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スコットランド発の新鋭

新進スピーカーブランド「FYNE AUDIO」が日本初上陸 − その哲学とサウンドを集中レポート

2018/10/24 山之内 正
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FYNEAUDIOの独自技術
主に3つの技術を核にして開発いずれもかつてない斬新なもの

基幹技術はBASSTRAX、ISOFLARE、FYNEFLUTEの3要素で構成される。

最初のBassTrax(ベーストラックス)はダウンファイアリング方式の開口部に配置した独自形状のディフューザーに採用された技術で、造船工学に起源を持つトラクトリクスカーブに加工された円錐状のパーツを指す。音波の波面がつねに90度の角度で屈折し、互いに交差したり反射することなくスムーズな流れを導くことが特徴だ。

FYNE AUDIOのスピーカーを象徴するベース・トラックス・トラクトリックス・プロファイル・ディフューザーの概念図

ミルズ氏によるとトラクトリクスは中高域を受け持つホーンユニットに採用した例があるが、低音域のディフューザーへの導入は今回が初めてだという。フロア型、ブックシェルフ型ともに同技術を積む製品はベースとキャビネット本体の間に全方向の開口部を設け、そこから低音エネルギーを均一に放射する。音波はベースプレートに沿って放射されるため、壁面や床面の影響を受けない。

独自技術BASSTRAX TRACTRIX (ベース・トラックス・トラクトリックス)プロファイル・ディフューザーをF500シリーズ以上のモデルに採用


F500の内部構造。ベース・トラックス・トラクトリックス・プロファイル・ディフューザーを装備したバスレフポートの仕組みが理解できるだろう


独自技術BASSTRAX TRACTRIX (ベース・トラックス・トラクトリックス)プロファイル・ディフューザーは、放射される音波の波面の各交点で常に90度の角度を維持させ、余計な交差・反射をなくしスムーズな音波の流れを生む導波システム。エンクロージャー底部に下降ポートを配置し、さらにポート開口部には独自のトラクトリックス・ディフューザーを設けるという巧みなローディング機構により、ポートのチューニング周波数を低下させ、一般的なバスレフ方式では避けられないウーファーの空振り現象によるボトミングを抑え、低域エネルギーを360度の波面に変換して均一に分散させる効果を併せ持つ。壁面からの部分的な強い低域反射を減少させ、スピーカーの設置条件を著しく緩和してくれる(特許出願中)


IsoFlare(アイソ・フレア)は同軸構造の点音源ドライバーシステムの名称で、高域を受け持つコンプレッションドライバーの開口部とミッド/ウーファードライバーのコーンの組み合わせを独自形状で緻密に設計することにより、エネルギーが特定の方向に集中せず、広い指向性を確保していることに特徴がある。点音源ならではの精度の高い音像定位と広範囲のリスニングエリアを両立させる技術として注目すべきだろう。なお、磁気回路は各ドライバー独立して配置される。

3つ目のFyneFlute(ファインフルート)はコーン周囲のエッジ部分に独自形状の溝(フルート)を成形する技術で、エッジの固有共振を抑えて純度の高い振動を引き出す効果を発揮する。コーン紙の振動によって発生するエッジの固有共振が再びコーンに伝わることで有害な歪が発生するため、通常はエッジの素材や強度を工夫して歪みの低減を図る。FyneFluteではコンピューター解析によって溝の形状と位置を追い込むことで、歪みの発生を極限まで抑えることができるという。




F500シリーズには、IsoFlare(アイソフレアー)ドライバーを搭載。これはBass/MidドライバーとHFドライバーの音軸の中心を共有するポイントソースシステムである。IsoFlareは、HFコンプレッションドライバー開口部のひだ構造を持つ特異な形状とBass/Midドライバーのコーン形状のそれぞれに計算された曲線の組み合わせによって、巧みに音のエネルギーを等方的に拡散放射することで指向特性を大きく改善している




F500シリーズの各ユニットにはFYNEFLUTE(ファインフルート) SURROUND TECHNOLOGYを採用。一般的なスピーカードライバーユニットの単純な湾曲形状のエッジ構造では、エッジの材質に特有の固有周波数共振が存在し、振動板の動きを受けたエッジはそれを励起させ、反作用としてそれが振動板に伝わるため、音のカラーレーションが引き起こされる。本機には、その問題を解決するためサラウンド(エッジ)にコンピューター解析されたフルート(溝)を刻み込んだ特殊な曲面形状を持たせている。これによりコーンから伝わるエネルギーを効果的に終局させ、コーンへのカラーレーションを徹底排除することに成功している。


F500シリーズの背面部。左からF500、F501、F502。いずれも底部にベース・トラックス・トラクトリックス・プロファイル・ディフューザーを装備。端子は高品位なもので、バイワイヤー対応となっている


F501のベース部。リジットMDFのボトムにアルミスパイクを採用。バランス調整が容易にできるようになっている

F500シリーズの外観はブラックオーク、ダークオークの2つの仕様が用意されている



ラインアップと概要
F500シリーズを核として旗艦F1まで4シリーズを展開

上述したBASSTRAX、ISOFLARE、FYNEFLUTEという3つの基幹技術は、F700とF500、そして最上位F1シリーズに導入されている。さらにF1では、FyneFluteをさらに発展させたダブルエッジ構造を採用。エントリーモデルのF300については、FyneFluteのみを導入している。

FYNE AUDIOのフラグシップモデル「F1.10」¥2,980,000/ペア・税抜。*写真はバーウォールナットピアノグロス仕上げ、ピアノグロス、ホワイトグロス仕様もあり

フラッグシップのF1シリーズは、ドライバー口径が異なる2モデルそれぞれにウォールナットとピアノフィニッシュ2種類の仕上げを用意し、計4モデルを揃える。10インチドライバーを積むF1・10、12インチのF1・12どちらも優美な曲線形状のキャビネットを採用し、横幅はユニットの幅ギリギリまで抑えているためか、絶対的なサイズは大きくても圧迫感はない。

フラッグシップF1シリーズの大型な3インチ・アルミニウム/マグネシウム合金HFダイヤフラムを内蔵したポイントソースドライバー。ファインフルート・ロールラバーサラウンド技術をさらに高めたツインロールファブリックと称する二重構造のサラウンドを搭載している

準フラグシップのF700シリーズは同軸ユニットにウーファーを加えた3ウェイ構成となり、8インチのF702と10インチのF703の2機種が今秋以降に導入される予定だ。取材時には未着だったので実機は確認していないが、キャビネットはラウンド形状を採用し、F1シリーズの強烈な個性に比べるとオーソドックスな外見を身にまとう。日本ではこちらを歓迎する人も多いかもしれない。

F1シリーズの底部のベース・トラックス・トラクトリックス・プロファイル・ディフューザーを装備したバスレフポート。脚部は高剛性アルミボトムと大型のスパイクを採用


F1のフロント部にはHFエネルギー(高域全体)とプレゼンス(2.5-5kHz帯域)の調整ツマミを装備

F1のスピーカー端子部は高品位なWBT Nextgenを採用している


フラッグシップのF1シリーズに採用された唯一の同軸ユニットは、独自のツインエッジ構造となっているためF500シリーズで採用されている「ファインフルートデザイン」は必要ない。またユニットが付き出す形状が印象的だが、これはバッフル面を広くしないための工夫とのこと

F1シリーズでは、高剛性アルミをトラクトリックス・ディフューザー、ボトムベース部、スパイク部に採用。より精度の高いポート制御を実現。また、共振を徹底的に抑え込み、設置も容易にできる構造となっている


F1.10のピアノグロス仕様モデル。ホワイトと共にトッププレートが装着されていない

F1シリーズの端子はWBT製でバイワイヤー仕様となっている

F500には3つの技術を投入圧巻のコストパフォーマンスを誇る

F500シリーズはすでに紹介した通り3つの基幹技術を全て採用したミドルレンジの製品で、ブックシェルフ型のF500、フロア型のF501とF502に加えてセンタースピーカーも用意される。外見はF700以上に保守的な印象を受けるが、ドライバー外周ギリギリまでキャビネット幅を狭めるなど、基本設計はフラグシップの流れを汲んでおり、音質面での妥協は感じられない。

特筆すべきは価格設定。採用された技術と外見から想像するよりもかなり低めに設定されており、最初はペアではなく1本当たりの価格と勘違いしてしまった。購入のハードルが低いという点ではエントリークラスのF300の方が目を引くが、そちらは同軸ドライバーではなくBassTraxも採用していない。FyneAudioのアイデンティティを強く発揮するのはF500を含む上位3シリーズと考えるべきだろう。

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