VAパネルで広視野角を実現

<IFA>ソニーの4K液晶テレビ「ZF9」レビュー。“液晶復権”を予感させる高コントラストで奥行き深い映像

山之内 正
2018年08月31日
BRAVIAの“MASTERシリーズ”は最新の映像エンジン「X1 Ultimate」を積む4K液晶テレビ『ZF9』と、OLEDテレビ『AF9』で構成されるソニーの新しいフラグシップである。X1 Ultimateは前世代のX1 Extremeに比べて処理能力が2倍に向上しており、従来はリアルタイム処理が難しかった画質改善技術まで搭載が可能になったという。その成果をまずは液晶BRAVIAの頂点に位置するZF9の画質で検証することにしよう。

IFA会場で展示されている「ZF9」の75インチモデル

IFAの同社ブースでは従来機種との画質比較など、一歩踏み込んだデモンストレーションを行い、X1 Ultimateがもたらす画質向上の具体例を確認することができた。

画面全体のコントラスト感はある程度離れた位置でもすぐに気付くほど従来機との差が大きく、2H程度まで近付くとZF9はさらに精細感が向上。そして斜め方向から見ると決定的と言うべきコントラストの差が明らかになる。特に視野角はこれまで解決が困難な液晶テレビ固有の課題とされていたが、ZF9の視野角は少なくとも水平方向については実用上問題ないレベルの性能を確保している。

VAパネルで広視野角を実現する「X-Wide Angle」

視野角を改善するためにZF9は「X-Wide Angle」技術を新たに投入した。特にVA型パネルは、正面から見たときには優れたコントラストが得られるものの、斜めの位置から見るとコントラストが低下し、発色が目に見えて悪くなってしまう。また、画面サイズが大きくなるにしたがって、正面から見たときにも周辺部のコントラスト低下が目立つようになり、画面全体の均一性が失われてしまうことがある。

「ZF9」を斜めの位置からみたところ。優れた視野角を確認することができる

砂漠など本来同じ色が広がるはずの映像では特に明るさと色のムラが目立つが、それ以外の映像でも気付きにくいだけで実際には画質への影響が発生しているのだ。

X-Wide Angle技術の詳細は公開されていないが、バックライトの構造的な工夫やパネル面のフィルムなどを複合的に組み合わせて明るさと色の変化を抑えていると予想できる。特に光の直進と拡散の関係を見直すことで、斜め方向から見たときのコントラストの低下を抑えているのではないだろうか。

「X-Wide Angle」のイメージ

その結果、たとえばソファに3人で座ったときなど、中央だけでなく両端に座っている人も正面とほぼ同じクオリティの映像を見ることができるし、正面から見ているときにも画面内の明るさと色の変化をほぼ一掃できるため、映像から本来のリアリティが蘇る。ZF9シリーズは65型及び75型という大画面寄りの展開なので、画面の均一性の高さは大きなアドバンテージになるだろう。

IPSパネルを採用した液晶テレビでも期待通りの広視野角を実現しているモデルは意外に少ないので、ZF9シリーズであればIPSと比べても互角かそれ以上の性能を発揮する可能性がある。

■立体的で奥行きが深く、ノイズの目立ちにくい映像表現

ZF9で見る映像はHDR、SDRどちらも細部に至るまでコントラストが高く、その結果として立体的かつ奥行きの深い映像表現力を獲得している。背景の手前の建築は超解像処理の効果によって細部の鮮鋭感が向上しているが、それを際立たせるのが、背景部分の自然な描写である。

BRAVIA ZF9

ZF9

細かいノイズを一掃しているだけでなく、テクスチャが緻密ながら強調感がない。画面の構成が複雑になっても主要な被写体と背景の対比はあくまでナチュラルで、誇張などの破綻が見られず、遠景まで非常に見通しが良い。海外イベントでの展示は鮮鋭感重視のチューニングに傾きがちだが、その設定でも背景のノイズが目立ったりテクスチャが埋もれることがないことに感心させられた。

オブジェクト型の信号処理の例

オブジェクト型の超解像とコントラストの最適化は、被写体ごとに映像信号の類似点を高精度に検出することで、誤検出を大幅に減らし、必要な部分だけに適切な範囲の処理を行う。その結果、個別の被写体を立体的に描写することで全体としても本来の遠近感を引き出せるようになる。

自然界を視覚で認識するとき、私たちは見えているものの立体感やコントラストを頼りに距離感や遠近の関係を把握する。その見え方に近い自然な描写を実現するうえで、オブジェクト型の信号処理が重要な役割を演じている。詳細は公開されていないが、動きの多い映像を見ると、直下型バックライトの制御も進化しているように感じられた。

最新の映像エンジン「X1 Ultimate」を搭載した成果は、ノイズ低減効果の大きさと適切な動作にも現れていた

もう一つの注目すべき点はノイズ低減効果の大きさと適切な動作である。X1 Ultimateはノイズリダクション回路の精度がX1 Extremeに比べて向上しており、文字の周辺や衣服の生地など、被写体が動いたときのジラジラとしたノイズが明らかに目立ちにくくなっていて、画面全体がすっきりして透明感が高い。この進化は特に地デジ受信時の画質改善に貢献するはずだ。

高画質テレビのカテゴリーではOLEDの躍進が目を引くが、最新世代の映像エンジンと本質的な高画質技術を投入することで、液晶テレビの存在感が再び強まる可能性が出てきた。高コントラストで明るく、しかも立体感豊かな映像を再現するZF9シリーズは、その動きを牽引する存在になる可能性がある。日本国内市場でのサイズ展開、型番、価格などの詳細が早々に明らかになることを期待したい。

(山之内 正)

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