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【特別企画】“STRATOSPHERE”連続レビュー

大橋伸太郎がサエク「XR-1」を導入した理由 ー ケーブルの存在が消え、広大な音空間が現出

2017/09/12 大橋伸太郎
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自宅試聴室で「XR-1」を聴く ー まさに伝送経路の存在が消える

現在、筆者の試聴室ではSP-10をアキュフェーズのパワーアンプ「M-9000」とB&W「802 Diamond」の間に、1組のXR-1をLINNのネットワークプレーヤー「AKURATE DS」およびヤマハ「CD-S3000」とアキュフェーズのプリ「C-2850」の間に都度接続している。今回は特にXR-1が生み出した音質の変貌ぶりについてこれから紹介してみよう。スピーカーケーブルは常にSP-10を使用する。

XR-1およびSP-10を自宅システムに導入した大橋氏。今回はXR-1にフォーカスして試聴を行った

AKURATE DSではNAS内のハイレゾファイル中心に聴いているが、最初にSL-1で聴いて衝撃を受けたのがこの組み合わせだった。XR-1で接続すると、音場が深く広く高く、そして濃密。無色透明でなく、もはや伝送経路が消滅したといっていい。帯域が広く倍音は無限大のオクターブへ昇華、ローエンドは影のように息づく。情報量が桁違いに多く、音楽の顔立ちがくっきり細部まで現れる。それまで気付かなかった無数の音が陰影と質感を伴って次々に現れる。

すべてのハイレゾ高音質ソースでそれが実感されるが、分かりやすい一例を挙げると、『高橋アキ プレイズ エリック・サティ 第一集』(FLAC192KHz/24bit)の「グノシェンヌ第三、第四、第五番」のファツィオーリ製ピアノ。共鳴弦の放つ倍音が豊かなばかりでなく、打鍵のタッチ毎にニュアンスとふくらみを変化させながら白銀色で虚空に描き出されるさまに陶然とさせられる。先述したように導体外周部にリッツ線構成のPC-Triple C/EX導体6本(PFA絶縁)を投入した効果で、ソースの中の可聴帯域以上の倍音成分と高周波成分を損じることなくプリアンプに送り込んでいるためであろう。聴こえないはずの音が音楽に生気を吹き込む…。音楽演奏の本義ではないか。同七番の低音の打鍵の立ち上がりの峻烈さと重量感にも聞き惚れる。

次にXR-1でヤマハ「CD-S3000」と「C-2850」を接続してみよう。最初に強烈に印象付けられるのが、定位感の向上。高性能なズームレンズのフォーカスをプロがマニュアルで追い込んだように演奏の細部がくっきりと現れる。田部京子の弾く『ベートーヴェン:ピアノソナタ第三十番』(SACDシングルレイヤー)の第一楽章は鍵盤上を滑走する両手が視覚的な実体を持って音場にいきいきと描き出される。

XR-1を導入することで「ケーブルに頭を悩ますことは向こう何年ないだろう」と大橋氏

常用のリファレンスディスク、キップ・ハンラハンのN.Y.ラテンアルバム『ビューティフル・スカーズ』(SACDハイブリッド)は、これまでずっとボーカル、低音楽器とパーカッションの実在感を中心に聴いていた。それがプレーヤー・プリアンプ間にXR-1を投入することで、脇役のストリングスセクションの歪みが消え、音場に妖艶に漂い出したその存在感の大きさに初めて気づく。

XR-1の存在がシステムのインフラを余裕あるものにした結果、音楽信号がスムーズに流れ本来のバランスを取り戻し、聴感上後方へ追いやられていた楽音の響きが覚醒したのだ。

STRATOSPHEREに共通すること。それは、色付きを排したニュートラルサウンドというサエク従来の製品哲学がさらに進み、広大な音空間がそこにあることだ。逆説的だがその結果、伝送経路の存在が消えてしまう。ハイレゾ時代にシステムインフラとして待望されていたものがまさにそれだった。

STRATOSPHEREのケーブル、特にインターコネクトケーブル「SL-1/XR-1」は決して安価ではない。しかし再生システム全体の品位を一気に引き上げるパワーを持っていて、プレーヤーとアンプの両方をグレードアップしたような効果がある。少なくともSL-1/XR-1を投入すれば、ケーブルに頭を悩ますことは向こう何年ないだろう。

(大橋伸太郎)



特別企画 協力:サエクコマース

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