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“α”シリーズの新スタンダード

ぶっちぎりで高性能! ソニー「α7 III」は “あえて初心者に薦めたい” フルサイズミラーレスだ

公開日 2018/03/28 08:00 秋山 真
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最後に、いや本当は最初に紹介するべきだったのかも知れないが、α7 IIIの目玉機能の1つである、瞳AF機能について説明しよう。瞳AF自体は他社のミラーレスカメラでも見かけるが、αシリーズではα7R II以来、コンティニュアスAFモードでも瞳AFが動作するようになっていて、さらにα9、α7R III、α7 IIIでは追随性能が約2倍に向上している。瞳AF+コンティニュアスAFモードが何を意味するか。まずは発表会での実演デモの様子をご覧頂きたい。

説明員の方はレンズ(SEL24105G)の側面にあるフォーカスホールドボタンを押しているだけだ(どのボタンに瞳AFを割り当てるかはメニューで決められる)。あとは好きなタイミングでシャッターを切れば良い。つまり従来のポートレート撮影における作法、「目にピント合わせる→構図を決める→シャッターを押す」が「構図を決める→シャッターを押す」に短縮されるわけだ。何ならシャッターを押し続けるでも良い。

この機能を使えば、モデルさんの一瞬の表情やとっておきの笑顔を、ピント合わせしている間に撮り逃してしまうことがないのだ。撮影する側は構図を決めることだけに集中すればいい。これなら初心者でもプロ顔負けのポートレートが撮れてしまう!

……というのは、ちょっと大袈裟で、実際の瞳AFの精度は条件によってかなり左右される。特に被写界深度が浅めの場合、α7 IIIが瞳と認識していても撮影結果は微妙にピントがズレていることが結構ある。しかし、それは瞳AFを使わず従来の方法で撮った場合も同じことだ。少なくとも筆者くらいの腕前なら瞳AFの方が打率は高い。


SEL55F18Z, 1/640, F2.2, ISO 100

レフ板や照明機材も無しの屋外撮影、さらにはNo Photoshopという条件にも関わらず、モデルを快諾してくれたのは編集部Kさん。レンズはSEL55F18Zで絞りはF2.2。瞳AF的にも厳しい条件だが、とりあえずピントのことは気にせずに、瞳AF+コンティニュアスAFモードでシャッターを切り続けた。結果はご覧のとおり、バッチリ瞳パッチリである。何より撮影中に相手の表情の変化に集中出来たのが新鮮で、「ああ、人を撮るというのは本来こういうことなのだな」と痛感した。これまで苦手意識のあったポートレート撮影が、一気に身近なものになった気がする。

作例は以上になるが、他にも良かった点はいっぱいある。例えばEVF。α9、α7R IIIよりスペックは落ちるものの、明るくて動きのキレも良く非常に快適だった。バッテリー容量が大幅にアップしたこともα7 IIから大きく改善したポイントだ。実際、α7 IIIとα7 IIで交互に撮影してみても、α7 IIのバッテリーが残り50%になった時点でα7 IIIは80%。体感的には2倍といったところで、3日間のテスト撮影でもバッテリーが無くなって困るというシーンは一度も無かった。α7 IIには無かったサイレントシャッターも、シチュエーションによっては重宝するはずだ。

確かにα9のようなプロ仕様の連写性能はない。α7R IIIのピクセルシフトマルチ撮影のようなギョッとするような超絶高画素写真が撮れるわけでもない。しかしα7 IIIを単体で評価すれば、ぶっちぎりで高性能な、ライバル不在のフルサイズミラーレスである。これからはこれがαのスタンダードになるのだ。



貸出機を返却して1週間が経つが、幸か不幸か、私の心にまたポッカリと穴が空いてしまった。ボディ単体が約23万円。私ならそこにSEL24105G(約15万円)と、自分の得意な焦点距離の明るい単焦点レンズを1本付ける。α7 IIIとSEL24105Gのコストパフォーマンスの高さは疑う余地のないものだが、決して安い買い物ではない。でも筆者は、この組み合わせを敢えてビギナーの方にお勧めしたいのだ。

貴方に必要なのはインスピレーションとセンス、あとはちょっとのカメラ知識だけ。それだけで、今まで自分には撮れない、自分には縁が無いと思っていた写真が驚くほどカンタンに撮れてしまうのだ。そう、α7 IIIも間違いなくゲームチェンジャーなのである。

秋山 真
20世紀最後の年にCDマスタリングのエンジニアとしてキャリアをスタートしたはずが、21世紀最初の年にはDVDエンコードのエンジニアになっていた、運命の荒波に揉まれ続ける画質と音質の求道者。2007年、世界一のBDを作りたいと渡米を決意しPHLに参加。ハリウッド大作からジブリ作品に至るまで、名だたるハイクオリティ盤を数多く手がけた。帰国後はアドバイザーとしてパッケージメディア、配信メディアの製作に関わる一方、オーディオビジュアルに関する豊富な知識と経験を生かし、2013年より「AV REVIEW」誌でコラムを連載中。ATCとBVMとラーメンとリスをこよなく愛する40歳。

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