“ケーブル沼”へようこそ。「はじめてのリケーブル」にぴったり、ブリスワークスの「MIKAGE」を遊ぼう!
リケーブル、はじめの一歩
ハイエンド&オーダーメイドなケーブルブランドBrise Audio(ブリスオーディオ)が姉妹ブランド「Brise Works」(ブリスワークス)を始動。第一弾製品のイヤホンリケーブル「MIKAGE」をリリースした。


最大のポイントは、ブリスオーディオの特徴である受注を受けてのオーダーメイド製造ではなく、一般的な量産品として展開されること。専門店の店頭には試聴品も配備されており、試聴即お持ち帰り購入も可能だ。価格も、もちろん同社製品としてのクオリティを維持した上で、実売予想税込19,800円前後に抑え込まれている。
端子構成は2pin/4.4mm or MMCX/4.4mmのみに絞り込まれているが、リケーブルニーズの大半にはその両パターンで応えられるだろう。リケーブル端子はその両規格が主流であるし、リケーブルまで検討するマニアックなユーザーのメインシステムはバランス駆動環境が主流。それを踏まえての適切な絞り込みだ。
今回はそのブリスワークス MIKAGEのポテンシャルを以下の3モデルのイヤホンとの組み合わせでチェックしてみた。
●Shure SE215:超定番ダイナミック
●qdc SUPERIOR EX:新定番ダイナミック
●Kiwi ears Septet:多種ハイブリッド&オープンバック
ダイナミック型の定番で基本的な傾向を探った上で、複雑なハイブリッド機での変化も確認する狙いだ。
クオリティを妥協しない量産化の設計を追求
その前に「MIKAGE」についてより詳しく確認しておこう。
まず量産およびコストダウンの実現においては、同社内での職人による手作業製造ではなく、社外工場への製造委託を採用できたことが大きいという。しかし委託先工場をどれだけ厳選したとて、それだけで同社の納得する品質を得られるわけはない。
そこで鍵になるのが職人の手作業ではなく工場での量産を前提とした新設計。例えば端子周りでは、従来の手作業前提の設計では熱収縮チューブによる保護処理としていた箇所を、樹脂整形によるモールド加工に変更。モールドの方が大掛かりにも思えるが、機械での自動化に適しているのはモールドの方との判断からだ。耐久性も向上して一石二鳥。
ということで端子パーツは、そのモールド加工を採用してアルミ削り出し外装と合わせた、このモデル用の新規設計。
また近年の同社製品ではプラグ内にCNT(カーボンナノチューブ)シートを仕込むことでの高音質化が定番となっているが、新型プラグではそのCNTシートを配置するスペースをあらかじめ用意。組み込みの作業性を向上させることでも、製造品質の底上げ、安定化を図ってある。
そしてケーブル自体にも、高機能高純度銅導体、クアッドスパイラル構造、高機能樹脂絶縁材など、ブリスオーディオのノウハウを惜しみなく投入。細身で適度に引き締まった、巻きやすく絡みにくそうな仕上がりもポイントだ。
Shure、qdc、Kiwi Earsの3機種でテスト
では前述のイヤホンと組み合わせた際の印象を述べていこう。星街すいせいさん「もうどうなってもいうや」、MyGO!!!!!「潜在表明」、ジュリアン・ラージさん「Double Southpaw」等の楽曲を試聴した。
Shure「SE215」(MMCX) -ロングセラー機の新たな魅力を発見
エントリークラスダイナミック型の超ロングセラー。端子周りもフラットでリケーブル製品全般と相性問題も出にくい。付属ケーブルは、時期等で細かな仕様は異なるかもだが基本的には、業務機としての耐久性を重視したがっしりとしたものとなっている。当然シングルエンド駆動用だ。
まず標準ケーブルでのシングルエンド駆動。こういった機会に改めて聴くと、ボーカルのまとまりや耳心地のよさなどはやはり美点と感じられる。低域側も超低域より上の厚みは充実。ただ現代ポップスの情報量やビビッドさはやはり引き出し切れない印象。
さすがに2011年発売、15年近く前のイヤホンだしな……と思いつつMIKAGEに交換して試聴開始。すると時代が10年進んだ。
「もうどうなってもいいや」では、左右に振られたギターがそれぞれ細かなフレーズでリズムとコードを装飾しているが、そのギターの音像が立体的に浮き上がってきた。
同時にセンター定位のベースの音像がぐっと引き締まり、タイトかつエネルギー密度の高いものに。つまり解像感や定位、力感といった諸要素が並んで著しく向上した。
となるとそれらってバランス駆動効果の典型では?ケーブル云々じゃなくてバランス駆動の効果なのでは?という疑念も浮かぶわけだが、そこは次のイヤホンとの組み合わせで追試だ。
qdc「SUPERIOR EX」(2pin) -よりタイトな音像に凝縮
ダイナミック型新定番機のバリエーション。FitEarとのコラボレーションにより、ベースモデルの特徴である躍動感やサブベースの響きを活かした上で、より端正ですっとしたチューニングに仕上げられている。端子周りも埋込ではなくフラット形状の2pinでリケーブルの互換性も高い。
今回は税込4,950円ほどの純正オプション「SUPERIOR Cable 4.4mm」も用意し、バランス駆動同士でMIKAGEとの比較を行った。
……バランス駆動のおかげだけではなかった!先ほど215との組み合わせで感じられた変化はこちらでもおおよそ共通。ということはMIKAGEへのリケーブルで得られる変化の方向性は、バランス駆動によるそれにも近しい、諸要素の全般的な向上なのかもしれない。
中でも印象的だったのは、ベースの音像がぐぐっと引き締められたこと。その部分こそバランス駆動による駆動力アップがもたらす効果の典型例だが、バランス駆動同士の比較でもそこが明確に変化した。
このイヤホンの特徴である低域の充実を、そのエネルギーの総量はそのままに、よりタイトな音像にシェイプして凝縮。それによって同じくセンター配置のボーカルとの存在感のバランス、低域の響きに埋もれがちだった他の様々な響きとのバランスなどが整えられ、全体の見え方もクリアさを増した。この変化をリケーブルで得られるとは驚きだ。
Kiwi ears「Septet」(2pin) -完成形に新たな光を当てる
最後はこちら。ダイナミック/BA/マイクロプラナー/ピエゾの4種のドライバーによる複雑大規模なハイブリッド構成、さらにはそれら筐体内のすべてのドライバーの通気性を確保するオープンバック構造と、最先端かつ特徴的な仕様で完成されたモデルとなる。
端子周りはフラットでリケーブル互換性も問題なし。付属ケーブルはプラグ交換式でバランス駆動にも対応するので、こちらもバランス駆動同士でMIKAGEと比較した。
するとこちらについては、MIKAGEへのリケーブルで得られるのは「向上」よりも「変化」といった印象。付属ケーブルでのサウンドは、太く豊かでしなやかな低音と繊細な中高域が持ち味で、アコースティックギターとウッドベースのデュオ演奏、ジュリアン・ラージさん「Double Southpaw」には特にフィット。
そこからケーブルをMIKAGEに変更すると低域から中高域までどの音も厚みが増す。例えばギターやシンバルを聴くと、付属ケーブルでは薄刃の鋭さで描かれるところが、適度な厚みもある鋭さに変化するといった具合だ。
正直なところ「Double Southpaw」については付属ケーブルの繊細さを好ましく感じる。しかし「潜在表明」のボーカルの生々しさ、肉声感、温度感をより強く感じられるのはMIKAGE。
こういったある程度以上の価格帯でしかも複雑なドライバー構成のイヤホンとなると、チューニングをまとめ上げる要素として純正ケーブルの役割も大きくなっているはず。ならばそれをリケーブルするというのは、メーカーの意図した完成形をあえて崩す行為でもあるわけだ。
だからこそリケーブルの際には、単純な向上よりも、メーカーがまとめ上げたチューニングとは別の魅力を引き出せるか?という視点からの評価も大切になるかと思う。SeptetとMIKAGEはまさにそれを満たす組み合わせと言えるだろう。
来たれ、新世代のポータブルマニア!
というように、MIKAGEによるサウンド向上や変化は明らか。さらにはケーブルの取り回しや装着感も良好だ。
リケーブル端子は埋込型など端子周り形状のバリエーションにもある程度対応できるように工夫されているなど、リケーブルユーザー向けの細かな配慮もさすが。オーダーメイド受注で多くのマニアからフィードバックを受けてきた、その知見の深さ広さを感じられる。
ポータブルオーディオ初期のリケーブル端子もバランス駆動端子も乱立した時期には、その無数の組み合わせにオーダーメイドで対応してくれるブリスオーディオは実に有難い存在だった。
そして時は流れリケーブル端子もバランス駆動端子もある程度収束したいま、新たな世代のポータブルオーディオマニアをリケーブルの世界へ誘ってくれるブランド、そしてケーブル。
ブリスワークス「MIKAGE」はそんな存在になってくれそうだ。
(提供:ブリスオーディオ)
