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<連載:アクティブスピーカー最前線> 第3回

高度なモニター性能、故にこそたどり着く美音の誉れ。FOCAL Professional「ST SOLO 6 BLACK」レビュー

公開日 2026/03/25 06:30 逆木 一
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“これから” オーディオを始めたい人にも、省スペースで高音質を追求したい人にも推薦できる、アクティブスピーカーの注目プロダクトをご紹介する連載<アクティブスピーカー最前線>。

3機種目は、フランスのFOCAL Professional(フォーカル・プロ)の「ST SOLO 6 BLACK」。主にプロ向けとして録音スタジオなどに活用される高性能スピーカーだが、ブックシェルフモデルは音楽リスニングとしても、ニュアンス豊かな美しい音楽世界を奏でてくれる。

FOCAL Professional「ST SOLO 6 BLACK」(価格:484,000円/ペア/税込)※国内取り扱い:メディア・インテグレーション

質実剛健、モニター性能特化のスピーカー

FOCAL Professionalはフランスのスピーカーブランドとして確固たる地位を誇るFOCALの音楽制作・プロ向けのライン。今回取り上げる 「ST SOLO 6 BLACK」は、スタジオ用メインモニター「UTOPIA MAIN」シリーズを除けば同社最上位に当たる「ST6」シリーズのブックシェルフモデルである。

本機の価格はペアで484,000円(税込)と、今まで本連載で取り上げてきたモデルと比べると一気にクラスが変わるが、それだけに内容も強烈なものとなっている。スピーカーブランドとして評価を確立しているFOCALがプロ用途に向けて送り出した製品がどのようなものか、それをあえてコンシューマー用途で使うとどうなるのか、端的に紹介していく。

ST SOLO 6 BLACKの仕上げはその名の通りブラック。外形寸法は24.6W×33.4H×29.5Dcmで、搭載しているウーファーが6.5インチの割に横幅が広くマッシブな印象を受ける。

ST SOLO 6 BLACKの背面端子。入力はXLRバランスのみといういかにもプロ向け仕様

総じて「見た目の色気」は削ぎ落されており、スタジオ用途を見据えた質実剛健なスタイルとなっている。バスレフポートは前方下部に設けられており、背面バスレフに比べると相対的に設置の自由度が高い。

昨今はモニタースピーカーもデジタルを含む豊富な入力や機能を備えるものも多いが、ST SOLO 6 BLACKはアナログ入力に特化し、機能もささやかなEQのみという潔い仕様。純粋にスピーカーとしての能力を追求するという哲学が見て取れる。

ユニット構成は本機最大の特徴であり、特にトゥイーターに採用された1.5インチ(38mm)ベリリウム・リバースドーム・トゥイーターがそのハイライトとなる。

ベリリウム・リバースドーム・トゥイーター

オーディオファンならばご存じの通り、ベリリウムはスピーカー振動板において理想的素材のひとつと目されており、FOCALをはじめ、様々なメーカー/ブランドで主にトゥイーターへの採用例がある。

一方で、コストの問題からベリリウムを採用するモデルは上位モデルに限られているのが現実だ。そんななか、ST SOLO 6 BLACKはペア484,000円という価格を、しかもアンプを内蔵するアクティブスピーカーとして実現しているのだから、これは破格と言っていいだろう。
 
ウーファーもトゥイーターに負けない能力を実現すべく、FOCAL独自のコンポジット素材を採用した6.5インチ(165mm)ユニットを搭載する。

コンポジット ‘W’ サンドイッチ・コーンウーファー

なお、ST SOLO 6 BLACKには本機を2ウェイではなくフルレンジモニターとして機能させ、音楽制作におけるよりクリティカルなモニターを行う「フォーカスモード」が用意されているが、この連載のコンセプトとは異なるため、特に検証は行っていない。
 
底面は左右の木目仕上げのパネルを除きごく素直な(ざらついた)仕上げ・構造となっている。13kgという本機の重量を受け止め、かつ実力を発揮させるためには「ポン置き」ではなく、どのように設置するかもしっかりと考えたいところだ。

ST SOLO 6 BLACKの底面

色彩感豊かでニュアンス表現にも長ける

はっきり言おう。驚いた。「はじめてオーディオに触れる人なら」などという前置きをする必要は一切不要で、純粋な音の絶対値に、おおいに驚いた。

デスクトップユースのイメージ。設置にはISO Acousticsのデスクトップ・スタンドを組み合わせた

リビングユースでは、本機の質実剛健な佇まいがいささか異物感を伴う気がするものの、そこさえ許容できるなら、「超高性能かつ美しい音を奏でるブックシェルフスピーカー」として大活躍する。

音を出した瞬間に意識されるのは、非常に色彩感豊かかつ高分解能、さらにずば抜けたニュアンスやディテールの再現能力を有した、極めて上質な高域である。硬質で明晰な輪郭の描写力により、特に金属系の楽器のリアリティが凄まじい。振動板にベリリウムを採用したから、などと単純化できるものではないだろうが、いずれにせよ本機の高域再生能力は特筆に値する。

素晴らしい高域に釣り合うように磨き上げられた強靭な中低域もまた魅力的だ。特に低域の量感という点ではむしろ控えめだと当初感じたが、この印象は本機の再生音が非常に引き締まっているからだとすぐに得心した。遅れず、膨らまず、必要とされる量を必要とされるだけ繰り出す。やはり本機は「モニター」なのだと思わせる、力強さと節度を両立した見事な中低域だ。

このように、音楽の構成要素を克明に描き出す「極めて高性能なアクティブ・モニタースピーカー」であることを大前提としつつ、そのうえで筆者が本機ならではの魅力と感じたのが、ずばり音に「色気」があること。この際「美音」と言い換えてもいい。

怜悧冷徹を求められるモニタースピーカーをこのように表現するのは少々ためらわれるが、これはリスニング用途においては間違いなく美点となる。本機で再生する音楽は単なる「モニタリング」を越えて、明らかにリスナーの感情を揺さぶる力に満ちている。

リビングユースのイメージ。Eversolo「DMP-A6 Gen2」との組み合わせ

ただ、映像再生においても本機は相応の性能を発揮するが、音楽再生ほどの感動はなかった。情緒よりも客観的な再現が物を言う映像音響においては、「美音」という本機ならではの強みが音楽ほど活きなかった結果なのだろう。

本気のオーディオファンこそ聴いてほしい

試聴を通じて常に脳裏に浮かんでいたのが、「スピーカーとアンプの合計予算50万円で、ST SOLO 6 BLACKと同レベルの音を出せる組み合わせがはたしてどれだけあるだろうか?」という疑問だった。そして筆者は、その問いに対し確信をもって提示できる回答を持っていない。本機の再生音はそれほどまでに高度だった。

あえて弱点を指摘するなら、本機は小音量で楽しむタイプのスピーカーではなく、真価を発揮するためにはある程度の音量が必要となる点や、またサイズの関係上、特にデスクトップ環境においてはそれなりのスペースを要求する点が挙げられる。しかし本機のずば抜けた再生音は、そうした使いづらさを覆い隠して余りあるほどの魅力がある。

ST SOLO 6 BLACKは、音楽制作・プロ用途だけに押し留めるにはあまりにももったいないアクティブスピーカーである。本気のオーディオファンこそ本機の音に触れて、アクティブスピーカーの魅力と可能性を実感してほしい。

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