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組み合わせ試聴+単体音質もチェック

躍進のモデルチェンジ、5万円で大型SPも鳴らす! デノン「PMA-600NE」「DCD-600NE」レビュー

公開日 2019/09/28 06:30 生形 三郎
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スピーカーをGX100BJに繋ぎ変えて試聴しても、基本的に同一傾向の質感が得られた。やはり、ボトムにがっちりとした骨子の感触がある。小型ブックシェルフといえども腰が十分に落ちるとともに、決して音が緩まずに確かな実体感を持つのが快い。

ギターは、音色に適度な明瞭感があり、ストロークの切れ味が良好だ。ピアノも、楽器が持つ固有の音色をよく引き出しながらも、シャープな質感で聴かせてくれる。そして、GX100BJならではの奥行き表現の深さが十全に活かされ、楽器や演奏空間を、適切なスケール感を持つ立体的なサウンドで描写した。

続いて、DCD-600NEのデジタル出力を、PMA-600NEのデジタル入力に接続して試聴すると、アナログ接続時に比べ、楽器の音像はやや手前に迫る形で再現された。奥行き表現や音色のしなやかさなど音の品位やレンジ感はアナログ接続に軍配が上がるようだが、TV音声などをスピーカーにつないで楽しむという用途を念頭に置けば、必要十分な実力と言えるだろう。

DCD-600NEは光デジタル出力×1、PMA-600NEは光デジタル入力×2と同軸デジタル入力×1を搭載。テレビなどリビングに置く機器との親和性も高めている

また、PMA-600NEとAndroidタブレットをBluetooth接続してYouTube動画を閲覧したが、映像と音声のタイミングがズレることも無く、また、高域表現に圧縮ソース特有の付帯感も見受けられなかった。動画配信コンテンツや音楽ストリーミングサービスなどをスマートデバイスから手軽に楽しむ分には、十分な音質が確保されているといえる。

PMA-600NEの前面パネルは、「アナログモード」やソースダイレクト、Bluetooth/デジタル入力など機器の状態がひと目でわかる構成となっている

ソースダイレクトのオンオフを比較すると、S/N感が大きく変わってくることを確認できる。アナログモードのオンオフも同じく、音の余韻の移り変わりなどがより精細さを増すようで、楽器の音色再現にも、よりその楽器本来の色味が引き出される。同時に、ヴォーカルの息づかいや演奏の力加減など、ダイナミクスの微細な変化による演奏表情がより掴みやすくなる。先述のように、同社のAVアンプ設計チームとの緊密な連携により、エントリーかつノイズ混入のデメリットを含む多機能なレシーバーといえども、しっかりと音質に配慮された設計が行われていることを再確認できた。

最後に、PMA-600NEとDCD-600NEをそれぞれほかのコンポと組み合わせ、それぞれ単体の音色感を探った。まず、PMA-600NEにアキュフェーズのSACD/CDプレーヤー「DP-750」を組み合わせてみると、価格が優に20倍以上というハイグレードなプレーヤーの素性の良さもしっかりと描き出される。DP-750が持つ空間やディティールの再現力や、質感の良い丁寧な描写力を確認できた。

プレーヤーをDCD-600NEに戻し、今度はアンプをアキュフェーズ「E-650」に変更してみる。すると、ハイエンドクラスのプリメインアンプらしい十全な駆動力とA級アンプならではのシームレスな音調の中に、DCD-600NEの快活な個性が浮かび上がった。

個別に音質傾向を探ることで、厚み豊かな低域、明瞭な高域というシリーズの統一感が明確になった

この2つの入れ替えから実感するのは、剛性感のある厚み豊かな低域表現と明瞭な高域描写による、全体的にがっちりとした、600NEシリーズならではの音楽観である。両機ともに同傾向のサウンドを持ち味とするが、PMA-600NEの方が、その特徴をより強く持っているという印象を受けた。同時に、DCD-600NEは、やはり「AL32 Processing」の恩恵もあり、独特の連続性に富む滑らかな再生質感を楽しませてくれるということも認識できた。



総じて600NEシリーズは、これからのデノンサウンドを示したNEシリーズ上位モデルの魅力をしっかりと受け継ぐエントリーモデルである。エネルギッシュかつストレートなサウンドという特徴は上位機から通底しており、それを着実に実現しているのである。

この事実は、今回の取材とは別の機会に、デノンの新たなフラッグシップである「SX1 LIMITED」シリーズと600NEシリーズとを同社試聴室で聴き比べた際にも、強く実感したことである。

両シリーズの開発者でありデノンの音作りを統括するサウンドマネージャーの山内慎一氏によると「600NEシリーズの開発時期は、SX1 LIMITEDの開発時期ともクロスしており、それは、600NEシリーズのクオリティにも大きく影響しているはず」とのことだった。

つまり、この600NEシリーズは、同社のリファレンスとして開発された渾身のフラグシップと同時進行で音が吟味されており、エントリーという枠組みでありながら、最大限のパフォーマンスを追求し尽くされて生まれたモデルであると推察できる。これは、本シリーズがエントリーらしからぬパフォーマンスを備える理由の一つと言えるのではないだろうか。

この600NEシリーズが、従来の390及び755シリーズにも増して、フルサイズコンポの裾野を大きく広げる存在になることは間違いないだろう。その革新的なエントリーラインの登場を、心より喜びたい。

(生形 三郎)

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