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オンキヨーのTHX準拠AVアンプ「TX-NR696」レビュー。10万円切りでオーディオ性能を磨き上げた自信作

土方 久明

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2019年08月28日
いま、エントリー〜ミドルクラスのAVアンプが面白い。スペック的には、その多くが7ch分のパワーアンプを搭載し、オブジェクトベースのマルチchフォーマット「ドルビーアトモス」と「DTS:X」に対応。もちろんDSPを用いた自動音場補正機能を備え、ハイレゾやストリーミングサービスなどの音楽ソースにも当たり前のように対応し、より高機能に進化している。しかし面白いのは、競争の激しい価格帯だけあり、各社で独自の魅力を出していることだ。

その中で今回は、老舗オーディオ・ビジュアル機器メーカーのオンキヨーが4月に発売した「TX-NR696」をレビューしたい。本モデルはコストパフォーマンスの高さからスマッシュヒットとなった「TX-NR686」の後継機で、コンセプトはズバリ“音質に磨きをかける”ことにある。

「TX-NR696」(¥92,000/税抜)

しかし、同様のコンセプトはどんなAVアンプも少なからずうたっているもの。そこで、TX-NR696は、従来モデルに引き続きホームシアターサウンドの高品質認定基準である「THX Certified Select」(以下、THX認証)を取得することで、目に見える形で違いを出した。

THX認証を受けるには、米サンフランシスコにあるTHXラボに製品を送り、2,000項目(14,000箇所)ものテストを全てクリアする必要がある。TX-NR696の開発者から直接聞いたところによれば、テストで要求されるスペックは、録音環境の忠実な再現を目的としていることもあり、非常に厳格な内容となっている。例えば、各テストの数値測定ではレベル誤差が±0.5dB以内であることや、ノイズレベルに対する閾値の厳格性が求められる。

本体上部に記載されたTHXマークが、他の製品との違いをアピールする

さらにはTHX独自機能の作り込み、対応機器についてはドルビーやDTSの技術との組み合わせもテスト対象に含まれる。また、製品に搭載される音場補正技術とのマッチング評価までが行われるのも、THX独自の評価ポイントといえる。

また、テスト内容や要求されるスペック自体も順次アップデートされていくので、新モデルの開発時にはそれに対応する必要もある。今回、TX-NR696の開発陣が苦心したというのがクロストークと出力の2項目だった。クロストークに対する要求スペックは、従来モデルよりもさらに引き上げられたため、その達成には基板パターンや部品に加えて、配線まで吟味する必要があった。

出力については、20Hz/1kHz/20kHzのバースト波での出力パワーを測定する項目が今回設けられていたが、この中で20Hzと20kHzは前モデルではなかった要求スペックだった。特に20Hzのバースト波については、当初の試作機では波形が歪んでしまい、要求スペックを満たすことができなかったのだという。しかし、検証を重ね、コンデンサや電源トランスを改善することで低周波でも確実に出力できるアンプに仕上げることができた。

THX準拠の認証を得るために要求されるスペックをクリアするために、電気性能を徹底的に磨き上げた

こうしたTHX準拠に対する取り組みに加え、特に音声回路まわりはデジタル、アナログとも従来モデルから大きな進化を果たした。新規に基板を起こして電気回路の土台となるGND(グラウンド)をさらに安定化させる設計を施し、音楽信号の正確な出力と低ノイズ化をさらに押し進めてダイナミックな音を目指したこともそのひとつだ。特にHDMI音声において、回路と電気の流れを整理して、よりシンプルな回路の配置と広く太いGNDを確保することには苦心したとのこと。しかし、電気設計担当と何度も基板の修正を繰り返し、前モデルからの大幅な改善が実現した。

また、従来モデルではHDMI基板上にあったネットワークモジュールを別基板にセパレートし、さらにノイズの影響を受けやすいアナログオーディオ回路を電源部やHDMI回路から離して設置している。

こうした改善を積み重ねたことで、オンキヨーの同クラスAVアンプとして史上最高の低ノイズ性能を更新。同社の開発陣は「低周波まで確実に出力できるアンプと共に、土台がしっかしていることを証明できたと思います」と胸を張る。

ハイエンドでもエントリーでも、AVアンプを購入するユーザーは皆、「映像を迫力のある音で楽しみたい」と思って検討しているはず。税込10万円以内で購入できるクラスながらTHX Certified Selectに準拠するTX-NR696の音質最優先コンセプトは、ユーザーの心にストレートに訴求するだろう。

基本をしっかり抑えた上で新規格にも対応。ネットワーク周りの強化も好印象

TX-NR696の外観は、寸法も含めてAVアンプとしてスタンダードにまとめ上げられている。リアパネルを見ると、上段部がHDMI、中段部はスピーカー端子が理路整然と並んでいる。

その他にも入出力インターフェイスとして、光デジタル入力/同軸デジタル入力が各1系統、アナログ入力はライン4系統、MMフォノイコライザー経由のPHONO入力1系統、フロントパネルにステレオミニジャック1系統を搭載。出力はアナログのライン出力(ZONE 2/ZONE B)とサブウーファー用のプリアウト出力を2系統と万全の体制だ

実際にAVアンプの導入を考えた時にまず考慮すべきは「搭載アンプ数」「対応サラウンドフォーマット」「HDMI周辺の性能」の3点だと思う。ビジュアルの世界は、筆者が当初から専門分野としてきたデジタルファイル再生同様に進化が早い。だからこそ、最初にチェックしたいポイントがこの3つだ。ひとつずつ見ていこう。

基礎をしっかりと抑え、イマーシブ入門に便利な機能も搭載

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