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「ウォークマンのハイエンドならでは」への期待に応えられるか?

超ハイエンドウォークマンの進化具合は? ソニー「NW-WM1ZM2 / WM1AM2」徹底レビュー!

公開日 2022/03/24 11:50 高橋 敦
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■音質1:肉声感や気配感の豊かさが格段にアップ

ではいよいよ音質。前述の通りまずはAM2の音について、続いてそれと比較してどうか?という視点からZM2の音質について述べていく。

試聴を通して特に印象的だったのは、NW-WM1AM2を聴き込んだ後に先代のNW-WM1Aを改めて聴き直したとき、「あれWM1Aってこんなに素っ気ない音だったっけ?」と感じた、その瞬間。ということはその「素っ気」が豊かになったことこそ、AM2における最大の進化と言えるだろう。

新「NW-WM1AM2」と旧「NW-WM1A」のサイズ比較。一回り大きくなっているが、重さは約299 g/267gと30gのアップにとどまる

では「素っ気って何」となるが、何しろ「気」の話なのでその正体の全てを手短に説明するのは難しい。そこでここでは二点に絞って説明する。

ひとつは肉声感。「声の生々しさ」という言い方でもよい。広範な意味合いでのポップスの大半において主役は歌、つまり人の声。人間の聴覚が最も敏感に反応するのも人の声。その描き出され方の違いは音楽全体の印象も大きく左右する。それがAからAM2で、激変と評しても過言ではないほどに進化している。

特に驚かされるのは、ボーカルが直接耳に届く生の声っぽさだけではなく、「マイクを通した声としての生々しさ」までも感じさせてくれること。

いや「マイクを通した声」ってそれ生々しいの?と思うかもしれない。だが写真にレンズを通してこそ生まれるボケや距離感があるように、録音にもマイクを通してこそ生まれる感触や表現がある。さらにレンズにはレンズごとの個性があるように、マイクやマイクプリ等にもそれぞれの個性がある。またシンガーはマイクとの距離や角度を瞬間ごとに調整して、声の拾わせ方をコントロールしていたりもする。そういったマイク録音ならではの要素もひっくるめて仕上げられているのが「録音作品における歌声」なのだ。

AM2が届けてくれるボーカルからは、その「録音作品における歌声としての生々しさ」が感じられる。マイクを通した声がマイクを通したように聴こえるわけだから、むしろこれこそがナチュラルと言えるのではないだろうか。

こだわりの内部パーツも高音質への取り組みの一つ

もうひとつの大きな要素は気配感。こちらは例えば「場の雰囲気」みたいな言い方でもよいだろうか。先の「声の生々しさ」を音像描写における話とすれば、こちらは音場表現のポイントと言える。

ただ響きが豊かだという話ではない。響きの有無や多少だけではなく、響きの温度感、響きを介して伝わってくる存在感、響きから感じ取れる空間性などなど、総じて「響きの情報量」が豊かだ。ボーカルの生々しさと合わせて、ライブ録音作品などを聴くと、そのあたりがわかりやすいかもしれない。

そしてその気配の豊かさは、バランス駆動においてはさらに大きな意味を持つ。バランス駆動全般の傾向として、空間描写のスッキリ感が増すことで少し淡白な印象になってしまうことがある。空間が広がることで音と音の間の余白が目立ちすぎてしまうなどの理由からだ。

NW-WM1AM2のヘッドホン端子は、3.5mm(右)と4.4mmのバランス(左)の2種類に対応

しかしAM2のバランス駆動ではむしろ、そのスペースが生まれることで、そこに漂う気配の存在感が際立つ。AM2におけるバランス駆動はAM2の強みをさらに際立たせてくれるのだ。シングルエンド駆動も十分に魅力的だが、バランス駆動利用を特に推したくなるモデルだ。

■音質2:AM2は「Sparkle」ZM2は「プラスティック・ラブ」

ではそのNW-WM1AM2に対してNW-WM1ZM2は?

前世代のAとZの音の違いは「個性はそれぞれでそこは好み次第だが、クオリティとしては明確にZが上」だった。

対して今回のAM2とZM2は「クオリティの差が縮まったことで個性の違いの重みが増して『どちらがよいかは好み次第』感がさらに強まった」と言える。現実的には価格の違いもあるが。

ではその音の個性の違いとは?それが厄介なことに、オーディオ的な言葉では表現しにくい、「表現や描写のニュアンスの違い」として感じられる部分が大きい。

たとえば同じ場所の景色を夕暮れの薄暗さで見るのと夜明けの薄暗さで見るのとでは、仮に計測数値的な明るさはだいたい同じだったとしても、その雰囲気は違ってくる。あるいは昼間にしか会ったことのない人に夜に会ったら何か雰囲気が違って見える。そんなこともあるかもしれない。同じ曲をAM2とZ2で聴き比べたときに感じられるのは、そのような雰囲気の違いだ。

映像的な表現を借りるなら「照明の違い」が近いだろうか。AM2はナチュラルな色合いを引き出しつつ、陰影もくっきりさせるように工夫されたライティング。ZM2はやや暗めでムードを高める色合いでありつつ、立体感も浮き上がらせるように工夫されたライティング。そのような印象だ。もっと俗に蛍光灯に喩えると、AM2は自然光に近い「昼白色」、ZM2はムードを演出する「電球色」と言ったところか。

音楽再生での具体例としては、例えばエレクトリック楽器によるリズムに注目してみると、バシッとしたリズムのそのキレの良さを特に活かしてくれるのはAM2。ジャンルでいうとヒップホップ的なキレや抜けの気持ちよさならAM2が強い。対してクラブミュージック的な重みや沈み、ダークな色彩感の表現に強いのはZM2。

シティポップで言うなら、山下達郎さん「Sparkle」のように日差しを感じさせるサウンドの曲を弾けさせてくれるのはAM2。対して竹内まりやさん「プラスティック・ラブ」のような曲を夜の空気感たっぷりに描き出してくれるのはZM2だ。

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