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【特別企画】アンドレアス・ホフマン氏インタビュー

真空管アンプの生けるレジェンド。ドイツの名門“オクターブ”創業者が語る「Jubilee 300B」の真髄

2021/04/15 石田善之
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■「モナリザ」の絵画のように音像は明瞭。不思議な生っぽさがある

さて、試聴である。輸入元であるフューレンコーディネートの試聴室で、プリアンプにオクターブの「HP-700」、スピーカーにはピエガの「Master Line Source 3」を組み合わせ、聴き慣れたCDを中心に音を出した。

独奏チェンバロは、広い大きな空間に緻密な音を豊かに響かせ、教会録音の美しい残響感がスピーカーの音場性に優れた特徴と相まって天井の高い大きな空間を聴かせる。

バリトン独唱のシューベルトの歌曲は、滑らかで豊かな表情の中に人の声が持つ柔らかさ、暖かさを感じさせる。またオーケストラは大編成の豊かなスケールで、トゥッティ部分でも十分なパワー、エネルギーが中域〜低域の厚い響き感を表現し、音の持つ陰影感をくっきりと伝える。フォルテッシモでもパワーでねじ伏せるということではなく、包み込むような、ハイエンドの世界ならではの豊かさを感じることができた。

総体的な印象として、輪郭を強調するような音ではなく、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」が、輪郭線がなくてもはっきりと描き出されているように、本機の音像も、明瞭だが硬さにつながらないという、不思議な生っぽさがある。

アンプやスピーカーなどを強く意識させられることなく、音楽に入り込むことができる。多くの方向とは異なるが、明らかにハイエンドの音の世界を感じさせる。

今回はバイアンプでも聴いてみた。もう1台のパワーアンプは「RE320」で、ここに強化電源がプラスされてウーファーをドライブし、400Hz以上を同軸リボンに任せる。聴いてみると確かに全体のスケール感に豊かさが増し、ウーファー帯域の力強さが加わり、バリトン伴奏のピアノの動きの良さ、躍動感のようなものがしっかりと伝わる。

ローズマリー・クルーニーはもう少し積極的になり、身体全体で歌うという良さを大いに感じさせる。しかしJubilee 300B単体の独特の持ち味、その世界はより強く印象づけられるものがあった。

(提供:フューレンコーディネート)

OCTAVE Jubilee 300B Specifications
●使用真空管:300B×3、ECC82×1、EF 800×1●出力:30W(ハイ)、25W(ミッド)、15W(ロー)●周波数特性:20〜50kHz(-3dB)●SN比(20W出力時):110dB(Gain low)/100dB(Gain high)●ゲイン:Gainlow19.5dB@4Ω/22.5dB@8Ω[通常時]、Gain high:30dB@4Ω/33dB@8Ω調整可[バイアンプ使用時] ●入力感度:0.5V( Gain high) 1.7V(Gain low)●入力端子:RCA×1、XLR×1●出力端子:4/8Ωスピーカー各1系統●付属機能:バイアス調整、ECOモード●定格電力:400W(フルパワー時)●サイズ:660H×240W×400Dmm●質量:60kg(1台)●取り扱い:(有)フューレンコーディネート

本記事は『季刊analog vol.67』 からの転載です。

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