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デザインだけでなく、パフォーマンスも向上

全世界26ペア限定、アヴァンギャルド創立26周年記念モデル「TRIO LUXURY EDITION 26」を聴く

公開日 2019/02/01 11:47 鈴木 裕
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まず基本的な仕様を紹介していこう。TRIO XDは見た通りの3ウェイ。ローレンジのホーンの直径は38インチ(95cm)だ。そのドライバーユニットは、XDで開発されたソフトメッシュ・ファイバーグリッド・ドーム(格子状の繊維を持つ新素材振動板)を採用している。ミッド用のホーンは23インチ径(57cm)、トゥイーター用ホーンは7インチ径(18cm)。ネットワーク回路を構成する部品は4つだけで、全てのコンデンサーや特許技術のCPCネットワークボードはXDになってリニューアルされた。

最高グレードのV2Aステンレス・スティールと、厳選したジャーマン・オーク材を組み合わせた高剛性フレーム構造を採用

本機の背面部。スピーカー端子はゴールドメッキが施されたWBT社製ピュアマテリアルタイプを採用

そして100Hz以下を受け持つBASSHORN XDは、内蔵パワーアンプを1,000Wに強化。10バンドEQ搭載のDSPにより、クロスオーバーやレベルの設定が細かく調整できるようになっている。

■フレーム部が美しく強固になり、パーツなど細かい変更も効果的

次に、TRIO LUXURY EDITION 26での特別仕様について。まず3つのホーンを支えるフレームの部材が、伝統技法仕上げのジャーマン・オークとハンドポリッシュ鏡面仕上げのステンレス・V2A・スティール(いわゆるサージカル・ステンレス。オプションで24Kゴールドメッキ仕上げにもできる)になっている。

いずれも一般的なオークや、一般的なステンレスに対して硬く、密度の高い素材で、素材の選択もブランドの拠点ドイツ原産にこだわった。脚も高精度スパイクに変更。また、バスホーンのドライバーユニット部はフレームに対して埋め込むという、より剛性の高いコンストラクションを実現している。

脚部も無垢材から削り出し、鏡面仕上げを施した、最高グレードのV2Aステンレス・スティールを採用している

こうした構造や部材の変更だけでなく、電気信号が通る部分のアップグレードも大きい。ハンドメイドによる重量級の銅箔オイルコンデンサーは、一般的なコンデンサーと比べてなんと60倍という重量で、一つ製作するのに2週間かかるという。これが独自のCPC(コンデンサー極性化回路)と組み合わされている。

内部の配線材はゴールド・コーティングの銀線になり、スピーカー端子は金メッキ・コネクターに変更されている。さらにスピーカーのジャンパー線はフレームの内部に配線され、振動の影響を受けにくくなっている。これらの細かなブラッシュアップが、本機のパフォーマンスが向上している所以である。

本機の音に触れる
■各帯域が魅力的な音色を持ち、分解能が高くまさに生々しい


試聴テストはエソテリックの試聴室で行った。クラプトンの『アンプラグド』を聴くと、リアルなサウンドステージに大きな音像という、アヴァンギャルドの基本的な鳴り方をきちんと継承していることがわかる。

今回の試聴では、SACD/CDプレーヤーにエソテリックの Grandioso K1、プリメインアンプにGrandioso F1を組み合わせた

しかし、記憶の中の従来のTRIOのシステムと比較しても、さらに各帯域が魅力的な音色を持ち、分解能が高く、音楽的に生々しく鳴っている。鮮度感とかリアリティが増しているのだ。精緻なのに、迸るという感覚がある。音量を絞っても音圧がしっかりと来るし、ミュージシャンたちのイメージや感情が濃密に表現されている。伸びやかなのに深情けということである。

ジャズのライヴを聴いてもクラシックを聴いても、この感覚は裏切らない。主観的に書くと何かの桃源郷に来たようで、その再生音の世界に没入して、ひたすら音楽を聴き続けたいと思った。

■「TRIO LUXURY EDITION 26」の真の魅力

スフェリカルホーンを中心に、さまざまなテクノロジーを追求した最高峰がTRIO XD+BASSHORN XDという組み合わせだが、さらにその細部を磨き上げ、アヴァンギャルド・アコーステックというブランドの研ぎ澄まされた音を体現していたのが、TRIO LUXURY EDITION 26のように感じられた。

それはまさに、このブランドの目指している「今日望みうる最高峰のスピーカーを作ること」というプロダクションの最先端そのものだった。それを手に入れるには、大きな桁数のバジェットとそれなりの広さのリスニングルームが必要だが、聴けば他では得られない桃源郷が出現する感覚を体験できるだろう。

(鈴木 裕)


本記事は季刊・analog vol.61号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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