最高の音質をリーズナブルに

マランツ「SA-12/PM-12」を聴く − 現代の銘機“10シリーズ”を継承する強力なスタンダード機が誕生

小原由夫

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2018年09月27日

例えば、PM‐10/SA‐10のトップボードは、5mm厚の分厚いアルミ製だが(特にPM‐10はスリット加工にも高級感が表れている)、12シリーズのそれは1.2mm厚のスチール製だ。

フロントサイドパネルは最厚部が26mmのアルミ無垢材を採用。シャーシはSA-10が銅メッキ鋼板に対し、SA-12はスチール鋼板となっている

脚部もアルミ削り出しの10シリーズに対し、12シリーズはアルミダイキャスト製。一方、背面を見ると違いは一目瞭然で、10シリーズは銅メッキのパネルが眩しい。12シリーズはコストダウンのために非採用となった。

PM‐10は「PM‐12」よりも45mm全高が高い。威風堂々としたPM‐10に対し、「PM‐12」はいかにも弟分という印象だが、横に並べて初めて認識する差異であって、「PM‐12」は単独で見ても十分に精悍な佇まいである。

余談だが、「PM‐12」はPM‐10と同様、ユーザー登録時に保証期間を3年に延長したプレミアム保証が適用される。14S1シリーズにはこの設定がなかった。

10シリーズとの比較試聴
■しなやかな質感と反応は10シリーズと極めて近似

では試聴に移ろう。まずは参考として10シリーズのペアを聴く。実に剛性感があり、しかも安定した末広がりのエネルギーバランスに舌を巻く。それでいてテクスチャーはとてもしなやかで、全帯域に渡って肌理が均一に整っている。

井筒香奈江『レイドバック2018』の「リトル・ウィング」では、ヴィンテージのフェンダー・ジャズベース特有の太いトーンが濃密に再現された。井筒の声の実体感も克明だ。『ブルックナー/交響曲第3番』(アンドリアス・ネルソンス指揮、ライプツィヒ・ケヴァントハウス管弦楽団)の第3楽章でも、打楽器群の安定した響きに支えられ、オーケストラが重厚かつスケール感豊かに描かれた。

試聴は(株)ディーアンドエムホールディングスの試聴室で実施。開発を担当した同社のサウンドマネージャー、尾形好宣氏とともに今回の12シリーズと10シリーズの比較試聴を行った。スピーカーはB&W「800D」を使用(撮影:君嶋寛 慶)

ではいよいよ「SA‐12」「PM‐12」の試聴。テクスチャーとしては10シリーズのペアときわめて近似。さすがに圧倒的な物量で支えられた重心の低さと安定感で同ペアが勝るが、クイックな反応、トランジェントのよさでは、12シリーズのペアも好印象だ。

ブルックナーの3番でそれを感じたのは、グランカッサやティンパニーに導かれて弦や管のアンサンブルがクレッシェンドしていく様が実にリズミカルだったから。これにはPM‐12の高ダンピングファクターが効いていそうだ。

音場の見晴らしのよさ、ステレオイメージの透明感でも、12シリーズは10シリーズに引けをとらない。井筒の曲の冒頭のベースソロは、くっきりとしていながらスタジオの広さとリヴァーブの質の良さを抱かせる。井筒の発声の細かなニュアンス、伴奏との距離感もリアル。このあたりは「PM‐12」の新しいボリュームIC、「SA‐12」の高精度な超低位相ノイズクリスタルの恩恵と思われる。

PM-12とPM-10の比較


SA-12とSA-10の比較

SACDも聴いてみた。『アコースティック・ウェザーリポート』の「ハヴォナ」では、冒頭のベースのボウイングの弓の動きが見えるかのよう。ソリッドなハイハットシンバルのトーン、艶やかなピアノの響きなど、アコースティック楽器ならではの滑らかで瑞々しい質感再現が素晴らしい。

尾形氏から12シリーズの技術的解説を受ける筆者

10シリーズの半分の価格でここまでのパフォーマンスを達成した「SA‐12」「PM‐12」。兄貴分たちの存在が決して“目の上のタンコブ”にならず(むしろ10シリーズのユーザーが地団駄を踏むかもしれない)、しっかりとした自己主張を有した破格のコンポーネントであることが実感できた。

(小原由夫)


<試聴ディスク>

【SACD】『アコースティック・ウェザーリポート』(SICJ-10002)

【CD】『ブルックナー/交響曲第3番』アンドリアス・ネルソンス指揮、ライプツィヒ・ケヴァントハウス管弦楽団(UCCG-1766)

【CD】『レイドバック2018』井筒香奈江(LB-050)



※この記事は「オーディオアクセサリー」170号からの転載です。本誌の詳細はこちら

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