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DSD1024へのアップサンプリング機能を搭載

最先端仕様が凝縮された旗艦D/Aコンバーター。iFi audio「Pro iDSD」を徹底検証

公開日 2018/12/12 17:29 石原 俊・逆木 一
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そして、もうひとつiFi audioらしい最先端の機能がある。入力信号を内部のFPGAを用いて最大DSD45.2MHz(DSD1024、つまりCDの1024倍)にアップサンプリングしたうえでDA変換することができるのだ。この機能を活用すると、例えDSD2.8MHz音源やPCM96kHz音源でも、音源に込められた気配感などさまざまな面で表現力に差が出ることを確認できた。

デジタル系をまとめたボード。DSD1024リマスタリングを司るFPGAも、ここに搭載。iFiオーディオの最先端テクノロジーが満載されている

Pro iDSDは、まさにこれまでのiFiの集大成とも言える製品で、その機能性も大きな魅力だが、そのサウンドはまさに驚異的。サウンドも音も万能のハイレゾマシンである。

iFi audioらしさ溢れる機能として注目のDSD1024リマスタリング機能。48kHz系の音源の場合は、内部のFPGAを用いて最大で49MHzにアップコンバートされた上で再生される

逆木一の着眼点で聴く
同社として初となるネットワーク機としての実力

発売が延期されていたiFi audioのフラッグシップDAC、Pro iDSDがいよいよ発売になる。長い時間をかけて開発が続けられたPro iDSDは、PCM768k㎐/32bit、DSD22.6までおよぶUSB入力に加え、DSD45.2MHz(DSD1024)という未曾有の次元に達するアップサンプリング機能を搭載。その他にもiFi audioが積み上げてきたさまざまな技術が総動員され、文字通り最先端のDACとして完成した。

Pro iDSDの豊富な機能を裏づけるのが、入出力端子の多様さ。デジタル入力はUSB 3.0(Bタイプ)やRCA同軸/丸型光TOSコンボ端子、XLR端子によるAES/EBU、クロック入力端子にも使用できるBNC同軸などを装備。外づけHDDを接続するAタイプのUSB、そしてネットワーク再生を可能とするETHERNETや、microSDスロットなども搭載する。RCA/XLRアナログ出力には出力レベルの可変/固定 設定を行えるので、DACプリとしても使用することが可能だ

さらに、Pro iDSDはiFi audio製品としては初めて有線/無線のネットワーク入力を搭載。DLNA、AirPlay、各種音楽ストリーミングサービスに対応することがアピールされている。

iFiオーディオ初となるネットワーク再生への対応、あらゆるデジタルを最高品質で再生する。さまざまな機能を搭載するPro iDSDだが、その最大の魅力は他の追随を許さない技術によるサウンドを、あらゆるデジタル機器から再生可能としている点にある。現在、デジタル音源はさまざまな方法でリスナーに届けられるが、Pro iDSDはどんなソースでも対応できる幅広さを持っているのだ。さらに注目は、ファームウェアによる将来的な拡張性。昨今大きな話題を集めているMQAへの対応も 着実に進められているなど、時代と共に成長するコンポーネントとなっている点も大きな魅力となっている

筆者が知る限り、元々iFi audioはあまりネットワークに興味を示しておらず、USBDACを作ってもネットワークプレーヤーは作ってこなかったし、USB関連アクセサリーを作ってもネットワーク関連アクセサリーは作ってこなかった。メーカーとしてはあくまでUSB関連に集中するスタンスだったように思う。一方で、最近のiFi audioは製品にBluetooth入力を積極的に搭載していることから分かるように、音楽再生の利便性を高めようとしてきた。利便性を追求すればネットワークに行き着くのは必然であり、フラッグシップであるPro iDSDにネットワーク機能が搭載されたことは、iFi audioの本気度を象徴しているともいえる。この記事で筆者は、このPro iDSDのネットワーク機能をさまざまに検証し、その意義を明らかにしていきたい。

どのような再生方法であっても最高の音で再生してみせる

まず、本機のネットワーク再生は「MUZOPlayer」というアプリから行う。DLNAの仕組みを使ったサーバーからの再生、TIDALなどの音楽ストリーミングサービス、あるいは操作する端末に保存された音源を、Pro iDSDから再生できる。MUZOPlayerそのものは少々操作性にクセがあるものの、サーバーからの再生、TIDALからの再生ともにレスポンスは良好だ。

しかし、Pro iDSDをネットワークプレーヤーとして使うと、再生できる音源はPCM192kHz/24bitまでで、DSDは再生できない。USB入力とは大きな差があり、この時点でネットワーク再生では本機を真に活かせるとは言い難い。やはりメインはUSB入力で、本機のネットワーク機能はあくまでも「カジュアルに音楽を聴く」用途で使うべきだろう。

一方で、音質面の抜かりはない。Pro iDSDをネットワークプレーヤーとして使っても、USBDACとして使った時と比べてそれほど遜色がないことには注目すべきだ。これはつまり、本機の再生エンジンの優秀さを示している。UBS入力時と同様に、音源の情報量をしっかりと引き出し、音楽の表情をありのままに描くという本機の美点は健在。ソースがローカルのサーバーかストリーミングサービスかを問わず、輪郭描写の切れ味や解像感は高いレベルで保たれる。「どのような再生方法であっても、最高の音で再生してみせる」というメーカーの矜持が伝わってくるようだ。

また、本機のアップサンプリング機能はネットワーク入力にも適用可能なので、例えばTIDALのあらゆる音源をDSD1024にアップサンプリングして聴くこともできる。これは間違いなく、過去に類例を見ないストリーミング再生の高度な楽しみ方だ。

コントロールアプリ「MUZO Player」は、ネットワーク再生を楽しむに あたって十分な操作性を獲得。ネットワーク再生の場合は現時点でDSDに対応していないが、DSD1024リマスタリング機能の活用が可能。あらゆる入力でもベストサウンドを追求する姿勢はここにも見え隠れする。写真はTIDALを再生している時の「MuzoPlayer」の画面

Pro iDSDのネットワーク機能は、再生に対応する音源のスペックやアプリの完成度を含め、はっきり言って一線級のネットワークプレーヤーと比べられるようなものではない。とはいえ、利便性の向上という意味ではしっかりと役目を果たしており、本機のDACとしての性能や、強力無比なアップサンプリング機能をさまざまなネットワーク再生で活用できることも大きな魅力である。

今回Pro iDSDに搭載されたネットワーク機能は、初号機として見れば及第点でも、まだまだ発展の余地はある。高い技術力でファイル再生の地平を切り開いてきたiFi audioなだけに、継続的な機能改善/拡張アップデートも当然予定されており、おのずとその期待も膨らむ。

iFi audioのネットワークへの取り組みは始まったばかりだ。Pro iDSDがどのような進化を遂げるのか、今後も注目していきたい。


Specifications
●最大対応サンプリングレート:PCM 768kHz、DSD 49.152MHz(DSD 1024)、DXDおよびdouble-speed DXD(2×DXD)●入力端子:USB3.0(Bタイプ)×1、AES/EBU(XLR)×1、S/PDIF(RCA同軸/丸型光TOSコンボ)×1、BNC(S/PDIF入力またはSync入力)×1●出力端子: XLR×1(4.6V=+15dBu、HiFiポジション/11.2V=+22dBu、Proポジション)、RCA×1(2.3V=HiFiポジション/5.6V=Proポジション)、φ6.3mmステレオ標準ヘッドフォン×1(5.6Vまたは最大11.2V)●ヘッドフォン出力:1,500mW RMS×2(64Ω)、最大4,000mW×2(16Ω)●ボリュームコントロール:バランス型(6-gang)アルプス製ポテンショメーター ※RCA、XLR出力は固定、可変に設定可能●その他の機能: DSDとPCM(384kHzまで)用にデジタルフィルター、アナログフィルターが選択可能 ※PCMフィルター:Bit-Perfect(44.1〜192kHz、352.8〜768kHzは常に使用)/Bit-Perfect+:44.1〜96kHz/Gibbs Transient Optimised(44.1〜384kHz)/Apodising(44.1〜384kHz)/Transient Aligned(44.1〜384kHz) ※DSDフィルター:固定三次アナログフィルター@80kHz(DSDの-6dBゲイン用に補正)●ゲイン(ヘッドフォン・セクション):0/9/18dBから選択●ダイナミック・レンジ:119dBA(ソリッドステート、PCM、-60dB FS)●入力電圧(Pro iDSD本体):DC9V/6.7A〜18V/3.35A●入力電圧(付属電源アダプタiPower+):AC85〜265V、50/60Hz●消費電力:<22W(アイドリング時)、50W(最大)●サイズ:220W×63.3H×213Dmm●質量: 1.98kg●取り扱い:ENZO j-Fi LLC.、(有)トップウイング

本記事は「Net Audio」32号所収記事を転載したものです。雑誌の購入はこちらから。

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