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11ch独立パワーアンプによる再生能力も検証

【レビュー】デノンの準旗艦AVアンプ「AVR-X6400H」。“Auro-3D”サウンドを徹底チェック

2017/10/23 鴻池賢三
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「レイヤー1/Surround」は耳の高さで、普段我々を取り巻いている音、言い換えれば方向も含め情報量が多い“主成分”と言っても良いだろう。「レイヤー2/Height」は仰角30度前後の上方から到達する音で、例えば屋内なら天井や壁を反射して耳に届く間接音、屋外ならば森や平原など、その空間特有の“響き”を想像すると理解しやすいだろう。「レイヤー3/Top」は、直上方向の音で、頭上を通過するような特殊効果音を担う。

デノンの試聴室にセッティングされたAVR-X6400H。日本国内では初の「Auro-3D」対応製品となる

訪問したデノン視聴室のスピーカー構成は、「ハイト」に相当するチャンネルを天井に埋め込んでスッキリと仕上げた「5.1.4」風の「Auro 9.1」。「Voice of God」(直訳すれば“神の声”、意味合いからは“天の声”がピッタリかもしれない)と呼ばれる頭上直上のスピーカー(トップスピーカー)は利用しておらず、家庭に置き換えても現実的なシステムである。

ちなみに、本機は11chのパワーアンプを内蔵しているので、スピーカーを用意すれば「5.1.4」にVOGを加えた「Auro 10.1」や、「7.1.4」なども選択できる。

デモコンテンツで「レイヤー1/Surround」だけが再生されると、従来のサラウンドと近い印象を受ける。「レイヤー2/Height」だけが再生されると頭上を中心に音場が生まれ、普段我々がいかに反射音を多く聞いているかかが理解できる。

「Auro-3D」のコンセプトとなる3つのレイヤーそれぞれに収められたサウンドをチェックする鴻池氏

面白いのは、「レイヤー1/Surround」に「レイヤー2/Height」が加わった時、頭上の音場が少し開放的になったように感じるだけなのに対し、逆にこの状態から「レイヤー2/Height」をカットすると、驚く程に包囲感とリアリティーがスポイルされて寂しくなってしまう点である。「レイヤー2/Height」はなくなってこそ、その偉大さに気付くもので、「Auro-3D」がオブジェクトベースではなく、チャンネルベースでレイヤー構造を採る理由とその効用が理解できた。

■まるで“音のVR”。サラウンドサウンドの新次元を実感

つづいて「Auro-3D」で収録されたBDソフトを再生。まだまだコンテンツは豊富とは言えないが、ソニーピクチャーズのUHD BD作品では「ゴーストバスターズ」などの名作を含め、国内向けの十数タイトルが「Auro-3D」に対応を予定していて、増加の傾向にあるようだ。

今回はいくつかの作品を試聴できたが、特に印象的だった作品の1つが『RED TAILS』(LPCM 5.1ch/海外盤BD)だ。セリフが驚くほど明瞭で、キレや張りの良さに惹き付けられる。制作品質の高さや本機の音質面でのアドバンテージに寄るところも大きいが、PCMベースであるのも一因だろう。

非圧縮のイマーシブサラウンドは、「Auro-3D」の真骨頂だ。イマーシブサラウンドならではの3D効果も、高音質が相乗効果を発揮して空間の密度表現を高め、自然な空気感を感じる新鮮な体験ができた。“3レイヤー”という考え方は、ホームシアターで最高のパフォーマンスを発揮させるのに合理的かつ有利であることが理解できた。

また、戦闘機が頭上を飛び交う様子は、軌跡が目に見える程に鮮烈。高音質が生々しいリアリティーを、全てのチャンネル間におけるステレオ的な位置表現の的確さが総合的に高い効果を生み出しているようだ。もう音のVRと言っても過言ではなく、サラウンドサウンドが新次元に到達した感さえある。「Auro-3D」とデノンサウンドの出会い。侮れない組み合わせだ。

ほか、筆者が気に入ったのは、ウィーン・フィルの『ニューイヤー・コンサート2017』だ。

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