透明感に宿る音の美学。オーディオテクニカ「AT-LPA2」のアクリルボディで魅せるアナログ体験
アクリルの筐体をもつ、透明感あふれる美しいターンテーブルが誕生した。オーディオテクニカの「AT-LPA2」は、実機を目の前にすると、その高級感のある佇まいに心を惹かれた。「人は見た目が9割」などと言うけれど、ターンテーブルだって9割なのかもしれない。そう思うほどに、洗練されたクリアなサウンドを味わうことができた。
試聴から得たインプレッションは後述することにして、まずはこのスタイリッシュなターンテーブルが生まれた経緯と特徴からご紹介しよう。

見た目だけじゃない!音響的側面で見るアクリルの強み
そもそもなぜ「アクリルの筐体」なのか。実はオーディオテクニカがアクリルを用いたターンテーブルを販売したのは、2022年に「60周年記念モデル」として発表した「AT-LP2022」が最初だ。限定4000台で製造した「AT-LP2022」は、記念モデルとしての見た目の美しさを重視したことは確かだが、その時点ですでにアクリルという素材が、「実はターンテーブルに適していることを確信した」と、商品開発部の由良志之房さんは言う。

「アクリルは、ターンテーブルにとって適した重さがあり、アナログレコードに近い共振周波数を持つ素材なのです。ターンテーブルの筐体には金属や木材がよく使われますが、金属は十分な重量はあるものの、共振しやすくノイズが発生しやすい。一方木材は共振しにくいですが、やや軽くなってしまう。その間をいくのがアクリルで、樹脂の中でも共振しにくい素材であることがわかっています。アクリルを用いることによって、見た目もクリアにはなりますが、音質的にも雑味のない透明感のある響きを実現できるのです」(由良さん)
そのことを実証できたのが、「AT-LP2022」だったのだ。今回登場する「AT-LPA2」は、そうしたアクリルの強みを活かし、さらに音質や使い勝手を向上する新たな工夫がなされている。

進化した“アクリルターンテーブル”「AT-LPA2」のポイントをチェック
■その1:電源回路は別ユニットに
「AT-LP2022」では一体化されていた電源回路を、「AT-LPA2」では本体から分離させ、より強力な回路を実現させた。電気的な干渉を抑えて、ノイズの少ない再生ができるようになっただけでなく、本体はよりコンパクトですっきりとしたデザインとなった。


■その2:付属するのは、なんとMCカートリッジ!
通常、ターンテーブルに付属してくるカートリッジといえばMM(VM)カートリッジだが、なんと「AT-LPA2」にはMCカートリッジ「AT-OC9XEN」が付属する。もちろんMMとMCにはそれぞれの良さがあるわけだが、価格帯的には、MCカートリッジの使用は “MMからのステップアップ” と捉えられることが多い。ターンテーブルに最初からMCカートリッジが付いてくるのはスゴい!「AT-OC9XEN」は無垢材の楕円針で、アルミのカンチレバーを採用。単独で購入すれば、これだけでも5万円弱だ。「細やかで繊細な表現をするだけでなく、馬力のあるサウンドも生み出せるように、こだわりを持って開発したモデル」と話すのは、商品開発部の森田彩さんだ。

「2018年から販売しているカートリッジですが、『AT-LPA2』で使用したところ、想像していた以上に力強い音も出て、相性が良かったなと実感しました。ボディはアルミの筐体に化学反応で色をつけているアルマイトシリーズには5種類の針先形状を用意しており、『AT-LPA2』に音質もデザインも合う『AT-OC9XEN』をお付けします」(森田さん)
一方で、老舗カートリッジメーカーであるオーディオテクニカらしく、カートリッジの交換もしやすい設計となっている。トーンアームはストレート型ではあるが、ヘッドシェルから先を取り外すことができる。アルミ削り出しのヘッドシェルはAT-LPA2専用品となるが、単品購入もできるので、複数のカートリッジを気楽に取り替えて楽しむことができる。
なお、トーンアームはカーボンファイバー製。軽量が魅力で、トレース能力に有利なのだ。編み込まれたファイバーのテクスチャーは、デザインにもひと役買っている。
■その3:アンチスケート機構とカウンターウエイト
たんに多様なカートリッジに対応するだけでなく、新開発のアンチスケート機構も搭載され、より「取っ替え引っ替え」遊びを促進してくれる。精度の高い糸吊り式を採用しつつも、糸をかける位置の細かな調整に苦労はいらない。アンチスケートバーに付いているリングをスーッとスライドさせることで微細な調整が簡単にできる仕組みだ(言葉にするとややこしいが、扱いはいたって簡単!)。


また、カウンターウエイトも予め110gと130gの2種類が付属し、重量カートリッジにも対応できる。「いろんなカートリッジで楽しんでほしい」というメーカーの姿勢が、ユーザーへの思いやりとして伝わる。
■その4:大口径アルミ削り出しインシュレーター
今回新たに作られたアルミ削り出しのインシュレーターは、中に制振ゴムを内蔵しているという。これにより「低域がしっかり鳴り、音の情報量が格段に増えました」と由良さんは語る。実際、新インシュレーターを手に取ってみると、程よい重みを感じることができた。細部にまでこだわった作りが、音質のみならず、全体に漂う高級感にもつながるのだろう。
