PR12基のドライバーが織りなす多彩な表現力
目でも耳でも魅了する“青い”チタンIEM。Unique Melody「Maven Pro」レビュー
Mavenで好評だったチタン製筐体は、Maven Proにも踏襲されている。見た目の美しさもさることながら、チタンを採用するメリットは多い。その最たるが強度にある。厚みは一般的なアクリル樹脂製筐体の6分の1程度(約0.2mm)程度でも、その強度は約15倍にもなるという。
さらに堅牢なため音をほとんど吸収せず、静電型ドライバーとの相乗効果で歪みの少ない音を正確なディテールで表現できる。他の金属と比べて熱伝導率が低い点も強み。装着感が外気温に左右されにくく、安定したフィット感とサウンドをもたらしてくれる。
製造には最新の金属3Dプリンターを使う。2,400度のハイパワーレーザーにより金属粉末を焼結し、実に24時間もの時間をかけて、1,200もの積層により複雑な立体成型を施すのだ。
その後も美しく輝かせるために12もの工程を重ね、仕上げは手作業で12時間かけて行われる。ゆえに大量生産は難しく、生産数は1週間あたり12組限定となる。また、処理には熟練の技術が必要で、製造に関わる技術者には最低でも12ヶ月の経験が求められるそうだ。
■極めて自然で豊かな表現力。見た目だけでなく音にも魅了された
Maven Proの実機をチェックしていこう。実物を手に取ると、その造形の美しさに驚かされる。従来機のMavenがシルバーだったのに対し、Maven ProはPVDナノコーティング技術によってサファイアブルーに輝いている。これが実に深みのある上品な青色だ。浅い三角形の彫りは、伝統工芸品の彫金のように美しい。見る者を魅了し、所有欲を刺激する不思議な魅力を帯びている。
装着感は極めてナチュラル。耳介全体で筐体を包み込んでいるようで、どこかに重さや圧力が加わるような感覚はない。カスタム/ユニバーサル問わず数多くのIEM製造を手掛け、どのブランドよりもノウハウを積み重ねてきたUnique Melodyだけあり、誰の耳にもフィットする形状を熟知している。また、チタン素材の恩恵か、見た目は大きく見えるのに極めて軽量なため、数時間連続で楽しんでも負担が少ないのも好印象だった。
ケーブルには銅導体の「UM Copper M2 Custom Cable」が付属する。しなやかでタッチノイズはほぼなく、取り回しも良好だった。入力端子は3.5mmステレオミニプラグを採用。汎用性が高く、DAPやPCなど幅広い機器と組み合わせられるのも嬉しいポイントだ。イヤーチップにはシリコン製のオリジナルチップと、温められることで柔らかくなる熱可塑性エラストマー(TPE)製のAZLA「SednaEarfit XELASTEC」という2種類が付く。
次ページキレもバランスも極めて良い、“明瞭かつ生音に近いサウンド”