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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域:第222回

イヤホン&ヘッドホン素材辞典[アコースティック編]金属・合成樹脂・新素材まるっと総まとめ!

公開日 2019/01/18 06:20 高橋 敦
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▼PET “現代を代表する万能樹脂”
種属:合成樹脂 別称略称等:ペット、ポリエチレンテレフタラート
使用箇所:振動板、そのほか全般
特性  樹脂内での相対評価
頑強性 柔|・■|・・|硬
重量  重|・■|・・|軽
加工性 難|・・|・■|良


強度や長期耐久性、加工性などにバランスよく優れる上に、ゴミ処理もリサイクルもしやすいと扱いやすい、現代に欠かせない合成樹脂。特に明記のない振動板はPET素材であることが多く、また「〇〇コーティング振動板」のコーティング材ではなく、振動板そのものの素材もPETであることが多い。

▼ポリウレタン “スポンジ素材の代表”
種属:合成樹脂 別称略称等:ウレタン
使用箇所:イヤーチップ
特性  樹脂内での相対評価
頑強性 柔|・■|・・|硬
重量  重|・・■・・|軽
加工性 難|・・|・■|良


様々な形質に加工しやすい合成樹脂。現在のイヤホンやヘッドホンにおいて、低反発フォームタイプのイヤーピース、ヘッドパッド内のスポンジなどには主に発泡ウレタンが使われている。加水分解などによって劣化しやすい素材であるため、これが使われているパーツは中長期的には消耗品と見るべき。

▼ポリカーボネート “メガネレンズ等でも活躍”
種属:合成樹脂 別称略称等:ポリカ
使用箇所:ハウジングなど
特性  樹脂内での相対評価
頑強性 柔|・・■・・|硬
重量  重|・・|■・|軽
加工性 難|・・|■・|良


アクリルと並んで「透明にできるプラスチック」の代表で、レンズなどの光学部品にも多く用いられる。イヤホン&ヘッドホン分野でも、ハウジングの全体あるいは一部が透明なモデルのその透明な部分での使用例はもちろんあるが、透明ではなく普通の色で普通にハウジングに使われていることもある。

新素材および特殊素材

近年になって開発され利用されるようになったものを中心に、ここまでに紹介した「金属」「合成樹脂」の枠組みに入らない、入れにくい特殊な素材を最後にまとめて紹介する。それぞれ優れた特性を備え、そして目新しい素材でもあるので、その採用自体がその製品の大きなポイントになっている場合も多い。

▼グラフェン “振動板コーティングの新潮流”
種属:新素材 別称略称等:ーー
使用箇所:振動板コーティング
特性  新素材内での相対評価
頑強性 柔|・・|■・|硬
重量  重|・・|■・|軽
加工性 難|■・|・・|良


炭素原子をその原子一個分の厚みで六角形の格子状に結合させたシート素材で、電気的な特性にも物理的な強靭さにも優れる。工業分野ではざっくりと「グラフェンを用いた素材」のような意味合いで使われることも多い印象。イヤホンにおいては「グラフェンコーティング」振動板の採用例が急増している。

▼セラミックス “スーパー陶磁”
種属:新素材 別称略称等:セラミック
使用箇所:ハウジングなど
特性  新素材内での相対評価
頑強性 柔|・・■・・|硬
重量  重|・■|・・|軽
加工性 難|・■|・・|良


「セラミックス」は無機物を焼き固めた素材全般の名称であり、特定のひとつの素材を指すものではないが、便宜上「セラミックス全般」と扱う。可聴帯域内での共振を起こしにくいことからイヤホンのハウジング素材としての採用例がいくつかある。また電気的特性から圧電型ドライバーの部品にも使われる。

▼ダイヤモンドライクカーボン “ガチでダイヤ並みの硬度”
種属:新素材 別称略称等:DLC、硬質炭素膜
使用箇所:振動板コーティング
特性  新素材内での相対評価
頑強性 柔|・・|・■|硬
重量  重|・・|■・|軽
加工性 難|■・|・・|良


炭化水素あるいは炭素の同素体で構成される非晶質の硬質膜。バリエーションによって異なるが、最も硬いものではまさにダイヤモンドと同等程度の硬度となり、そもそもが膜状のものであることも含めてか、振動板コーティング素材として文句なしの適性を備える。採用例は少しずつ増加傾向。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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