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DSD 22.6MHz/PCM 768kHz/32bitまで対応

エソテリック「D-05X」レビュー。ファイル再生における同社の飛躍を象徴するD/Aコンバーター

公開日 2018/05/29 10:10 逆木 一
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低音の深い部分まで明晰な輪郭を纏い、押し出しや勢いの良さが感じられる。繊細な高音域をしっかりと表現しつつ、盤石かつ解像感の高い中低域の下支えがあるおかげで、上から下まで極めて情報量が多く、溢れ出す音の奔流に身を委ねる感覚が得られる。まことに幸せな音楽体験だ。聴く音源がCDリッピングだろうとハイレゾだろうとこの傾向は変わらず、音源の持つ情報量を余すことなく引き出してくれる。また、本機が聴かせる中低音の実体感は、むしろハイクラスのCDプレーヤーで聴く感触に近い。これはディスクプレーヤーを作り続けるエソテリックならではの音色の統一感とも言えるだろう。

D-05Xの背面。デジタル入力としてUSB、AES/EBU、同軸デジタル、P-05Xとの接続に利用するES-LINK4を搭載。また外部クロックの入出力端子(BNC)も搭載

さて、D-05XはPCMなら768kHz/32bit、DSDならDSD22.6MHzという、現時点で考え得る最高スペックにまで対応している。ただ、筆者は「再生可能な音源のスペックの高さは、実際の再生音とはあまり関係がない」という立場である。そもそも商用音源として、そのようなスペックの音源は皆無に等しいという問題もある。

しかし、「ユーザーの好みを反映させられる高い柔軟性」と捉えるならば、この「高いスペックの音源対応」は実際の音源の有無に関わらず、俄然大きな意味を持つことになる。というのも、いまやPCの再生ソフトは、PCM 768kHz/32bitやDSD 22.6MHzまで網羅する、高度なサンプルレート変換機能を備えているからだ。

アップサンプリングでも強力な音の変化を楽しめる

デジタルファイル音源の再生において、そのまま再生するのが良いのか、あるいはアップサンプリングを行って再生するのが良いのかは、ユーザーやメーカーの哲学の領域であり、どちらが正解というものでもない。ユーザーが再生ソフトでアップサンプリングをせずとも、オーディオ機器の側でアップサンプリングを行う場合もある。ここで重要なのは、ユーザーが「PCMでもDSDでも、可能な限りアップサンプリングしたうえで再生したい!」と思った時、D-05Xはその希望に最高度に応えられるということだ。

DACチップに旭化成エレクトロニクスの最新鋭「AKM4497」を搭載したことで、DSD最大22.6MHzと768kHz/32bitのPCM再生と、現在体験しうる最高スペックに対応

今回の試聴では、実際にアップサンプリングした状態での再生も試してみた。その際の再生ソフトは同じくRoonを使用。というのも、Roonは最新バージョンで強力なサンプルレート変換機能を実装したからだ。Roonの設定から変換後のサンプルレートをPCM 768kHzやDSD 22.6MHzに設定するといとも容易く、しかも安定して現時点で実現し得る最高のサンプルレートでの再生が可能だった。

音の変化としては、PCM 768kHzはヴォーカルの存在が際立ち、演奏とヴォーカルの位置関係や楽器の定位感が明瞭になる。DSD 22.6MHzにすると、全体的に響きが心地好く豊かになり、ヴォーカルには滑らかさと穏やかなニュアンスが加わるようだ。Roonはアップサンプリングを経た状態の再生を「エンハンス」(強化する・深めるの意)と表現しているのだが、なるほど確かに、アップサンプリングもこのレベルまでくると立派な音質改善と呼べないこともない。人によって好き嫌いはあるだろうが、変化自体は明瞭なものだ。

もちろん、アップサンプリングによるこうした音の変化を楽しめるのは、D-05Xの基礎性能の高さがあればこそ、である。なお、D-05Xは機器の側でアップサンプリングを行うこともできる。またPCMからDSDへのフォーマット変換も可能である。



高度なドライブメカニズムの開発元として、エソテリックが今後もディスクプレーヤーをラインアップしていくことに疑いはない。とはいえ、エソテリックはディスクだけに拘泥しているというわけでもない。トランスポートとの組み合わせに限らず単体でも魅力的なUSB-DACや完成度の高いネットワークプレーヤーなども擁し、将来のファイル再生に向けても万全の布陣となっている。D-05Xはユーザーの希望に最大限応える仕様と揺るぎのない音質を兼ね備えた、近年におけるエソテリックブランドの飛躍を象徴する逸品と言えよう。

(逆木 一)



本記事は季刊・Net Audio vol.27 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。

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