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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第194回】まとめてやります!「ポタ研&ポタフェス2017夏」高橋敦の“超個人的”ランキング ベスト5

公開日 2017/07/21 09:45 高橋 敦
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柔らかく音の反射の少ない素材を自然なカーブで用いることで、耳の中を通る際に近い素直な音を得られる、という狙いからの採用らしいのだが、音を聴いてみて「なるほど」と思えた。嫌な鋭さはなく、それでいて鈍るわけでもなく、空間の広がりも適当。フィット感も良くそのおかげか、2BAモデルでも低域までしっかりカバーする。
大まかな印象としては↓のような感じ。

●VS-2/2BA シャープ&クリア!ソフトなスカッと感
●VS-3/3BA VS-1より素直な感触の高域と豊かな低域
●VS-4/4BA いちばんのバランス型&ボーカルが充実

そして見ての通り「アメリカンビンテージ」なルックスもポイントだ。往年の「アメ車」を意識したデザインやカラーとのことだが、往年のアメ車のカラーは当時のエレクトリックギターにも流用されており、そのイメージにも重なる。

VS-4のブラック。クロームとブラックの組み合わせは派手さと渋さが同居する

ケーブルの耳周りはカバーで形を作ってあるが、針金は入っていないタイプ&プラグもコンパクトで使い勝手も良さそう

またカラーは写真のブルー、レッド、ブラックの他にピンクも用意されており、しかも「VS-2はブルー」「VS-3はレッド」「VS-4はブラック」のような決めうちではなく、全モデルに全カラーを用意。ユーザーを悩ませる「音の好きなモデルと色の好きなモデルが別……」問題とは無縁。例えば僕だったら「VS-4でブルー」が好みだが、それもあるわけだ。気が利いている。

イヤモニ系のユニバーサルモデルが好みな方は、ぜひ注目してみてほしいブランド&シリーズだ。



【第1位】Lightning接続の本命!?ULTRASONE「NAOS」

音楽好きイヤホン好きのiPhoneユーザーを悩ませるLightning問題。BluetoothやLightningリケーブルや対応策は色々あるわけだが、「これが一番手っ取り早くて実用的かも」と思わせてくれたアイテムがこちら、ULTRASONE「NAOS」だ。

中央寄りの小さい方が実物

本体側はmicroB。USB-C、Lightning、microB、A端子との接続ケーブルが付属

超小型USB-DAC/ヘッドホンアンプで、機器との接続はケーブル交換によってLightning含め様々なタイプに対応している。

ポイントはその「超小型」というのが本当に超小型なことだ。写真で一緒に写っているケーブルのプラグやイヤホンと比べてみて欲しい。どう見ても小さい!重さも6gしかない。

小柄なイヤホンW80と並べても写してもやっぱり小さく思えるサイズ感

この小ささと軽さなら、Lightning端子への負荷も少なそうだしさほど邪魔にもならなそう。USBバスパワーなので充電の手間も不要で、普通に使いやすそうだ。

ただし、接続した機器側からのコントロールとなる音量調整には少し気になるところがある。iPhoneとの組み合わせだと設定できる最小音量にしても、例えば写真のW80のような遮音性が高く駆動効率に優れるイヤホンだと、「もっと音量を下げたいかも……」と思う場面もありそうな感じなのだ。

小音量再生は苦手だが、逆に大抵のイヤホン&ヘッドホンとの組み合わせで音量不足を感じることはないだろう

そういった問題を解決してくれるiFI-Audio「IEMatch」を併用すれば良いのだろうが、すると小型軽量という良さが弱まってしまう。普段使いとしては、音量を出しにくい効率低めのイヤホンと組み合わせるのが扱いやすいかもしれない。

しかしそもそも音量大きめが好きな方にとっては何も問題ないところなので、機会があれば愛用のイヤホンとの組み合わせを試してみてほしい。

▼恒例!今回の完全自作平面駆動ヘッドホン

というわけで超個人的ランキングは以上。

最後に、これまた恒例のポタ研「Music With 規格外」ブース出展の「完全自作平面駆動型ヘッドホン」の新モデルを紹介しよう。

今回の新作は右側

侘び寂びを感じさせる佇まい

今回はドライバーを完全に刷新。そのポイントは、ドライバー背面側のいわゆる「背圧」の処理とのこと。

平面駆動の強みは振動板の全面が均一に動作することだが、実際にはやはり振動板中心部の方が多少は大きく動いてしまっているのではないか?というところに着目。それを補正するために、振動板外周に近い部分の背面にポートを設けて背圧を抜き、外周部がストレスなく振動できるように調整。中心部との動きの差を低減させてみたということだ。前回ポタ研での耳掛けタイプもそうだったが、アコースティック面での工夫が光る。

ちなみに今回の背圧調整の作業過程で「手持ちの3Dプリンターで積層したパーツには微細な孔が残っている」ことに気付いたという。それを埋める処理をした上での現在のポートの配置や大きさだそうだ。目に見えないレベルの細かさ!

見えにくいが外周近くの所々に開口部が設けてあり、背圧が抜かれている

このイヤーパッドやフィルター、側面の開放具合など、様々な要素によってチューニングされているものと思われる

その工夫は音にもしっかり現れていた。自作平面駆動型ヘッドホンはある時期、空間表現重視の「川面」と力強さに振った「水面」というふたつのモデルに分かれたのだが、今回の新作はどちらの要素も兼ね備えてしまった印象だ。生物の進化の過程、分岐と収束を見るようで興味深い。毎回本当に楽しみな作品だ。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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