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【特別企画】キーマンへのインタビューも実施

フルモデルチェンジで再誕した「Confidence」、最新の“DYNAUDIOの音”を聴く

2020/02/26 逆木 一
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16年ぶりのフルモデルチェンジとなった、デンマークのスピーカー専業メーカーDYNAUDIO(ディナウディオ)の新「Confidence」シリーズ。同シリーズのトールボーイスピーカー2モデルの試聴レポート、そしてDYNAUDIOのゼネラルマネージャーであるローランド・ホフマン氏に尋ねた新「Confidence」シリーズのコンセプトについて紹介したい。


新トゥイーターを始め最新技術を盛り込みフルモデルチェンジ

いよいよ、ディナウディオから新たな「Confidence」シリーズが発売になった。前シリーズから実に16年ぶりとなるフルモデルチェンジであり、期待値も高い。

ところで、ディナウディオにとって「理想のスピーカー」とはどのようなものだろうか? 「ディナウディオ・アカデミー」のディレクターであるローランド・ホフマン氏によれば、それは次のようなものだ。「音を表現できない」「存在がない」スピーカーこそが、最高にして究極。

その理想を実現するために、新Confidenceシリーズには数々の新要素が投入されている。

新要素の最たるものを挙げるなら、本シリーズで初めて搭載された「Esotar3」となるだろう。これはディナウディオの誇るソフトドーム・トゥイーター「Esotar」の最新モデル。より強力なマグネットと精密性、2倍のサイズのチャンバー、そして振動板の背後の気流を整える「Hexis」というサブドームを搭載し、前モデルから大きなステップアップを果たした。ウーファーについても、最高グレードのネオジム磁石を使うとともに「動き」と「エアフロー」に関して徹底した改良が加えられた。「このような改善は、ユニットを買ってくるだけのメーカーでは不可能」とディナウディオは胸を張る。

Confidenceシリーズに採用されているEsotar3は、同社の最新型トゥイーターである

ディナウディオの誇る巨大な音響測定施設「Jupiter」も存分に活用され、それは「現実的な設置環境でパフォーマンスを発揮する」ために指向性を制御する「DDC」技術の改善に寄与し、新たな「DDCレンズ」として結実している。フロントバッフルは「Compex」という特殊な合成樹脂製で、これは「素材から選ぶのではなく、理想の音響特性から考える」開発姿勢の結果出来上がった素材とのこと。複雑な形状のフロントバッフルは、DDCレンズの一部としても機能している。

シリーズで共通して搭載されている新開発の18cmウーファーは、ネオジム磁気回路を採用

また、バスレフポートが従来の背面から底面に移ったことにも注目。より低い周波数にチューニングでき、「バスレフ臭さ」を消すためには「もっと長く、大口径のポート」が理想とのことで、それを実践した格好だ。スタンドの構造と一体化した、低音を横方向に導くディフューザーにより、セッティングも容易になった。なお、これはブックシェルフモデル・トールボーイモデルに共通する。

Confidence 30の背面部。入力端子はシングルワイヤリング専用の物が背面下部に設けられている

Confidence シリーズは、側面と背面が一体化されたティアドロップ型のエンクロージャーを採用している

精緻かつ爽やかな瑞々しく生命力溢れる感覚

今回、ディナウディオジャパンのショウルームにてトールボーイモデルの「Confidence 30」と「Confidence 50」を試聴する機会を得たので、その印象をお伝えしたい。

「Confidence 30」¥2,700,000(ペア/税抜)

「Confidence 50」¥3,700,000(ペア/税抜)

まずConfidence 30を聴いたが、まず驚いたのはドキッとするほどのエネルギー感。この点で、以前に聴いたConfidence 20に感じた精緻さの極致とは少々性格が違うと思われた。といっても単純な荒々しさとは一線を画しており、あくまでも精緻かつ爽やかな、瑞々しく生命力溢れる感覚に満ちている。

音を聴いて瞼に浮かぶのは、陽光を浴びて煌めく雪融けの光景だ。スピーカーが表現し得る音楽のダイナミックレンジが実に広大で、ごく小さなディテールの発露から爆発的なエネルギーの噴出に至るまで、余裕綽々に表出する。そしてなにより、「歌い手や奏者そのものを空間に現出させる」という強烈な印象を覚えた。そこに居る・在るという実体感には目を見張るものがある。現代のスピーカーとして「録音された音楽を精密に再現する」能力を持っていることはもはや当然として、その先の、「聴く者の心を動かす力」にこそ感銘を受けた。伊福部昭作曲・若杉弘指揮の『ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ』を本機で聴いた時、繚乱する音の粒子ひとつひとつに生命力が漲り、初めてオーディオを通じてこの曲の精髄に触れた思いがした。

続いてConfidence 50を聴く。これはもう「Confidence 20とConfidence 30の完全な上位互換」とでも言えばいいのか、20の精緻さと30の生命力の両方を兼ね備え、再生音はさらなる地平に至っている。もちろん、ディナウディオのスピーカーに期待される潤いや浸透力といった要素も健在だ。まさにディナウディオの考える「完璧」を体現したようなスピーカーであり、正直言って、「何だこれは」と面食らってしまうほどの音を味わった。

最後に、今さらではあるが、「Confidence」というシリーズ名に触れておきたい。Confidenceとは「信頼」や「自信」を意味するのだが、はたしてディナウディオはどのような意図で、このような名称をシリーズに与えたのだろうか。

ホフマン氏は次のように語った。まず、ユーザー自身が、「自分の聴いている音」に対して信頼と自信を持ち得ること。そして、メーカー(ディナウディオ)自身が、自分が作ったスピーカーに対して「これぞ理想」という信頼と自信を持ち得ること。この両方の意味を込めて、「Confidence」と名づけられた、と。この名称を冠するに至るまで、いったいどれだけの研鑽と、それに根差した矜持が必要とされたのだろう。オーディオファンとして、そこに想いを馳せずにはいられない。

長きにわたって真摯にスピーカー作りを続けてきたディナウディオの、最新・最高のスピーカーこそが新Confidenceシリーズである。その到達した地平を、あらゆるオーディオファンに体験してもらいたいと願っている。

外観はトラディショナル、実態はイノベーションの塊

昨年、新Confidenceシリーズの発売にあわせ、ディナウディオからローランド・ホフマン氏が来日。筆者はホフマン氏にインタビューする機会を得た。

Dynaudio Germany GmbH、Roland Hoffmann(ローランド・ホフマン)

インタビューの中で、新Confidenceシリーズに関して語られた内容については、上記レビューに含めている。ここではそこに入れられなかった内容で、特に面白かったものを紹介したい。

——近年、ユニットやキャビネットにハイテク素材や大量の金属を使用したスピーカーが、特にハイエンドの領域で数多く見受けられます。そうした製品と比べると、ディナウディオのスピーカーはオーソドックスな造りを維持しているように思えますが、この辺りの認識はいかがでしょうか?

「まず、物量投入は必ずしもイノベーションではありません。金属にせよ各種素材にせよ、それら自体は『すでにあるもの』を使っているに過ぎないからです。たしかに、ディナウディオのスピーカーの外観は少々トラディショナルかもしれません。しかし、実際はイノベーションの塊です。いわばテレビのようなもので、たとえ外観がほとんど変わらなくても、進化は中身にあります。そして、『パネルメーカー』だけが、真の意味でクオリティを向上させることができます。これは『ユニットメーカー』であるディナウディオも同じです」

ディナウディオのスピーカーメーカーとしての立ち位置を端的に示す話ではないだろうか。実際にディナウディオの「一見」オーソドックスなスピーカーで音楽を聴けば、ホフマン氏の語る「イノベーション」の意味が実感できる。

さて、筆者はディナウディオのスピーカーの音について語る時、「雪」という表現を使っている。ディナウディオのスピーカーに感じる豊かな陰翳、傑出した音楽のディテールの描写力、冷厳な静寂の内に秘める極彩の煌めき……それらすべてを表現するうえで、「雪」に勝る言葉を見つけられないからだ。

「音を表現できないことこそが最高のスピーカー」と語ったホフマン氏に対し、正直にこのことを伝えたところ、彼はおおいに理解を示し、同意してくれた。「雨ではなく、雪でよかった」とも言っていた。

ホフマン氏のディナウディオでのキャリアは18年。それ以前からディナウディオユーザーだったとのことで、「ファンとしての視点」もおおいに役に立っているという。そんなディナウディオの内と外を知り尽くしたホフマン氏から、ディナウディオに対する認識にお墨付きをもらえたことが、筆者にとっては一番の僥倖だった。

Specifications
<Confidence 50>●出力音圧レベル(2.82V/1m):87dB●許容入力:400W●インピーダンス:4Ω(最小2.7Ω@79Hz)●周波数特性(±3dB):35Hz〜22kHz●クロスオーバー:200Hz、2.86kHz●ユニット:180mmウーファー×2、150mmミッドレンジ×2、28mmトゥイーター(Esotar3)●サイズ:364W×1557H×424Dmm(脚部含む)●質量:49.6kg
<Confidence 30>●出力音圧レベル(2.82V/1m):88dB●許容入力:350W●インピーダンス:4Ω(最小2.8Ω@85Hz)●周波数特性(±3dB):38Hz〜22kHz●クロスオーバー:290Hz、3.7kHz●ユニット:180mmウーファー×2、150mmミッドレンジ、28mmトゥイーター(Esotar3)●サイズ:364W×1382H×424Dmm(脚部含む)●質量:44.2kg●取り扱い:DYNAUDIO JAPAN(株)


本記事は季刊・Audio Accessory vol.176 SPRINGからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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