【特別企画】ヤマハのHiFiオーディオを聴く

10万円強で揃うヤマハのフルサイズ「ベーシックコンポセット」。70-80年代の名盤で実力チェック!

岩井 喬

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2017年10月04日

「NS-B330はニアフィールド試聴にも対応できるよう設計されていますが、基本的には明るく開放的で鳴りっぷりの良い音が特徴です。まさに今回のテーマである70〜80年代の音楽とも相性が良いのではないでしょうか」と小林氏。

音元出版の試聴室に設置した「NS-B330」。ニアフィールドでの再現性、女性ボーカルの表現力にもこだわったという

NS-B330のトゥイーターはハイレゾ再生も見据えて新規設計されているが、ウーファーのPMD振動板はヤマハが古くから採用しているもので、これが本体価格ペア4.3万円という価格の実現にもつながっているようだ。

「PMD振動板は、素材を引き延ばして成形していた導入最初期と違い、現在ではインジェクション方式を採っているため、製造の自由度が高く、かつ均一に製造できます。ウェーブガイドホーンは上位価格帯のモデルでも採用した実績があり、製造素材は異なるものの、音質での妥協はしていません」と小林氏は補足。

また、「このNS-B330では低域のレンジは欲張らず、心地いい低音が出るようにチューニングしてあります。特にボーカルの美しさにはこだわりました」と、音作りのコンセプトも教えてくれた。

80年代の名盤がフルサイズならではのHiFiサウンドで蘇る

ここからは実際にCDソフトを聴きながら、そのサウンドについてレポートしていきたい。用意したソフトは最近のリマスター盤も少しあるものの、基本的に20年以上前の90年代初頭、リマスター盤が出始めた当初のものを中心に集めてみた。

岩井氏が今回の試聴のために用意したCDコレクション。70〜80年代の名盤をセレクトした

これまでCDを楽しんできた方々のラックに眠っていそうな旧盤を意識したことも事実だが、この当時のリマスター盤は、昨今発売されるものより音圧処理が高くなく、比較的ダイナミックレンジが広いナチュラルかつ際立ち感も両立した良いサウンド傾向のものが多いという観点から選んでいる。もし、この当時のCDをお持ちなら、ぜひ改めてその音に耳を傾けてみてもらいたいと思う。

はじめに、ビリー・ジョエル『ニューヨーク52番街』から「マイ・ライフ」を聴く。まずCDとアンプをアナログ接続したサウンドは、粘りよく深く沈むキックドラム&ベースが伸びやかで、ボーカルのハリ感も生々しい。ボーカルにかけられたリヴァーブの質感も爽やかで、スッキリと丁寧にまとめている。

ビリー・ジョエル『ニューヨーク52番街』

続いてデジタル接続で聴いてみたが、音場が広がりより一層爽やかなサウンドになる。ボーカルの輪郭もよりくっきりと描かれ、ピアノのブライトさも増す。コーラスにはプロデューサーのフィル・ラモーン繋がりでシカゴのピーター・セテラも参加しているのだが、細部の描写性が高まることでコーラスワークの分離度も向上し、その存在を確認することができる。

2枚目はブルース・スプリングスティーン『明日なき暴走』だ。最近ハイレゾ版も登場したが、高音質というよりは良い意味で深みある泥臭さが一つの魅力と考える本盤では、「裏通り」をデジタル接続で聴いてみた。

ブルース・スプリングスティーン『明日なき暴走』

ピアノのクリアな響きとクリーントーンのエレキが奏でる明瞭な浮き立ち感に対し、オルガンの深く粘りある音運びと、ベースのゆったりとした押し出し感が力強く両立。ボーカルのしゃがれ感も爽やかに描き、リヴァーブの響きも見通が良い。続くタイトルトラック「明日なき暴走」でも同様の傾向だが、彼の作品で重要なパートである渋いサックス、グロッケンの煌き感もよりデジタル接続で鮮度良く浮き上がる。以降、基本的にデジタル接続でのサウンド確認とした。

小型スピーカーとは思えない豊かな響き。A-S301の駆動力の高さにも注目

ボズ・スキャッグス『シルク・ディグリーズ』の「リド・シャッフル」も聴いてみたが、ふくよかながらもクリアな音像とS/N良い音場がバランスよく融合。引き締まったリズム隊は立体感もあり、奥行きも深い。ボーカルの肉付き感も自然で、適度な温もりと湿度感が得られる。

ボズ・スキャッグス『シルク・ディグリーズ』

ホーンセクションは爽やかに展開し、リズムのハリ感と厚み、ハツラツとした押し出し感と好対照だ。分離の良さを兼ね備えた絶妙なバランスで、いっときCD再生であることを忘れる充実したサウンドであった。なお「We Are All Alone」などのバラード曲では、濃密で滑らかさが増すアナログ接続の方がしっくりくるだろう。

この『シルク・ディグリーズ』のセッションがきっかけで誕生したのがTOTOであることは有名なエピソードだが、続く作品もこの流れに乗ってTOTOの4作目『IV』を聴いてみる。

TOTO『IV』

「ロザーナ」冒頭のキックドラムの密度感、カラッとした余韻のヌケの良さがしっかりと再現されており、リズムのハネが心地良い。高域の伸びもきれいであり、声の温かみとクールな輪郭の響きも巧みに融合させている。リズムセクションのほぐれ感も高く、非常に滑らかなサウンドだ。スピーカーのサイズの小ささを感じさせない存在感豊かな響きであり、A-S301の駆動能力の高さもこの点に寄与していると実感させられた。


女性ボーカルの再現性が高い。フルサイズだから可能な価格の枠を超えたサウンド

次は今年の『ロックンロール・ホール・オブ・フェイム』で殿堂入りを果たしたELO(Electric Light Orchestra)『FACE THE MUSIC』から、「Evil Woman」(前述の『ロックンロール・ホール・オブ・フェイム』式典でも演奏された一曲)を聴く。

ELO(Electric Light Orchestra)『FACE THE MUSIC』

奥行きあるドラムサウンドと、ギターワークの爽やかさが印象的だ。ドライで鮮明なストリングスのニュアンス細やかな旋律、ダイレクトに迫るボーカルのハリある声質もリアルだ。音数が多いものの、このシステムは各々の楽器の音色を丁寧に引き出し、スムーズにまとめ上げる。その手際の良い表現力は、エントリークラスとは思えない。

女性ボーカル物で選んだのは、ベリンダ・カーライル『ザ・ベスト・オブ・ベリンダVol.1』から、'87年に全米1位を獲得した「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」だ。

ベリンダ・カーライル『ザ・ベスト・オブ・ベリンダVol.1』

80年代ならではのクリーンギターの爽やかなピッキング(どことなくメロディラインはボン・ジョヴィ風)と、どこまでも伸びる豊かなリヴァーブの響き、タイトにまとめたリズム隊と煌びやかなシンセサイザーによるクリアなサウンドが目前に展開する。ボーカルもスッキリとセンターに定位しつつ、ボトムの厚みをほのかに感じさせるバランス良い描写だ。

小林氏が教えてくれたNS-B330の聴き所である女性の声の再現性についても、密度感が伴った艶ある表現となっており、納得の仕上がりである。改めてサウンド・プロダクションの豪華さ、緻密なアレンジワークに感嘆させられたが、NS-B330で聴くとコーラスワークも重くならず、終始ヌケ良い爽快なサウンドにまとめてくれた。

音と音の隙間に自然に耳がいき、聴き慣れたCDから新たな発見が得られた

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