ES9039Q2Mを搭載するなど、オーディオ機器としての作り込みにも抜かりはない。
なお、Bluesoundはユーザー所有の音源の再生よりも音楽ストリーミングサービスの活用を重視しており、その観点から自社製品を「ネットワークプレーヤー」ではなく「ストリーマー」と呼称している。つまるところ、Bluesound製品に限らず「ストリーマー」とは「ストリーミングサービスに対応するという点を強調したネットワークプレーヤー/トランスポートの言い換え」に過ぎないのだが、今回の記事はあくまでQobuzがメインテーマということもあり、以降は「ストリーマー」と表記することにする。
D3Vはモニタースピーカーの老舗ADAM Audioの新製品で、同社製品としては群を抜いてコンパクト。デスクトップ環境など、スペースに制約のある環境にも無理なく導入できる。同社の象徴ともなっているAMTトゥイーターの採用、両サイドへのパッシブラジエーターの搭載など、こちらも手頃な価格ながら、内容は非常に本格的だ。
D3Vはアナログ入力とPC接続用のUSB-C入力の2系統を備えているが、スタジオ用途を意識したためか、アナログ入力は一般的なRCAではなくTSフォン入力となっている。オーディオ機器との組み合わせでは多くの場合で変換ケーブルが必要になると思われるので、その点は注意を要する。
NODE NANOとD3Vはそのコンパクトさを活かして、本格的なスタンド設置ではなく、卓上への設置を想定したセットアップ(両機はRCA→TSフォンの変換ケーブルで接続)でテストした。ちなみに今回の企画では、「実際に多くの人が聴いている曲」の方が参考になるだろうという判断し、音質評価に使う楽曲はQobuzの「Streaming charts」の試聴時の上位から選出している。
■鮮度感もよくオーディオ的に高度な再生クオリティを実現
チャートのトップということで最初に聴いたノラ・ジョーンズ「Come Away With Me」の時点で、立体的なステレオイメージと中心にピタリと定位するボーカル、スピーカーを大きく越える左右の広がりに度肝を抜かれてしまった。ごく小規模なシステム・セットアップから、完全に良い意味で予想を裏切るオーディオ的に高度な、かつ豊かな再生音が得られており、一聴して驚きを禁じ得ない。
ビリー・アイリッシュ「bad guy」ではD3Vのパッシブラジエーターが効いているのか、持ち味の強烈かつパルシブな低域も見事に再生しており、レンジの広さも印象的。米津玄師「Plazma」はハイテンポかつ電子音が乱れ舞う曲で、システムの解像度が足りなければまさに音が団子になって悲惨なことになりそうだが、余裕で音を描き分ける。高域の再生能力や全体的な解像度も確かなものだ。ジョン・コルトレーン「Blue Train」の鮮度感の高さも素晴らしい。
基本的にはソースごとの音の差・音作りの違いをはっきりと出す傾向で、この辺りはやはりD3Vのモニタースピーカーの系譜を思わせる。チョ・ソンジンの『ラヴェル:ソロ・ピアノ作品全集』から「亡き王女のためのパヴァーヌ」では繊細なピアノのタッチもじゅうぶんに感じられ、明晰一辺倒というわけでもない。システムトータルの音の傾向はD3Vのキャラクターが支配的という印象だが、解像度や情報量といった部分は上流であるNODE NANOの貢献も大きい。
NODE NANOは上流の再生機器として音質面で性能を発揮するだけでなく、操作性、もっと言えば「体験」の部分ではシステムの価値を決定づける。コントロールアプリ「BluOS Controller」を用いたNODE NANOの操作は高いレベルで洗練されており、Qobuzへのアクセス、音源のブラウズ、再生という一連のプロセスをスムーズに行える。ブランドの中では廉価機とはいえ、Bluesoundらしい「体験の上質さ」は上位機となんら変わるところはない。
この記事で紹介したNODE NANOとD3Vは、最先端のストリーマーと老舗が手掛ける最新モニタースピーカーというコンパクトながら「ガチ」の組み合わせであり、今回のセットアップもまたコンパクトな環境を想定したものだったが、出てくる音は実に満足度の高いものだった。そしてBluOSを搭載するNODE NANOのおかげで、音質のみならず「体験」という点も高いレベルが実現されている。
「音楽をいい音で聴きたい」というニーズに応えるために必要なのは、なにも仰々しい大規模なシステムだけではない。省スペースで設置可能で、なおかつ素晴らしい体験を実現するシステムも同様に大切なのだと、NODE NANOとD3Vを通じてあらためて感じた次第だ。