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【特別企画】ELACファンも納得の出来映え

ELACの伝統+新たな個性! あの240シリーズの現代版「CARINAシリーズ」を山之内 正が聴く

公開日 2019/10/01 06:30 山之内 正
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ブックシェルフ型「BS 243.4」試聴。小音量でもリアルなサウンドを実現

BS 243.4は専用スタンド(LS-50)に載せて試聴した。音像のフォーカスはヴォーカルではFS 247.4とほぼ同じくらいだが、SACDで再生したヴァイオリン(ハイメ・ラレード)のイメージはまさにピンポイントに収束し、伴奏のピアノとの距離感も精度高く再現。両者を包み込む余韻は左右スピーカーの外側まで伸びやかに広がり、響きが消えるタイミングも正確だ。ヴァイオリンの音色は明るく艶が乗り、ピアノの柔らかと好対照をなす。中音域にもう少し潤いが欲しい音域があるが、そこはもう少し鳴らし込むと変化する可能性がある。

BS 243.4は専用スタンドを使用して試聴した

ジャズのセプテットを再生すると、ベースの端切れの良さが活きて、アップテンポの感触がリアルに伝わる。音色の傾向はウォーム系ではないが、ハードでドライなタッチとも異なる。明るさを指標にして、ダーク系ではなくブライトな傾向と言った方が近いかも知れない。どちらにせよ、リズムと旋律楽器を同じくらいアクティブに鳴らすことがBS 243.4の最大の美点と言えそうだ。

オーケストラやピアノ独奏で聴く低音楽器の量感は、このサイズのブックシェルフ型としてはかなり健闘している。ティンパニやコントラバスなど、量感を左右する低音楽器の音域にバスレフ型ならではの力強さがあり、大太鼓など、それより低い音域はあえて無理をしない。あと半オクターブ下まで伸ばしたいなら、フロア型のFS 247.4を選ぶことをお薦めする。

BS 243.4で感心したのは小音量再生時のリアリティの高さである。特にヴォーカルは鮮明な発音をキープしたまま立体的な音像が左右中央に精度高く浮かび、音が消える最後の瞬間まで芯のある音が持続する。音量を下げると途端に実体感を失ってしまうスピーカーも少なくないのだが、BS 243.4にはそのもどかしさがない。音量をあまり上げず、ニアフィールドでじっくり聴きたいという人にも積極的にお薦めできるスピーカーである。



CARINAシリーズは、ELACのラインナップの中でVELAとともに中心を占める製品群で、同社の屋台骨を支える存在である。JETを継続して採用したことからも分かる通り、設計アプローチから見てもELACのメインストリームを継承している。

ブランドの個性をダイレクトに受け継いでいるのは上位のVELAかもしれないが、CARINAはそこに新たな個性をブレンドし、バランス良く仕上げていると感じた。具体的には音色の明るさや鮮度の高さが新しい要素なのだが、それを加味するさじ加減が絶妙なので、従来の製品群を支持してきたELACファンも、違和感なく受け入れられるはずだ。

(協力:ユキム)

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