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コンテンポラリーな重低音ヘッドホン

良質な重低音はそのままにワイヤレス化。オーディオテクニカ新SOLID BASS「ATH-WS660BT」レビュー

公開日 2017/11/11 08:00 高橋 敦
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重低音だけではなく、中高域や空間表現も優秀

ここからはそのサウンドをお伝えしていこう。まず概要としては、「低音を盛るのではなく低域全体をフラットにディープに再生することでベースやドラムスをクリアに描写」、「盛っていないので低域が中高域を邪魔せず、中高域そのものもクリアでボーカルやシンバルに心地よいシャープさがある」、「やはり盛りがないおかげか、空間にぎゅうぎゅうの狭苦しさはなく、むしろすっと抜けた広がりがあり、空間表現も優秀」といったところがポイント。

昔ながらの重低音ホンではなく、オーディオテクニカが提唱するコンテンポラリーな重低音ヘッドホン、つまり“SOLID BASS”の音だ。

ペトロールズ『表現』でロックバンドのサウンドをチェック。この曲のベースは再生システムによってはボワンと大柄に膨らみすぎになりがち。それはそれで味わいはあるのだが、スタッカートのキレ、そこから生まれる絶妙なグルーヴといったところまで味わうには、ヘッドホンの再生傾向にもキレがほしい。

こちらのモデルはまさにその後者、キレのある低音に該当。ピタッとスタッカートしてほしいところでピタッと決めてくれる。さらに加えて、ボワンとお腹が膨らむのではなく下半身全体ががっしりとしているような、低重心で安定した大柄さも備える。細かなグルーブニュアンスと豊かなスケール感、どちらも楽しめるベースサウンドだ。モニター系の音が好みの方だとさらにタイトな方がよいのかもしれないが、一般的にはこれくらいの具合がちょうどよいのではないだろうか。

空間表現では、ギター周りの空気感が光る。極端なオフマイクではないが、マイク収録らしい距離感、その間や周囲の空気の響きを豊かに感じさせてくれる。空間全体の空気がクリアで、細かな響きまで感じやすいことからだろう。

その空間表現の実力は、悠木碧さん『レゼトワール』やコーネリアス『いつか/どこか』でさらに光る。音楽のタイプはまったく異なるがどちらも、音の配置に凝りに凝った作品だ。

声だけで構築された作品『レゼトワール』では、声周りのすっきり感も印象的。嫌な刺さり方はしない上質なシャープさだ。声しかない状態でその声がすっきりしていると感じるのだから、他の楽器の帯域との相対的な関係性からではなく、声自体がすっきり系に再生されていると考えてよいだろう。厚みのあるボーカルが特に好みの方だと物足りないかもしれない。しかし極端に細身だったりはしないので、特にそこにこだわる方ではなければ気にならないだろう。

『いつか/どこか』とは実に相性抜群! 様々な音が様々な場所に散りばめられていてそれが動き回るような、情報量の多い音源にも余裕で対応してくれるヘッドホンだ。

なお、以上はBluetoothワイヤレス接続での印象。自宅等でじっくり聴き込む際には、ワイヤード接続にすることでの伸びしろをこのモデルはまだ残している。

3.5mmステレオミニケーブルを付属するので、有線接続でも

シリーズ名からしてまずは、低音の表現を重視する方の目に留まりやすいことだろう。実際それに応えてくれるサウンドだ。しかし同時に、その低域の扱い方に無理がなく、空間性にも余裕を持つこのモデルは、別に「低音重視ってわけじゃない」という方をも普通に満足させてくれるだろう。幅広いユーザーに試してみてほしいBluetoothヘッドホンだ。

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