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シリーズ4機種をステレオ再生でレビュー

ディナウディオのスピーカーには、なぜ心に響く浸透力があるのか。最新モデル「Evoke」を聴いてわかったこと

2019/04/16 角田郁雄
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ハイエンドスピーカーブランドとして世界中で支持を集め、近年はプロオーディオやカーオーディオの分野にも進出しているデンマークのブランド、DYNAUDIO(ディナウディオ)。同社はこの度、およそ10年間生産し続けてきた“Exciteシリーズ”を終了し、新シリーズ“Evoke "を発売する。同シリーズの、角田氏によるレビューをお届けしよう。

DYNAUDIO「Evokeシリーズ」をレポートする

DYNAUDIOとの巡り合い

DYNAUDIOは、1977年に創立したデンマークの老舗スピーカーブランドだ。現在はホームオーディオのほか、プロオーディオ、カーオーディオにも製品を展開する。私が同社を知ったのは、1990年前後のことだ。都内のあるスタジオで使用されていた、40cm径程度のダブルウーファーを搭載した4ウェイ・ラージモニターがきっかけだった。おそらく、特注品だったように記憶している。

その当時、スタジオのラージモニターの多くは大音圧を発していたが、音場の広さや音像の実在感を探る上での解像度には、十分満足できなかったことが多かった。しかし、そのDYNAUDIOのラージモニターに使用されたユニットは、音離れが良く、歪み感が極小であった。スピーカーシステムとして高域から低域までフラットレスポンスで、大音量でも歪みを感じず、高い解像度を実現していた。この優れた解像度特性のおかげで、音場や音像を探ることができたのである。

デンマークから凄いスピーカーブランドがやって来た。その音を聴いてそう実感させられたのを今でも覚えている。きっと、これからもっと凄いユニットを作るであろうとも思った。その予想はある意味で当たっていたのだが、驚くべきは、同社のユニットに対する考えが現在に至るまでぶれていないことだ。

DYNAUDIOは、年を経るごとに登場するハイテク振動板素材(例えばケブラー、カーボンファイバーなど)や、アルミなどを用いた強固なキャビネット構造には見向きもせず、粛々と自社開発のソフト・ドーム型トゥイーターやMSP(珪酸マグネシウムポリマー)振動板ウーファーを用い、それらを時代とともに徐々に進化させて来ている。この徹底した開発姿勢には、常々感心させられるのだ。

また、同社は徹底して特性を重視する一方で(大規模なラボを完成させたことも記憶に新しい)、最終的な音の分析器・測定器は、人の聴感であるとしている。人の聴感、心に響く音は何かを把握し、躍動感に溢れた音楽を再現することに、注力しているのである。


最先端技術搭載の新シリーズ“Evoke ”の登場

そのDYNAUDIOが約10年間生産を続けてきた「Exciteシリーズ」を終了し、その後継として最新技術を搭載した「Evoke シリーズ」を発表した。主役となるのはブックシェルフ型「Evoke 10」「Evoke 20」、フロア型の「Evoke 30」「Evoke 50」の4モデルである。

左から「Evoke50」「Evoke30」「Evoke20」「Evoke10」。他、センタースピーカー「Evoke25C」(写真右)もラインナップされている

同社のスピーカーというと、トラディショナルなスクウェア・キャビネットをイメージする方も多いだろうが、Evoke は、わずかに奥にすぼまった形状をとっている。これにより、内部定在波を抑えているようである。温かみのある、自然な手触りのオープンベニア仕様としていて、ウォールナットウッドとブロンドウッド仕上げのものと、光沢のあるホワイトとブラックのハイグロス仕様の計4種類が登場している。

DYNAUDIOのスピーカーが大きな人気を集める理由のひとつに、木目を活かした美しいデザインがある。今回実機を聴いたウォールナットウッドとブロンドウッドの2種類は、実に北欧らしいエレガントなデザインにまとめられている。ホワイトとブラックのハイグロス仕様の方は、新しい塗装の技法によって美しい光沢を得ており、ほぼガラスのような質感を出したとのこと。いずれの仕様も価格以上の高級感を漂わせている。これが、DYNAUDIOのセンスなのである。

ディナウディオらしいエレガントなデザインも健在

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