共通項は?違いは?

ビクターの“WOODイヤホン”を聴き比べ! 旗艦機「FW10000」と兄弟機「FW1500」の音質傾向はどう違う?

高橋 敦
2020年06月23日
■ビクター“WOOD”イヤホン旗艦機と兄弟機を比較視聴

フラグシップモデル「HA-FW10000」と兄弟機「HA-FW1500」を比較視聴

JVCそしてビクターブランドのイヤホンラインナップにおいて象徴的と言える存在、「WOOD」シリーズ。その最新世代はシリーズ10周年記念モデルとして開発された「HA-FW10000」、その成果が落とし込まれた「HA-FW1500」だ。

しかしその音や使い勝手を体感すると、両モデルの位置付けは、先行して開発された最新世代フラグシップ機とその成果を生かしつつ手にしやすい価格も実現したシリーズ入門機というだけにはとどまらないと感じられる。

私見としては、従来のWOODシリーズらしさを引き継ぐことにこだわりすぎず現在から未来に向けてのWOODシリーズの在り方を探求したHA-FW10000、その技術を継承しつつこれまでの同シリーズらしさも生かしたHA-FW1500。そういった印象だ。

という見方を踏まえ得てもらった上でまずは、HA-FW10000で開発されHA-FW1500に継承された、両者に共通する技術要素から確認していこう。

最も大きな要素はやはり、進化した肝心要のウッド振動板「ウッドドームカーボン振動板」だ。

音の伝播速度と振動の減衰特性に優れるカバ材を向こう側が透けて見えるほど極薄に削り出し成形したウッドドームと、カーボンコーティングを施したPET素材との組み合わせ。可動部となる振動板外周では頑強でありつつしなやかなカーボンコーティング樹脂振動板の特性を、より正確なモーションが必要となる振動板中心部ではウッドドームの特性を発揮させる狙いだ。

両モデルとも独自技術によるウッドドームカーボン振動板を採用(※画像はHA-FW1500のもの)

そしてその振動板の動きを空気圧力の制御によって補助する「アキュレートモーションエアダンパー」技術、ドライバー全体を金属ケースでパッケージングすることで音の雑味を排除する「ドライバーケース」までが一体となって最新世代のドライバーシステムを構成している。

他、ドライバーからの音をノズルに導く前段にてスパイラルドット技術の応用で整える「アコースティックピュリファイアー」、ソフトなフィット感とクリアなサウンドに貢献するおなじみ「スパイラルドット+」イヤーピースなども、両モデル共通の要素。

その他、両モデルともリケーブルにも対応。ハウジングにはビクターを象徴するニッパー犬も刻印されている

■両機の違いはどこに?

対して両モデルの相違点はというと、例えば前述のドライバーケースがHA-FW10000はチタン製でHA-FW1500はステンレス製、ノズル部分がHA-FW10000のみステンレス製であるところなど。このあたりは単純に投入できるコストの違いによるものも大きいだろう。そしてそれは素材の違いというだけであり、投入されている技術それ自体は同じものだ。

大きな違いと言えるのはハウジング周り。

HA-FW10000はメインハウジングの音響設計の自由度を高めるためにメインハウジングからMMCXリケーブル端子部分を分離する形を採用、それに伴いケーブルを耳の上に回すイヤーモニタースタイルの装着方法も新たに採用。

HA-FW10000

一方のHA-FW1500はシリーズ従来通りのスタイルにあえて戻っている。狙ってか結果的にかはわからないが、ルックスや使い心地は従来のWOODシリーズのファンによりなじみやすいものとなっているわけだ。

HA-FW1500

そして両モデルの個性がよりはっきりとわかれるのはサウンド。

HA-FW10000はこれまでのWOODらしさにとらわれず現代的なシャープネスまでもを感じさせる描写。対してHA-FW1500は、現代的ポテンシャルも内包しつつ、WOODらしいおおらかさも改めて取り込んだような音作り。

またHA-FW10000は個々の音の描写を突き詰めることで全体の完成度も自然と高められているような印象。対してHA-FW1500は全体のまとまりも強く意識した音作り。そのように感じられる。

■具体的な音質傾向の違いとは?

マハリアさん「Karma」はやや気怠い雰囲気のR&Bテイストで心身を緩やかに揺らしてくるような、コンテンポラリーなポップス。

HA-FW10000で聴くとそのコンテンポラリーな要素、最新録音らしい解像感やスピード感が際立つ。シンバルのシャープさは当然、バシッにカツッが適度に混ざる硬めのアタックなスネアドラム、引き締まって細マッチョなベースなど、コンパクトでいて存在感の強い音像描写だ。それらの各楽器という精巧なパーツがカッチリと組み合わさることによる緻密な空間描写も見事。

その美点は、A&ultima SP2000のような同傾向の持ち味を備えるハイエンドプレイヤーとの組み合わせでは特に素晴らしく鋭利に発揮される。逆に同社製品でもKANN CUBEのようにより力強く骨太なプレイヤーと組み合わせることで、パワフルさを加える方向に振るのもアリだ。

対してHA-FW1500で聴くと音像は全体にやや大柄となり、特にベースとバスドラムはより太く重く、そしてより低い重心でグッと沈み込む印象となる。中高域の楽器による細かなリズムよりも中低域の楽器による大きくおおらかなグルーヴが支配的となり、体に伝わってくる揺れもゆったりとしてくる。

それでいてだが、スネアの抜け感やバズ成分など高域のニュアンスを拾いこぼすことはなく、リズムから醸し出されるヒップホップ的な感触も損なわれていない。主役のボーカルも当然より大柄に描き出され、歌の節回しも繊細すぎない滑らかさで表現される。歌物としての主張もしっかりと届けてくれるので嬉しい。

空間表現は、十分な緻密さも備えつつ、全体のなじみのよさもポイントだ。空間自体の雰囲気が余白まで濃厚で、音と音の間も豊かな響きで繋がっている。

というような印象は、R&Bテイストの強い楽曲全般でおおよそ共通する。

Robert Glasper Experiment「Human」では、HA-FW10000は突き詰めた再現性、遊びの少なさ、フラッグシップとしての絶対的な力によって、こういった楽曲のコンテンポラリーな優秀録音らしさ、構築感、エレクトリックなエッジ感などの要素をビシッと立たせ、その完成された美しさを表現してくれる。

HA-FW1500はもう少し遊びを残したおおらかな描写で、こういった楽曲のメロウさやソウルフルさ、生感といった、音楽的なニュアンスの部分を強めに表現してくれる印象だ。こちらを好む方もいらっしゃることだろう。

とはいえ、Helge Lien Trio「Take Five」のように楽曲自体が硬質で鋭利な演奏を魅力とするものだともう一方的にHA-FW10000優位だったりするので、好みや得手不得手を勘案してもやはり総合的にはHA-FW10000の方が強いとは思う。

しかし総合的にではなく個人個人の音の好みやよく聴くジャンルに限定した話としては、HA-FW1500の方が強くハマることも少なからずありそうだ。

というように、HA-FW10000にHA-FW1500というWOODイヤホン最新世代ラインナップは、価格帯だけではなくそのキャラクターにおいても互いに異なる魅力を与えられている。

なので例えば、予算的にHA-FW1500が限界だけどそれって妥協かな?なんて悩んでいる方も、実際に聴き比べてみたら予算とか関係なくHA-FW1500の方が好みだった!なんて可能性もあるわけだ。

今の状況から試聴の機会を作るのは難しいかもしれないが、Victor製品、特にWOODシリーズ上位モデルはそう頻繁に代替わりするものではない。じっくり納得いくまで検討し、あなたにフィットするモデルを選んでいただければと思う。

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