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小型だがその音質は近年屈指。新進気鋭EARMENの「Tradutto」「TR-Amp」に注目

公開日 2021/12/27 06:30 土方久明
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TR-Amp:全帯域のディテール表現が鋭く立体的な本格志向の音

まずはTR-Ampから対面したが、「カッコ良いなー」と思わず口に出る。アルミ筐体に赤のアルマイト仕上げ、ボリュームや筐体を組み上げているビスはシルバーで統一されており、素材や色調のセンスの良さを感じた。シャーシは削り出しではないがエッジのラインは悪くなく、ボリュームノブを回すと適度なトルクがあり剛性も高い。しっかりとコストが投入されていることがわかる。

3.5mmジャック横に備えられたLEDは、バッテリー残量や、再生中の楽曲フォーマットの通知に対応する

音の総評だが、帯域バランスはフラットな中高域、低域はごくわずかにブーストしているが、制動力はしっかりしており、ベースやドラムスは立体的な表現も含め、全帯域のディテール表現が鋭く立体的な本格志向の音だ。

シュアのイヤホン「SE215」でアデル「Easy on me」(44.1kHz/24bit FLAC)を聴取したが、イントロのピアノの質感がアキュレイトで、ボーカルの質感もソースに忠実だが距離感は若干近く、ベースの分解能や立体感は高い。

YOASOBIの「Monster」(48kHz/24bit FLAC)は、一聴してナチュラルなボーカル、音色は適度に明るく、ドラムとベースの低域の描き分けもしっかり出してくる。ドラムは破綻しないほどの適度な重量感があり、グルーブの高さを後押しする。音場も広い。

続いてシュアのオープン型ヘッドホン「SRH1840」で先程の2曲を視聴してみると、インピーダンス65ΩのSRH1840をしっかりと駆動してくれる。ヘッドホンのキャラクターも後押ししてフラットな帯域バランス、中高域の突き刺さり感がなく、ソースに対して忠実な解釈だ。低域の量感も過不足なく、1つ1つの音のディテールをしっかりと伝える僕の好きな音調に嬉しくなった。

ヘッドホンとの接続イメージ。6.3mmステレオ、3.5mmステレオ端子を同時使用できる駆動力の高さを備える

そして、TR-Ampのプリアンプ機能を活かすため、昨年日本上陸を果たし、大変評価の高かったエアパルスのアクティブスピーカー「A80」とRCAアナログケーブルで接続した。スピーカー再生においても遺憾なく能力を発揮し、バックミュージックの分解能が高く、ステージの奥行きや高さが正確に表現されており、口元の動きがわかるピンポイントなボーカルがしっかりとセンター定位した。

■Tradutto:近年聴いたコンパクトなUSB DACでも良音

次にTraduttoを聴取する。試聴環境はMacBook Proをトランスポートとして本機をUSB接続、続く構成にはアキュフェーズのプリアンプ「C-3900」、同パワーアンプ「A75」、スピーカーにB&W「802 D3」を用いた。まずはC-3900と本機をRCAインターコネクトのアンバランスケーブルで結んでクオリティチェックを行った。

Tradutto試聴の様子。ハイエンドなシステム内に組み込んでもその実力を遺憾なく発揮する

デザインはある意味無骨とも言える質実剛健なイメージ、サイズが驚くほどにコンパクトで新鮮だ。そして何よりもかなり音が良いのである。一聴して高域から低域までがワイドレンジで重心が低く、高域も伸びている。近年聴いたコンパクトなUSB DACの中でも音が良い。

本体の操作系統はフロントに備えられたボタン4つとシンプル。ディスプレイには再生中の楽曲ビットレートなどのステータスが表示される

まずクラシックのオーケストラ楽曲、山田和樹、読売日本交響楽団「マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」/花の章」(96kHz/24bit FLAC)を再生したが、小型の筐体から出ているとは思えないほどスケールの大きな音がするのだ。

ワイドレンジで分解能もあるため、続けて再生した山本剛 「MISTY for Direct Cutting」(DSD11.2MHz)でも解像感の高い再生が楽しめた。シンバルの「ジャン」としたリアルな金属音、ピアノタッチの質感も良く、音がスピーカーに張り付かずしっかり前へ飛び出してくるし、ベースの存在感も悪くない。DSD11.2MHzの音をくまなく伝える表現力に感心した。

次にC-3900とTraduttoを4.4mmのバランスXLR×2の変換ケーブルを使い、バランス接続した。この場合の変化だが、音場のデプスに関しては深くなり、ステージの広さや高さも拡張される。ただ、音色やリアリティについてはRCAの接続にも分があるように感じた。個人的にもさらに聴き込んでみたく、この価格でバランス出力の選択肢を実現していることは特筆すべき点だろう。

Traduttoのアナログ段はバランス回路で構成されているため、4.4mm - XLRの変換ケーブル(別売)を用いてXLR入力を持つプリアンプとの接続も可能だ

最後は、DAPとBluetooth接続して上原ひろみの新譜「シルヴァー・ライニング・スイート」を再生した。Bluetoothとはいえ高音質コーデックに対応しているため、一聴した感じは悪くない。もちろん、有線で接続した場合から比べれば絶対的な分解能は低下するものの、帯域バランスにクセはなく、弱音と強音の描き分けもしっかりとしている。

Bluetoothでの接続にも対応。aptX HD、aptX LL、LDACなどの高音質コーデックもサポートする



両製品とも音質については小型筐体のネガを感じさせない予想を超えるクオリティを持っていた。TR-Ampについては良質なヘッドホンアンプとして利用できるとともに、プリアンプとしての能力も悪くないので、高品位なデスクトップシステムの構築に利用できる。またボリューム調整機能を生かし、プロ用のアクティブモニタースピーカーと組み合わせても良いだろう。

Traduttoについては、今回プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーともオーバースペックとも言える組み合わせの中に投入したが、その中に入っても見劣りしない良質な再生音だと判断する。

デジタル楽曲ファイルやストリーミングサービスの登場は、オーディオ再生に大きな進化をもたらしているが、これらの利便性と音質を生かし、デスクトップ環境からより本格的なハイファイスピーカー環境まで適合できるオーディオ製品としてこの2機種に大いに注目してもらいたい。

(提供:株式会社ユキム)

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