オーディオテクニカ「AT-LP7X」の音はどう変わる?同時発売のフォノケーブル/リード線による変化にプロも感嘆!
フォノケーブル「AT-TC300/1.2」音質レビュー
同社の新製品AT-LP7Xレコードプレーヤーをレファレンスとし、まずは付属カートリッジのAT-VM95E BKを装着して音を聴こう。ちなみに、これまで市販のAT-VM95Eは明るい緑の交換針ノブのみだったが、今回カラーバリエーションとしてノブが黒いBKバージョンも一般発売となった。
クラシックは最初の頃こそ少し高域がくぐもったような音だったが、すぐに目を覚まして大編成のオケを明るく朗々と描き出し始めた。スクラッチノイズのきめが細かくなり、絶対的なノイズの量は変わらないが耳につきにくくなったのが好ましい。
接合楕円針が搭載された、いうなればビギナーでも比較的入手しやすいクラスのカートリッジであるから、絶対的なオケのスケール感や楽員の顔が見えてきそうな解像度という点では限界があるが、本機で時折みられる、艶と歪みの紙一重という感じはずいぶん収まり、はっきりと艶やかさに聴こえるのが素晴らしい。これこそが、寄生容量を削減した効果だといってよいだろう。
ジャズは活気あふれる演奏で、ハーモン・ミュートを突っ込んだトランペットが少ししっとりとした質感で鳴るのが面白い。音像は全体に前へ出る方向だが、荒れたり歪んだりした結果そうなったのではなく、AT-VM95E持ち前の活発さが好結果を引き出したのであろう。全体に音像は太めだが、それが実体感の向上にもつながっているように感じさせる。
ポップスはAT-VM95Eの持ち味というべき、音が我もわれもと耳へ殺到するようなグイグイくるドライブ感が、とてもいい形で出たような気がする。ボーカルもギターもベースもキーボードもドラムスも、各自が他の邪魔をしないよう節度を保ちながら、ガンガン吹っ飛んでくるのがとてもロック的だ。しかし、それでいて荒れた音、耳障りさが巧みに抑えられているのが実にいい。
ここで、これまでAT-VM95Eでは少々声が歪みっぽくなってしまっていたポップスのレコードをかけると、完全に歪みゼロとまではいかないが、ごく普通に楽しめるではないか。どうやら製盤過程のどこかで歪みが紛れ込んだ盤を、寄生容量が大きめのわが装置とAT-VM95Eとの相性によって、歪みっぽさを増幅させながら聴いていた、ということのようである。
わがレファレンスの自作フォノケーブルとも聴き比べてみたが、可能な限り寄生容量の少ないケーブルを用いていても、しっかりそれに特化して作ってきたメーカー製にはとてもかなうものではないことを、今回の取材で痛感した。
MCカートリッジに変更して聴き比べ
それではMCカートリッジも聴いてみよう。ここではわが新レファレンスに就任したオーディオテクニカAT33xMLBを起用する。「AT-LP7X」にはサブウェイトカウンターウェイトが標準付属しているのでカートリッジ交換の幅も広がった(なお、さらに重いサブカウンターウェイトも別売オプションで用意されている)。
クラシックは一聴して張り出すべきはガンガン張り出し、奥まった定位はしっかりと遥か遠くへ定位するという、非常に優れた表現力を味わわせてくれた。
VMでも感じた高域方向の僅かな抜けの悪さは、後述するシェルリードの試聴時には収まり、全域でキビキビと抜けの良い表情になった。
ジャズはハーモン・ミュートをまとったトランペットがずいぶん高品位な鳴りっぷりになった。AT-VM95Eでは音像が我先に吹っ飛んできていたところ、一歩引いたリズムセクションがガンッと張り出したソロを支える、という本来の演奏の姿が見えてきた。うむ、このケーブル、なかなかの器の大きさを聴かせるようだぞ。
ポップスはドラムスの俊敏さと切れ味、パワーが大幅向上、歌手のシャウトも青天井に伸びる。うん、これこそがハイファイだという確かな認識を有しつつ、このジャンルではAT-VM95Eの好ましきカオスっぷりもいい感じだったな、と思うところがある。
件の歪みが気になるソフトもかけてみたら、あんまりにもしっとりと歌姫が歌い上げるので笑ってしまった。アナログの相性というのは本当にシビアで難しいものだなと、改めて認識するいい機会となった。
リード線「AT6104x」「AT6112x」の実力を聴く
今回の新製品には、シェルリードが2セットある。どちらもわが家へ届いているので、早速テストしよう。音を聴く前にそれぞれの特徴を記しておくと、AT6104xはPCUHD導体、AT6112xは7Nクラスの高純度D.U.C.C.導体が採用されている。
チップと被覆は両モデルに共通で、金メッキのチップはピンとの接触面積が大きく抜き差しがしやすい、三角柱型の形状とした。被覆はマイカ配合PVCと、フォノケーブルのシースと共通の技術が用いられている。
AT6104xから音を聴く。一聴して音に潤いが加わり、S/Nが向上していることが分かる。クラシックはオケが本来あるべき場所へどっしりと定位し、高貴で濃厚なホールエコーに包まれた感じがよく出る。金管楽器の鋭い炸裂を上手くいなすというか、耳障りにならないよう聴かせることに感心する。本質的に歪み成分を耳へ届けにくいシェルリードなのであろう。
ジャズはハーモン・ミュートを装着したトランペットが太く実体感豊かに定位し、全体に若干ふくよかな質感の中にピシリ、キラリと各楽器を定位させる。なかなかいい聴き心地である。ウッドベースはグッと奥に定位してベースラインとリズムを支え、ドラムスは引きずることがなく、全体に軽快で勢いの良い鳴りっぷりである。
ポップスは歌姫のシャウトが明るくパワフルに決まり、ドラムスやベースもガシッ、ビシッとビートを刻んでいく。アタックは鋭いがそれが耳障りにならず、明るくハッピーに吹っ飛ばしていく感じが実にロックだ。
さぁ、7N-Class D.U.C.C.銅線のAT6112xを聴こう。クラシックは静寂の中から音楽が湧き出し、あふれんばかりのエネルギー感を聴かせる。弱音時に音像がショボくれないことは驚くべきで、そこから強音へ駆け上がっていってもその質感に全く綻びを見せないのが素晴らしい。
いや、分かってはいたが、同じカートリッジとシェルから、シェルリードを変更しただけでここまで音楽そのものが変わってしまうのだ。本当に恐ろしいパーツである。
ジャズは艶やかで瑞々しくパワフルで粒立ち良く、などなど、私がこのレコードで聴きたい音を余さず表現してしまったことに舌を巻いた。もうオーディオがどうこうなんて野暮なことはいわず、この素晴らしい音楽に身を浸して寛ごうよといいたくなる。
こんな音を実現してしまったからには、このリードが随分高いものにつくのかというと、オフィシャルECで1万1,000円というからそれほどでもない。いやはや、これは大変な値打ちものである(ちなみにAT6104xは3,960円だ)。
ポップスは冒頭の強くテンションをかけたタムのアタックが強烈に吹っ飛んできて、そこへベースとギターが完璧な間合いで入ったところへ、ボーカリストが鬼神のシャウトを被せていく、といった風情を聴かせる。至近距離で生演奏を聴くような、むき出しの立ち上がりと生々しさが凄まじい。
「高い音質効果ととてつもないコストパフォーマンスを持っている」
改めてオーディオテクニカの製品群は、カートリッジやプレーヤーなどの機材もケーブルをはじめとするアクセサリー類も、プライスタグを思わず二度見してしまうような、価格と得られる音質効果がまるで見合わないような、高い音質効果ととてつもないコストパフォーマンスを持っていることが知れた。
今回レポートしたアクセサリー群は、どれも割合と気軽に入手できるものばかりで、AT-LP7Xのグレードアップにももってこい。読者の皆さんもぜひ気軽に試してみてほしい。
(提供:オーディオテクニカ)
