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HSE技術を投入した最新モデル

アクセサリー銘機賞で特別大賞受賞。ティグロン「HSEシリーズ」ケーブルの実力を6人の評論家が分析

公開日 2018/12/17 14:30 林 正儀 ほか6名
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井上千岳
従来モデルとの差は歴然
音調が劇的に変わる処理



ティグロンは独自のマグネシウムシールド技術で登場し、最近では珍しいディップフォーミング法による導体の採用で知られてきた。そして今回はHSEという新しい技術を導入してまた話題をさらっている。

HSE(ハイパー・サチュレーテンッド・エナジャイザー)は、バーンインつまりエージング技術の1種と考えていい。アジアの技術者集団によって共同開発されたものだというが、専用にプログラミングされた信号を導体に流すことで、エージング時間を短縮されることが可能だとされている。

この種のプログラム信号はこれまでにも幾つか存在した。CD化されているものもある。ただし時間がかかり、リピートで一晩中かけておかなければならない。

HSEはこれとは違い、数十分で完了する。しかしそれだけなら単なるエージング・グッズにしかならないが、画期的に違うのはその効果の出方である。

エージングは長時間の使用による経年変化の一種だから、何年も使っていれば自然にエージングは行われる。しかしHSEの効果はそれとは根本的に異なるようだ。

音調が劇的に変わる。レンジが上下に伸び、音の凹凸が深まり、エネルギーが豊かになる。単なる経年変化では得られない効果で、エージングというより物性処理のひとつと考えた方がいいようだ。

ティグロンではこの処理を施した製品をHSEシリーズとして展開してゆくという。従来モデルと比べるとその差は歴然としていて、期待の高まる技術である。


炭山アキラ
まるでグレードが変わってしまう
音場が晴れ渡り、極めて鮮明に定位



ティグロン最大の基幹技術というと、純マグネシウムによるシールドと制振を挙げることができるだろう。マグネシウムは金属の中で際立って鳴きにくい、即ち振動を抑制する特性を持つ素材で、同時に導体を流れる信号を外部からの高周波や振動などからガードするシールド材としても、高い効果を発揮するものである。

同社のみが採用している素材には、DF-OFCという導体がある。元はといえば米GEが開発した「ディップ・フォーミング」と呼ばれる特殊な製法の無酸素銅なのだが、今は日本でしか製作することができない、非常に希少な導体であるという。

それらに加え、このたび同社が実用化したHSEという技術がある。導体へ強い直流電流を入力し、それにジャンルや用途に応じた振幅変調をかけることで、ケーブルの導体を活性化するという、平たくいえば「短時間で理想的なエージングを実現する技術」である。

自宅でHSE処理前と処理済みの同社電源ケーブルを聴き比べたが、まったく同じ銘柄だというのに、もうまるでグレード違いの音になってしまって、たまげた。処理済みの方は、同社持ち前の力強さ、音の濃厚さに加えて、音場がパッと晴れ渡り、音像も前後感まで含めて極めて鮮明に定位する。エージングで音が向上するのはよく体験することだが、ここまで大きな改善幅を耳にすることはなかった。もしかなうなら、持ち込み処理サービスなども始めてほしいものだ。


鈴木 裕
透明感、反応、分解能が高い
ハイエンドのクオリティに到達



「HSEシリーズ」として「特別大賞」を受賞しているが、これはケーブルの導体を処理する技術である。ハイパー・サチュレイティッド・エナジャイザーのイニシャルを取っての命名だ。欧米とアジアのケーブル技術者集団とティグロンが共同開発した。具体的にはセットしたケーブルの導体が、電流飽和するような直流電流を流すという。用途毎に最適化した特殊な振幅変調を施してケーブル導体を活性化。また、適度に導体が発熱するため、導体周囲の絶縁物やシールド層の機械的ストレスも解消。一種の慣らしのようなものと考えるとわかりやすい。

実際にティグロンのRCAケーブルを使って、HSE処理の前後の音を検証した。まず言えるのはたとえば高域の強調感や、抜けの悪さといったクセがほぼなくなり、ナチュラルな質感になること。また、透明感、反応の良さ、分解能といった項目で、一般的には上位のケーブルでなければ到達できないクオリティを獲得できてしまう。さらに全体的な印象として、音が自由に伸び伸びと振る舞っているような感覚が印象的だった。

処理時間の長さで音質をコントロールできるのも興味深い。この効果は5年経っても継続しているという。この処理を施したケーブルのシリーズにもHSEとつけられている。今後、ティグロン以外のブランドのケーブルについても処理サービスを始めていく予定という。注目のケーブル処理技術と感じた。

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