ハイエンド・オーディオにおけるアクティブスピーカーの可能性を問う。ホーンの魅惑、Avangarde「OPUS 1」
アクティブスピーカーというと、オーディオ界隈においてはどうしても「PCサプライ」的なイメージが強い印象があるのだが、本連載の第0回にて「価格帯を問わず、様々なアクティブスピーカーを取り扱っていく予定」と書いた通り、本連載はそのようなイメージを払拭したいという意図もある。
「アクティブスピーカー最前線」と銘打った本連載も今回で4回目。いよいよ「間違いなくハイエンド」を体現する製品が登場する。
初のフルアクティブ、Avangardeの入門機
今回取り上げるのは、ドイツのスピーカーブランドAvantgarde(アヴァンギャルド)が手掛ける「OPUS 1」。ブランド自ら「ハイエンド・アクティブ・システム」と名付けたモデルである。
本機の価格はペア3,190,000円(税込)であり、内容だけでなく単純な価格的にも間違いなくハイエンドの領域にある。一方で、Avantgardeブランドとしては最も廉価なモデルでもあり、「Avantgardeの入門機」という戦略的な立ち位置も担っている。
はたしてアクティブスピーカーにこのような値付けはどうなのか、と思っているオーディオファンにこそ、今回の記事を通じて興味を持ってもらえたら幸いだ。
なお、今まで連載で取り上げてきた製品(ブックシェルフモデル)とは異なり、OPUS 1は完全なフロア型スピーカーであるため、従来のように筆者宅ではなく、Avantgardeを扱うエソテリックの試聴室でテストを行った。
OPUS 1のデザインはAvantgardeらしい大型ホーンが目立つ一方、全体的な印象はむしろミニマルであり、存在感はあるものの威圧感はないという絶妙な塩梅にまとまっている。
仕上げはホーンとキャビネットでそれぞれホワイト・ブラックの2色が用意され、それぞれの組み合わせで4種類から選択できる(ホワイト仕上げの場合、アルミ素材のフロントパネルはシルバー仕上げとなる)。試聴室で見たものはブラック&ブラックの仕上げだったが、カタログの写真を見る限りホワイト&ホワイトも清廉さがあって好ましい。
OPUS 1は「Avantgardeとしては」小型のモデルだが絶対的には立派なサイズ、具体的には横幅350mm(キャビネットのみ325)×奥行325mm×高さ1,100mmであり、大型トールボーイあるいはフロア型に相当する設置面積を必要とする。重量も39kgと極めて本格的だ。設置は四点スパイクに対応し、スパイクを使わない場合はPOM素材の三点接地により移動がしやすくなっている。
本機は2ウェイバスレフ構成で、Avantgardeの象徴ともいえるコンプレッション・ドライバーと350mmホーンの組み合わせによる中高域ドライバーと、10インチ(約254mm)ペーパーコーンによる中低域ドライバーから成り、クロスオーバー周波数は700Hzに設定されている。
アンプモジュールは低域用に250W、中高域用に10Wのものを搭載。ホーンならではの高能率を活かす形で、中高域用アンプは1WまではA級動作としている。バスレフポートは背面下部に搭載する。
音声入力はXLRバランス入力が1系統という、ホーム向けでありながら潔い仕様となっている。デジタル入力やネットワーク再生といった機能は外部のソース機器に任せ、純粋にスピーカーとしての役割に専念するという割り切りはハイエンド・スピーカーブランドならではの思想のあらわれともいえよう。
なお、DSPにより低域は100Hzを中心に2dBステップで±6dBの調整が可能だ。そのほか、トリガー入出力や電源モードセレクターなども背面パネルに用意されている。
ドライバーとの完璧なマッチングを実現
本機の試聴はエソテリックの試聴室にて、ネットワークプレーヤー&プリアンプとしてエソテリック「N-05XE」を組み合わせて行った。
せっかくの広大な試聴室ということで、まずは本機のダイナミックレンジやエネルギー感を極限までテストすべく、大編成のクラシックや映画のサウンドトラックを中心に再生してみた。
結果として、試聴室を埋め尽くす勢いの音量で鳴らしても「余裕」の一言。大音量下でも粗さはなく、低域の制動も崩れない。特に後者、低域の解像度という点では瞠目に値するとともに、「質と量を両立した強靭な中低域」という点は前回の連載で紹介した「ST SOLO 6 BLACK」とも共通するものであり、ドライバーとの完璧なマッチングを実現するアクティブスピーカーならではのメリットがあらためて感じられた。
ジャンル問わず男性ボーカル・女性ボーカルでは鮮明さ・鮮度感が真っ先に意識される溌剌たる再現。ここでも粗さ・大味さに転ばず繊細さもしっかりと表現できており、純粋にエネルギッシュな再生音を美点として享受できる。
管楽器の表現にオーディオ的快感を堪能
そしてやはりと言うべきかなんと言うべきか、本機の魅力が最大限に炸裂するのが、「管楽器」の表現である。筆者の愛聴盤であるロイ・ハーグローヴのアルバム『Earfood』から「Strasbourg / St. Denis」では、比類なきリアリティと心躍るオーディオ的快感が両立した素晴らしい再生音を堪能できた。
本機は決して特定のジャンルのみに適合するスピーカーではないが、「ずば抜けた好相性」を示すジャンルが存在すること自体は、紛れもなく本機の魅力である。
総じて「200万円のスピーカーに100万円のアンプを組み合わせて、はたしてこのレベルの音は実現するだろうか?」と思わせるだけの強烈なインパクトのある再生音であり、「パッシブかアクティブか」を越えた、巨大な絶対値を目の当たりにした試聴となった。
ちなみに本機の試聴に先立ち、エソテリックのネットワークプレーヤー/プリアンプの前モデル「N-05XD」と「N-05XE」の比較も行ったのだが、N-05XEは「まるきり別物」の進化を遂げており驚愕した。N-05XEの存在もまた、OPUS 1の実力を引き出すうえで間違いなく強力な要素となったということも触れておきたい。
アクティブという新境地に果敢に緒戦
ブランド名が指し示す通り、筆者はAvantgardeに対し、ホーンというスピーカーにおける「レガシー」な技術を使いつつ、決して「ノスタルジー」に立脚しない先進的なブランドというイメージを抱いてきた。そしてOPUS 1は、ハイエンド・スピーカーブランドの主戦場である「パッシブ」に安住せず、「アクティブ」という新天地に挑戦したという点で、まさしくそのイメージを体現する製品といえる。
そして実際のパフォーマンスにおいても、Avantgardeというブランドを冠するに足るクオリティが実現されており、単に「アクティブスピーカーを作りました」という域に留まらず、Avantgardeの入門機としての役割も完璧に果たしているという印象だ。
連載第0回で繰り返したように、本連載の目的はパッシブスピーカーとアクティブスピーカーで「どちらが良いか」などという対立を生むことではなく、多様化するオーディオの世界におけるひとつの可能性として、アクティブスピーカーという選択肢を紹介することにある。OPUS 1は、ハイエンドという領域でアクティブスピーカーがどのような価値を持ち得るかを示す、ひとつの象徴である。

