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【特別企画】海外でも話題のアナログヘッドホンアンプ

Benchmark「HPA4」レビュー。鳴らしにくいヘッドホンも朗々と鳴る「THX-AAA」ヘッドホンアンプ

2020/08/13 佐々木 喜洋
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音楽とヘッドホンの個性を出すニュートラルサウンド、そして驚異的なパワフルさ

HPA4の本体はわりとコンパクトだが、背面は入出力端子でぎっしりと埋め尽くされている。正面には大きな液晶と大きなボリュームノブなどのスイッチ類が配置されている。液晶にはボリューム位置が大きく表示されるので、うっかり大出力でヘッドホンを鳴らしてしまうという心配は少ないと思う。

HPA4前面のディスプレイはタッチ操作に対応。入力の切り替えやミュート、左右バランスの調整など細かい操作が行える

ボリュームは軽くてカチカチとクリック感のあるエンコーダー式のノブだ。ヘッドホン端子は6.3mmの標準端子に加えて4ピンのXLR端子がある。再生中の筐体は多少暖かくなる程度で、電源効率は高いと思う。

前面に6.3mmと4ピンXLRの2種類のヘッドホン端子を搭載する

試聴はWindows10で、Roonを使って再生するPCオーディオ環境で行った。今回組み合わせたDAC3 DXは、最新バージョンのWindows10ならドライバー無しで認識が可能だ。ヘッドホンは定番のゼンハイザー「HD800」と、鳴らしにくさで知られる平面駆動型のHIFIMAN「HE6」を使用した。

まずHD800を使用してみる。聴こえるのは澄み切って音に着色感がなく、端正でニュートラルなサウンドだ。ワイドレンジで、超低域の豊かさ、澄み切って伸びる高音域の高みなど、HD800の限界を試しているかのようだ。優等生的なクラシックやジャズはもちろん、音のトランジェントが良いためロックを聴いていてもスピード感があって気持ちが良い。

解像感は極めて高く良録音の古楽アンサンブルなどを聴くと、さまざまな楽器の音色が見事にかき分けられているのに感嘆する。またSN比が高いので音がくっきりと浮き上がる。これはソロピアノなどアコースティックだけではなく、エレクトロニカなどでもはっきりとわかる。音の再現力はかなり高いレベルなので、実のところHD800でも物足りなくなってくるくらいだ。

着色感の無いニュートラルな音で、ヘッドホンの性能を限界ギリギリまで引き出してくれる。パワーも平面駆動型を軽々と鳴らせるほどだ

次に平面駆動型のHIFIMAN HE6を使用してみた。鳴らしにくいと言われる平面駆動型の中でも特に能率が低いヘッドホンだが、HPA4では音量が十分取れるどころか、明るく朗々と音が鳴るのに驚いた。HE6を鳴らしきれる数少ないヘッドホンアンプの1つだろう。これぼどまで圧倒的なサウンドがヘッドホンから出てくるのに感嘆させられる。

HE6はHD800と異なり、暖かみのある音を鳴らせるのだが、HPA4ではこの差がよくわかる。はじめは平面駆動型をどれだけ鳴らせるか確認するだけのつもりだったが、気に入って、しばらくHE6で聴いてしまった。



HPA4はオーディオ機器の性能で重要なワイドレンジ感、ダイナミックレンジ感、スピード感/トランジェント、細かい音の解像感などについて、いずれもトップレベルの能力を持っている。また着色感が少ないのは音源の差、ボーカルの声の個性、ヘッドホンの違いを楽しめるということでもある。この高い性能によって、ミュージシャンが音楽に込めた細かい工夫を堪能でき、音楽の感動を一層深くしてくれる。

いまではDAC内蔵ではない純粋なヘッドホンアンプは珍しいが、HPA4はその価値があると教えてくれる製品だ。海外での高い評価もうなずける。ぜひ最新のフラッグシップクラスの平面駆動型ヘッドホンで使っていただきたい逸品だ。
(企画協力:株式会社エミライ)

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