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【特別企画】撮影データのポテンシャルを最大に引き出す表示環境

最高のクリエイティブ・パートナー!BenQの本格派PCモニター「SW321C」レビュー

2020/08/28 山田久美夫
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■箱から出してPCと接続した瞬間から、きっちり忠実な再現

さて、気になる実際の表示クオリティだが、誤解を恐れずにいえば、“きわめてハイレベルなスタンダード”といった印象だ。よく「クオリティの高いモニターだと、写真もきれいに表示できるのでしょうね」と仰る人がいるが、実はモニターの性能において、「きれい」という表現は的確ではなく、「忠実」という方が正しい。


カラーモードも充実しており、「Adobe RGB」、「sRGB」、「モノクロ(レベル1/レベル2/レベル3)」、「Rec.709」、「DCCI-P3」、「Display P3」、「M-book」、「HDR」、「DICOM」、「Paper Color Sync」、「校正1」、「校正2」、「校正3」、「カスタム」の全14モードを備える

本機は、ムラ補正技術の採用により、均一なグレーなどを画面全体に表示しても、驚くほどムラがない。まったく見当たらないといってもよいレベルだ。手持ちのディスプレイを一度じっくりと観察してみてほしいが、低価格帯のモニターや、薄さを重視しているノートPCの液晶画面などは、画面内にびっくりするほどムラがある。

画面内のムラは、輝度にしろ、色にしろ、一度気になってしまうと、もう気になって気になって仕方がなくなってしまうものだ。その点、本機は画面内に輝度や色のムラがないため、32型の大画面を安心してフルに活用できる。この信頼感は絶大だ。

しかも本機は、工場出荷時にきちんと色やムラなどを調整した状態で出荷されており、箱から出してPCと接続した瞬間から、きっちり忠実な再現を体感できる。もちろんハードウェアキャリブリーションにも対応しているが、正直、キャリブレーションせずとも、よほど厳密な作業や、カスタム設定をしている場合でない限り、そのまま使用して問題のないレベルという印象だ。

試しに、愛用しているデータカラー社のキャリブレーター「SpyderX」と、BenQが無償提供する校正ソフトウェア「Palette Master Element」を使ってキャリブレーションを行なったが、出荷時の表示とまったく見分けが付かない結果となった。


安価なモニターやノートPCの液晶画面では正確な表示が難しい写真も、本機は忠実に再現してくれる。色ムラも輝度ムラも驚くほどないので、安心して編集作業に集中できる

また、本機で特に評価したいのは、画面表面の反射の少なさだ。いくらモニターフードを装着しても、設置する位置などにより光が映り込んでしまうことは多々ある。しかし、本機はきわめて表面反射が少なく、試用期間中、映り込みを心配することはほとんどなかった。

カラーマネジメントモニターの表面処理は、光沢ではなくノングレアが主流だが、本機の反射の少なさは、その中でも群を抜くレベル。地味な仕様ではあるが、極めて重要なポイントといえるだろう。


モニターフードに頼らずとも画面反射の少ない本機だが、通常はオプション扱いが多いモニターフードも同梱。縦向き設置にも対応する(左)、フード内部は反射防止の起毛処理まで施されている(右上)、画面の汚れを取り除くメンテナンス用のローラーも付属する(右下)

本機の画面表示を確認すべく、いつもチェックに使っているカットを、次から次へと表示してみたものの、あまりに自然だ。なんの誇張も、なんの違和感もなく、ただ心地よい時間だけが流れていく。モニターのチェックをしているつもりが、気が付くと、いつの間にか自分の好きな写真や映像を楽しんでしまっている。

いいモニターは、その存在を主張しない。だからこそ、いいモニターなのだ。これじゃインプレッションにならない…と申し訳なく思うが、レファレンスクラスのモニターは、おしなべて、その存在すら感じさせないほど、当たり前に、心地いい表現をしてくれるものであり、本機も例外ではない。

ここまで忠実な表示環境が、こんなに手軽に作れるなら、あとはただ自身の作業に没頭すればいいだけだ。そういった意味で、本機は最高のクリエイティブ・パートナーといえるかもしれない。

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