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PRレコード再生でそれぞれの魅力を検証!

「DALI」vs「B&W」中核スピーカー聴き比べ対決! どっちを選ぶ?何が違う?

公開日 2024/12/06 06:35 生形三郎
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スピーカーの購入を検討する際に、どのような基準で選ぶのが良いだろうか?そのひとつの参考となるのが、「ミュージカリティ」と「リファレンス性」のいずれを重視するか、という考え方である。より音楽の躍動感を楽しめるシステムを目指すのか、正確かつソースに対して忠実な再現を目指すのか。

それぞれの音調を代表するとも言えるDALI(ダリ)とBowers & Wilkins(以下B&W)の音作りの考え方の違いを、輸入元のシニアサウンドマスター・澤田龍一さんと共に探っていこう。

今回は、DALIとB&Wの中核モデル、比較的価格帯の近い「RUBIKOREシリーズ」と「700 S3 Signatureシリーズ」の直接対決!

■いずれも創業40年を超えるヨーロッパの老舗ブランド



日本でも高い人気を誇る、デンマーク・ダリと英国・B&Wの両スピーカーブランド。互いに半世紀ほどの歴史を持ち、スピーカーユニットからキャビネットまで自社設計を貫く名門ブランドとして広く親しまれている。

B&Wスピーカーは、アビー・ロード・スタジオへの導入を始めスタジオやクラシック音楽制作現場のモニタリングでも重用されることから、モニタースピーカーとしての魅力も広く知られる。かたやダリは、音色や余韻など快適なサウンドキャラクターから、ミュージカリティを重んじるスピーカーとして認識される。

インターナショナルオーディオショウでのB&Wのブース。B&Wのスピーカーはスタジオモニターとしての長い歴史を持ち、そのリファレンス性能の高さにも信頼が高い

当然、技術的なアプローチも対照的で、再生帯域への考え方や、ユニット構成にも如実に現れている。

例えば分かり易いのが、超高域の扱いだ。ダリは、デジタル音源の再生やスイッチング・アンプの駆動などで生じる高周波ノイズの影響などを踏まえ、30kHz以上の再生は音楽再現を阻害するものと明言している。逆にB&Wは、ハードドーム・トゥイーターを用いることもあり、高域共振を可能な限り高周波側に追いやって可聴域内の再生特性を向上させるために、超高域特性を伸ばすというアプローチを採る。

今年のインターナショナルオーディオショウのダリブース。デンマークはスピーカー開発・製造の長い歴史を背負う国である。ダリも昨年40周年を迎え、ますます製品開発の練度を高めている

加えてユニット構成に対する考えも対照的で、ダリはあくまで2ウェイスピーカーが基本にあり、そこへ超高域を担当するリボン型(正確にはマグネプレナー型)のトゥイーターと低域を補強するウーファーを足すという考え方でスピーカーを拡張していく。逆にB&Wは、ユニットそれぞれの理想的な再生特性を追求してから、それらを組み合わせることで全帯域をカバーして一つのスピーカーを構成するというアプローチだ。

■シニアサウンドマスターが語るそれぞれの魅力



しかしながら、アプローチは違えども、両社が展開する近年のスピーカーラインナップからは、互いに、既存のサウンドイメージからの革新を目指す方向性を聴き取ることができる。それを如実に体現しているのが、本年発売されたダリのRUBIKOREシリーズとB&W 700 S3 Signatureシリーズである。

両ブランドの日本導入にも尽力するディーアンドエムホールディングスのシニアサウンドマスター澤田龍一氏に、近年における両社のサウンドポリシーについてお話を伺うと、やはり次のような方向性のシフトがあるという。

ディーアンドエムホールディングスのシニアサウンドマスター・澤田龍一氏。オーディオショウなどでの軽妙な語り口でもお馴染み

「ダリは元々、ミュージカリティを標榜しており、音楽を聴くことを阻害しない、耳に引っかかる音はなるべく出さないよう、柔らかい素材、自然界にあるオーガニックな素材を中心に用いたスピーカーづくりを重んじてきました。そして、現代のハイレゾやハイデンシティな音楽ソフトの再生に対応できるよう、そういった振動板や素材以外の部分で性能を追求していこうという動きがあります。

時期的には、RUBIKORE 6の前身となる「RUBICON 6」の限定モデルとして登場した「RUBICON 6 BLACK EDITION」に端を発し、その後リリースされた「OPTICON MK2」からシャープ・フォーカスなリファレンス路線へと移行しています。近年ダリは、これまでのサウンドポリシーであった「ミュージカリティ」という言葉にリファレンスを加えて、「ミュージカリティ&リファレンス」という理想を掲げていることがそれを象徴しています。

一方でB&Wは、フラグシップの800シリーズがスタジオモニターの系譜として存在しており、物理的な特性を徹底的に追い込んだところに真実があるという思想を貫いてきました。しかし近年、音質の連続性の実現といったコンセプトを800 D4 Signatureから標榜しており、これまでのリファレンス・モニターという思想から、ミュージック・モニターという思想にシフトアップしたという変遷があります」。

これらはまさしく、筆者も両者の新製品で体感していた傾向である。具体的には、800 D4シリーズがSignature化されて登場した際に、801 D4 Signatureは、細に入り込む数々の精妙なファインチューニングでもってさらなる音楽表現の滑らかさや解像力を獲得していた。一方でダリも、今回新登場したRUBIKOREでは、これまでのダリのイメージを改めさせるほどに明晰な描写力を備えていることが印象的であった。

■光カートリッジによるアナログ再生で音質の違いをチェック



今回はそれらの魅力を検証するために、それぞれ、比較的価格帯の近いブックシェルフの「RUBIKORE 2」(264,000円・1台)と「705 S3 Signature」(359,700円・1台)と、フロアスタンディング型の「RUBIKORE 8」(704,000円・1台)「702 S3 Signature」(719,400円・1台)をアナログ再生で聴き比べてみたい。

今回はDS Audioの光カートリッジを用いたアナログ再生でそれぞれの魅力を検証!

試聴の前に、各モデルのプロフィールを軽く紹介しよう。

ダリのRUBIKOREシリーズは、同社のレギュラーシリーズ中で上から2番目に位置するラインで、RUBICONシリーズの後継モデルだ。新たに、フェロフルイド(磁性流体)を無くした29mm径シルクドーム・トゥイーターを搭載するとともに、馬蹄形の凹みが設けられた新形状のウッドファイバー・クラリティコーンを搭載することが最大の特徴だ。ネットワーク回路も改良され、トゥイーター用のフィルムコンデンサーはハイエンド・スピーカーでもお馴染みムンドルフ製に置き換えられたほか、低域ユニットのローパスフィルター用のコイルに、SMCをコアに用いたものが投入され、ネットワークのリニアリティが向上している。ほかに、中央部が狭く両端に向かって広がっていくカーブを設けたコンティニュアス・フレアーポートが搭載され、低域再現の質感向上が図られている。

ダリのRUBIKOREシリーズ。左から「RUBIKORE 8」「RUBIKORE 6」「RUBIKORE 2」、センターとオンウォールもラインナップする。ダリの現行機種では、シリーズとしてラインナップする最上位モデルとなる(KORE、EPIKORE 11はそれぞれ単発の登場)

一方、B&Wの700 S3シリーズは、フラグシップラインである800シリーズで投入された技術をふんだんに盛り込んだ、同社の中核を担うクラスだ。この度のSignature化にあたっては、800シリーズSignatureで採用のトゥイーター・グリルメッシュの導入に始まり、ネットワーク回路にも800シリーズ同等のチョークコイルが投入されるほか、コンデンサーのグレードアップも実施。さらには、ダンパーに新たな含浸剤を使用したり、ネットワーク回路内のバイパス・コンデンサーの位置を変更するなど、まさに細に入る刷新の数々が施されている。

B&Wの700 S3 Signatureシリーズ。フロア型、ブックシェルフ型とセンタースピーカーも用意する。仕上げはダトク・グロスとミッドナイト・ブルーの2色

■情報量で圧倒するB&W、ナチュラルな質感で浸透するダリ



早速試聴に入る。まずは、ブックシェルフのRUBIKORE 2と705 S3 Signatureからだ。

2ウェイブックシェルフのRUBIKORE 2でグレン・グールドの「ゴルトベルク変奏曲(1981年録音)」を再生すると、透明度が高くもスムーズな音楽再現に耳を奪われる。ピアノのサウンドは極めてナチュラルながらも、単なる写実的な表現にとどまることなく、音に旨味を感じさせる点がダリならではの手腕と体感する。おもにウッドファイバー・クラリティコーンの特徴かと推察するが、中低音にコクのあるキャラクターを楽しめるのだ。

DALI ブックシェルフスピーカー「RUBIKORE 2」(264,000円・1台/税込)

Bowers & Wilkins ブックシェルフスピーカー「705 S3 Signature」(価格:359,700円・1台/税込)

レッド・ホット・チリペッパーズ「Black Summer」の再生でも、やはり旨味を残して雑味だけを取り除いたような、透明度の高くも耳触りの良い歌声が快い。この雑味の無い感触に、新型のコンティニュアス・フレアーポートによる、共鳴感が控えめなバスレフの低音も寄与していることは明白だ。ジャズのピアノトリオ、八木隆幸トリオ「CONGO BLUE」でもスムーズな音が健在で、すっきりとしながらも粘り気のあるピアノの音色が爽快だ。

「RUBUKORE 2」の試聴風景。パワーアンプにはアキュフェーズの「P-7500」を使用

澤田氏はここで、アナログ再生におけるダリの優位性も指摘。「レコードはディスクの反りで超低域のランブルノイズが発生します。それによってウーファーが常に動かされることで、インダクタンス変動の影響を受け、クロスオーバー付近の音が振られてしまうことがあります。ですがダリは、ボイスコイルに被せる銅キャップにスリットを入れることで中音域のインダクタンスの変化を、ほぼ完ぺきに抑えられているのです」とのことで、先ほど感じたピアノやヴォーカルのクリアネスやスムースネスは、この恩恵も大きいのかもしれない。まさに、アナログファンにとっても嬉しい仕様である。

続いて、そのまま705 S3 Signatureで同じレコードを試聴する。グールドから試聴すると、一転して高解像なフォーカス力に圧倒させられる。ピアノの姿や演奏空間が緻密に描き出されるのだ。

「705 S3 Signature」の試聴風景

ピアノトリオでは、ハードドームのトゥイーターならではの、素早く、そして情報量の高い精緻感によって、闊達とした演奏の魅力を引き出し、まさに800シリーズを連想させるサウンドが展開。

レッチリは、ソース全体を隈なく見渡せる音の解像力もさることながら、アタックが押し寄せる際の力強さや明瞭度が高い。低域も輪郭が明瞭ながらも量感が充実しており、音楽再生の力強さやエネルギー感を十二分に確保している。 

両スピーカーを比べると、音響の情報量を引き出すという点ではB&Wに分があると言えるが、そもそも両者の価格も大きく異なっている。「実際にネットワークパーツ一つとっても、同じムンドルフと言えど、705の方がかなりグレードの高いものを使用しています」と澤田氏も指摘。

しかしながら、先ほどのインダクタンスの変動を抑えたウーファーの効能や、低音設計の思想の違いもあってか、低音のナチュラルさや歌声のスムースさなどは、ダリにも絶大な浸透力を感じる場面も多々あった。これがオーディオ再生の面白いところだろう。価格から生じる差もあれども、音楽をどのように再生したいか、楽しみたいかによって、その評価は分かれる筈だ。

■全体的なスケールアップを聴かせるフロア型モデル



続いて、フロアスタンディング型を比較試聴する。RUBIKORE 8は、RUBIKORE 2と同じ2ウェイ構成に加えて、マグネプレナー型のリボン・トゥイーターと、165mmのウーファー2発が追加される。合計3基のウーファーは敢えて完全に独立駆動させずスタガー接続されるとともに、共振周波数が33Hzという十分な低さに設定されたバスレフポートによる深いローエンドが加わる。

DALI フロアスタンディング型スピーカー「RUBIKORE 8」(価格:704,000円・1台/税込)

Bowers & Wilkins フロアスタンディング型スピーカー「702 S3 Signature」(価格:719,400円・1台/税込)

グールドのピアノの音像や、その響きが描かれる空間のサイズがスケールが大きくなる。さすがに、705 S3 Signatureの直後に試聴すると詳細に音を描き出す解像力こそ譲るものの、スケールの大きさに寄与する低音は嫌味や外連味がなくいたって自然な表現が快く、凝縮度の高い音が心地よい。レッチリも、ベースやバスドラムが、より実在感ある音像になりスケール感がアップし、ボトムの低域が豊かでありつつ、やはりなナチュラルなふくよかさが素晴らしい。

「RUBUKORE 8」の試聴風景

澤田氏も、「この低音の懐の広さは、まさにスタガー接続された3発のウーファーによるゴールドブレンドがなせるものですね。ウーファー一発当たりの内容積が増えるとともに、磁気回路も大きくなって、Qと呼ばれる、共振の鋭さを示す値が低くなり、低音が過剰にならないのです」とコメント。

音楽再生、ことスピーカーによる音楽再現は、低音の出方や質感が大きくその完成度を左右させるが、 RUBIKORE 8では、絶妙な交じり合いを持たせ、なおかつその動きが着実に制御された3発のウーファーによって、心地よい低音を実現していることが巧みなのである。

加えて、本機ではドームトゥイーターに加えて、マグネプラナー型のトゥイーターがアドオンされることによって、音色のタッチに緻密さが増していることも大きなポイントだ。ピアノトリオでは、スタジオのメインブースに置かれたアンビエンスマイクが捉えたルームエコーを明快に描き出しリアリティを高めている。

「プラナーリボン型は、しなやかな膜全体が音を出す構造でバッククラッシュが起きないため音にエコーを引かず、サスペンションを持たないためその収束も早いことが特徴です」と、高域側にアドオンされたユニットの魅力が存分に引き出されていることがよく分かる。

続いて、702 S3 Signatureを試聴。こちらは、完全な3ウェイ設計のフロアスタンディング型スピーカーだ。一転して、やはり音の解像力や低域の描写が大きく異なる。グールドのピアノは、軽やかな指先のタッチが印象的で、とりわけ中音域、高音域側のディティールが深く、透明感のある立体的な描写が印象的だ。ハーモニーを形成する各音の余韻の波や共鳴がフレッシュな音色で浮かび上がり、ピアノの音と奏者のハミングとの分離も際立っている。そして、低弦の響きや厚みは特に豊かである。

「702 S3 Signature」の試聴風景

レッチリでも、とにかくボーカルの分離感が良いのは、バイオミメティック・ダンパーを採用したエッジレスのミッドレンジの恩恵が特に高いからと推察する。ギターの歪み感やシンバルのクラッシュなどは、心地よい硬質感でもって明瞭に耳へと届く。低域は、ふくよかさを感じる豊かな余韻が印象的で、バスドラムがダイナミックに踏み鳴らされ、音楽を迫力豊かに再現する。総じて、音楽を構成する各要素がレイヤーが見えるかのような明解な描写が印象的なのである。

■音楽本位の思想はいずれのスピーカーにも共通する



以上、比較試聴を実施してみると、冒頭で述べたような、両社の設計思想の違いやそれぞれの魅力がよく分かる。

データを追求して真実に近づこうとするアプローチのB&Wと、音楽本位の発想からスタートして理論を積み重ねていくダリ。そして、それぞれが掲げる、ミュージカリティ&リファレンスとミュージカル・モニターという思想。

サウンドポリシーが更新された両者のプロダクトには、共通する透明性や音楽再現力を手にする部分もありながらも、やはり、それぞれが持つオーセンティックで伝統的な魅力が確かに息づいているのである。

この記事を読んでくださっている皆さんは、どちらがお好みだろうか。進化を続ける両社最新ラインアップの妙味を、是非とも味わってみて欲しい。

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

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