fidataやNucleusとも比較検証

より良いオーディオには “PC無し” が良い? それともPCを使うべき? 2つの方法を徹底的に比べた

逆木一

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2018年10月06日
逆木一氏はある時期まで、オーディオシステムのボトルネックとなり得るPCを使わないネットワークオーディオを実践してきた。しかし2年ほど前から、ファイル再生の可能性を広く追求すべくオーディオ用PCも導入。Roonをはじめ様々な検証を、このオーディオPCをリファレンスにしてレポートしてきた。

そして、ここにきてLAN DACという新しいトピックが登場。逆木氏が先日詳細にレポートしたが(レビュー『USBやUPnPより圧倒的に音が良い「LAN DAC」とは何か? スフォルツァートの最新アップデートで検証』)、LAN DACもやはり現時点でPCが必須の方式であり、その再生品質は逆木氏にオーディオPCのさらなるアップグレードを決意させた。

これまで音質面でボトルネックとされてきたPCが、いまネットワークオーディオの新しい可能性を切り拓くため、改めて重要な存在になりつつある。今回の記事では逆木氏が、オーディオ用PCと、オーディオ用単体サーバーを比較試聴しつつ、それぞれのメリットや可能性を詳細に探った。



今あえて、ネットワークオーディオにPCを導入する理由

おそらく多くの人にとって、ファイル再生はとりあえず手元にあるPC(パソコン)をそのまま使うことから始まるものと思う。かくいう筆者自身もそうだった。


しかし、そもそもオーディオ機器として作られていないPCはそれ自体が厄介なノイズ源であり、オーディオシステムにとって大きなボトルネックとなり得る。そのため、ファイル再生のクオリティを追求していけば、必ずどこかで「PCをどうするか」という問題に対峙する必要が出てくる。デスクトップ環境で完結するシステムでも、ヘッドホンを中心とするシステムでも、このことに変わりはない。

ファイル再生でPCが担うのは主に「サーバー」と「プレーヤー」の機能、つまり「DACより前」の部分である。それをどうするかで大きく2つの選択肢が考えられる。

1つめは、ファイル再生における各種機能を担う専用のオーディオ機器を導入し、ボトルネックとなるPCをシステムから排除すること。これはネットワークオーディオの領域で以前から行われてきた。

2つめは、PCのボトルネックとなる要素を払拭すべく、様々な対策を施したオーディオ用のPCを導入すること。あくまでもPCを再生機器として使って高音質を目指すなら、おのずとこの方向性になる。

筆者は長らく、PCを使わないネットワークオーディオを実践してきた。すなわち、「単体サーバー」と「単体ネットワークプレーヤー」から成るシステムである。PCのような自由度こそないが、音質的にも機能的にもユーザビリティ的にも、不満はほとんど感じてこなかった。

一方、PCでしか使えない様々なソフトを含めてファイル再生の可能性を広く追求すべく、2年ほど前にオリオスペックのオーディオ用PC「canarino Fils」を導入した。前々からオーディオ用PCが必要だと思ってはいたものの、実際に導入を決心させたのはRoonの登場だった。動作に高いスペックを必要とするRoonをオーディオシステムに組み込もうと思った時、もはや生半可な取り組みでは駄目だと考えた。

こうして現在、筆者のシステムは専用機「fidata HFAS1-XS20」とオーディオ用PC「canarino Fils」の2台体制で、SFORZATOのネットワークプレーヤー「DSP-Dorado」と組み合わせてファイル再生を行っている。

オーディオ用に仕様を追い込んだPC「canarino Fils」

さて、筆者はオーディオ用PCに以下の点を求めている。

・ファンレス
・十分なマシンスペック
・ストレージはSSD
・アナログリニア電源

個人的に特に重要なのは、ファンレスであること。音楽再生中でもお構いなしにファンが唸るようでは、音楽を聴くにも音質を評価するにも著しい支障をきたす。

要は「可能な限りノイズを出さず」「Roonのように重いソフトでも快適に使える」PCが理想である。あとは接続する機器の実力を引き出すために、USBやLANポートにも何らかの対策を行いたい。またオーディオ機器がそうであるように、ケースは剛性の高いものを選びたい。

これらを踏まえて、筆者が使用している「canarino Fils」を紹介する。

PCケースは当初、STREACOMの「FC5 Alpha」を使っていたが、複数の拡張カードを使うために最近「FC9 Alpha」に換えた。当然ながらどちらもファンレスで、質実剛健にしてオーディオ機器的な雰囲気もある。筆者は音源の管理やCDのリッピングを別のPCで行っているので、オーディオ用PCにディスクドライブは不要である。

canarino Filsを導入した際に用いていたケース「STREACOM FC5 Alpha」


このケースを「STREACOM FC9 Alpha」へと最近変更した

OSはWindows 10 Home、CPUはCore i7-6700T、メモリはDDR4 16GB。Roonが快適に動作するスペックである。ストレージはシステム用に250GB、音源保存用に1TBのSSDを使用。マザーボードにも可能な範囲でノイズ対策を行っている。

canarino Filsの背面。オーディオ用のUSBカードとLANカードを増設している

USB-DACとの接続やネットワーク接続時に機器の実力を引き出すべく、拡張カードスロットに「JCAT USBカードFEMTO」と「JCAT NETカードFEMTO」を搭載する。

canarino Fils自体の電源には、EL SOUNDのアナログ電源12V5Aを使用している。また、増設したUSBカードとLANカードは外部電源を利用できるので、USBカードにはiFi-AudioのiPowerを、LANカードにはELSOUNDのアナログ電源5V4Aを使用する。

canarino Fils自体の電源には、EL SOUNDのアナログ電源12V5Aを使用


LANカードにはELSOUNDのアナログ電源5V4Aを使用

以上が筆者のオーディオ用PCの概要である。PC関連だけでも箱が3つ、電源が3つという構成であり、我ながらシステムが肥大化してしまったと思わざるを得ない。

しかし、胸を張ってPCをオーディオ機器と並べて使うためには、ここまでする必要は間違いなくあった。PCとオーディオ機器の間に横たわる“巨大な裂け目”を認識すればこそ、ファンが盛大に唸るようなPCを使って再生ソフトやUSB-DACの音質評価を行うことは、筆者には憚られてならなかった。

「汎用性」こそPCをオーディオ再生に用いる最大のメリット

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