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PRデノンのサウンドマスターも評論家宅に来訪して聴いた

デノン「900シリーズ」は“作り手の感性の高さ”が見えるエントリー機だ。高級スピーカーに負けない素性の良さに感動

公開日 2022/10/29 07:30 土方 久明
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人生には勝負の日がある。それは、結婚式だったり試験日だったり人それぞれだろうけど、オーディオレビューを執筆する僕にとって、来客者に自分の音を聴かせる日は、まさに勝負だ。

7月上旬、ファイルウェブの担当者から「デノンの新発売のCDプレーヤー『DCD-900NE』とプリメインアンプ『PMA-900HNE』を自宅でレビューして欲しい」と連絡が来た。

DCD-900NE(写真上)/PMA-900HNE(下)

“900シリーズ”は6月下旬に発売された、デノンのエントリークラスに属するシリーズだ。「これは試したい!」と快諾したのだが、担当者からの次の一言に、執筆の徹夜続きで寝ぼけていた僕は目を見開いてしまった。「デノンサウンドマスターの山内さんと広報の田中さんが、その音を聴きに自宅に伺いたいと仰っているのですが……」

評論家になるとメーカー、商社、販売店の店主さんなどが訪れるケースが増える。しかしよりによって、デノンで唯一、音決めを許される責任者が来るなんて。いつも山内さんの試聴室で音の感想を生意気に言っている僕。「それなら貴方の音を聴かせてもらおうじゃないか」……というわけではないだろうが、僕は数十秒悩んだ末、1つの条件を提示してOKした。

その条件とは、できる限り2台を先行して届けてくれというもの。なぜならDCD-900NEとPMA-900HNEに合わせて、スピーカーセッティングとルームチューニングを行いたかったからだ。

デノンのサウンドマスターとして、製品の音決めを担う山内慎一氏。自身の作った製品をリアルなユーザー環境で聴くとどうなのか、勉強の意味も込めて聴いてみたいとのことだった

そして、試聴当日になったのだが……。その話をする前に、DCD-900NEとPMA-900HNEのスペックをおさらいしたい。

エントリー価格でも上位機の技術を惜しみなく投入「DCD-900NE」

CDプレーヤーDCD-900NEは、ハイエンドモデルの設計思想と技術を受け継ぐエントリークラスのCDプレーヤー。「DCD-800NE」の後継モデル(フルモデルチェンジ)となる。

デノンはCDプレーヤーに力を入れているメーカーで、トップモデルの「DCD-SX11」を筆頭に5機種を市場投入している。その中でもDCD-900NEはエントリーから2番目に位置するモデルだが、フルサイズシャーシを生かし、上位モデルの技術をデジタル回路、アナログ回路の両領域に投入している。

DCD-900NE:¥77,000(税込)

僕が、CDプレーヤーのレビューで最初に注目するのは、シャーシとディスクドライブ部分だ。特にCDプレーヤーはハイレゾファイル再生とは違いディスクが回転するから、ディスクメカの優劣や設置方法が音に効く事が多い。

本機の場合は、「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」と呼ばれる制振構造を採用している。振動源となる電源トランスをフット近くに配置して、トランスの振動を外部へと逃がすドライブメカニズムは、シャーシ中央部に低重心で配置して、ディスクの回転から生じる振動を効果的に吸収しつつ、スピーカーなどから伝わる外部振動の影響も低減している。

デジタル部にはアナログ波形再現技術「Advanced AL32 Processing Plus」を搭載する事が特徴。これは、CDフォーマットの44.1kHz/16bitのデータを、705.6kHz/32bitへとアップサンプリング&ビット拡張処理を行う同社お家芸の技術だ。

D/Aコンバーターは差動電流出力タイプを搭載し、上述した705.6kHz/32bitのデータを高精度にアナログ変換している。

アナログ回路部については、前モデルよりも低ノイズかつ高スルーレートを実現したOPアンプを、I/V変換アンプ回路と差動合成アンプ回路に採用する。筐体の奥行きを伸ばしたことで、基板レイアウトを刷新。左右チャンネルおよびプラス信号とマイナス信号のシンメトリー度が向上した。

DCD-900NEの内部構造。筐体の奥行きが伸びて基板レイアウトをはじめ、さまざまな改善がなされている

大幅にアップデートされた電源部も魅力で、デノン創立110周年記念の上位モデル「DCD-A110」などと同様のフルディスクリート構成を採用しつつ、山内さんが試聴を繰り返して厳選したオリジナルのカスタム大容量(3,300μF)ブロックコンデンサーを搭載している。

その他のトピックとしては、本モデルはCDプレーヤーであるが、フロントにはUSB-A端子が備わり、USB外付けハードディスク/USBメモリ内に保存された、PCM192 kHz/24bit 、DSD 5.6MHzのハイレゾ楽曲ファイル再生にも対応する。

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