コンデンサー型に、新たな可能性もたらす「エナジャイザー」

iFI-Audio「Pro iESL」最速レポート ― これまで気づかなかったヘッドホンの新たな魅力にたどり着ける

岩井 喬

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2017年07月17日

■最新型からヴィンテージまで、その実力を引き出し切る

試聴にあたってPro iCANとPro iESLを接続。ソースにRME「ADI‐2 Pro」、コンデンサー型ヘッドホンにキングサウンド「KS‐H3」を用意し、Pro iESLの実力をチェックしてみた。KS‐H3は以前、純正ドライバーアンプとの組み合わせで聴いたことがあったが、その時のサウンドとは別物のリアルなテイストとなった。音像は適度な厚みとしなやかさを持ち、管弦楽器はハリ良く爽やかに展開。余韻は豊潤でふくよかな響きに満ちている。ヴォーカルは滑らかでボトム感もしっかりと感じ取れた。

KS‐H3は比較的リリース音を残して残響感を豊かに感じさせる傾向であり、コンデンサー型の中でもウォームな音色を持っている。その基本的な音色を維持しつつ、音像のフォーカス感がキレ良く推移している印象だ。女性ヴォーカルのバラードはその特色を生かした、肉づき良く温かみのあるサウンドで、リヴァーブの響きもリッチに感じられる。

さまざまなバイアス電圧に対応しているのがPro iESLの特色であるので、ここでヴィンテージなコンデンサー型ヘッドフォンも聴いてみることにした。用意したのは金メッキ銅メッシュ電極が特徴のスタックス「SR‐Ω」だ。こちらも現行の純正ドライバーアンプと組み合わせて聴いたことがあったものの、Pro iESLで聴くサウンドは端正でありながらもシャープでキレ良く制動性の高さも兼ね備えた万能なものになった。

11・2MHz音源では柔らかく爽やかなヴォーカルの自然な質感をリアルにトレース。ピアノのアタックもクリアで、アコギの弦も艶良く上品にまとめてくれる。入力に用いたADI‐2 Proの特徴が色濃く表れる情報量も多くリアルな傾向であるが、瑞々しさに溢れた耳当たり良いウェルバランスなサウンドだ。ロック系の音源でもリズム隊は高密度で締まりよくまとめ、シンセやホーンセクションは潤い良くしなやか。オーケストラの響きも華やかできめが細かい。奥行き感も適度に感じられ、小編成のジャズなど、音像の際立ち方は立体感を伴ったナチュラルなものであった。

■選択肢が広がった現代だからこそ発揮されるPro iESLの個性

最後にPro iESLとプリメインアンプを繋ぎ、より高い駆動力でドライブできる環境での試聴も行ってみた。用意したプリメインアンプはアキュフェーズ「E‐270」。ヘッドホンはそのままSR‐Ωを使うことにした。

Pro iESLのリアパネルには、スピーカーケーブルを接続する「Speaker In」という端子を装備。今回はここにアキュフェーズのE-270を接続してスタックスSR-Ωをドライブした

まず驚いたのがより引き締まった音像感と、付帯感なく透明度の高い音場のS/Nの良さだ。ヴォーカルの口元も潤い良く緻密で生々しい。肉づきも良く高密度で、引き締め効果も高いが、音離れ良くしなやかに音像をまとめ上げ、全体的に上質で品の良いものとしている。

コンデンサー型ならではのアタック&リリースの速さ、微小なレベルでの再現性の高さは申し分なく、そのリアルさは旧モデルであることを感じさせないくらいだ。とはいえ解像度重視の最新モデルに対し、SR‐Ωが持つ適度な倍音の豊かさも尊重した、華やかで艶やかな潤いに満ちたサウンドといえるだろう。

スタックスの組み合わせでは純正ドライバーアンプのサウンドも見事なものであったが、Pro iESLを使うことでヴィンテージ製品も負担なく駆動できるだけでなく、持てるポテンシャルを現代レベルまで引き出してくれる。これまで聴き込んだコンデンサー型ヘッドホンも本機を通すことでこれまで気づかなかった新たな魅力にたどり着けるかもしれない。

まだまだ組み合わせてみたいコンデンサー型ヘッドホン&アンプもあるのだが、それはまた別の機会にとっておこう。Pro iESLはこれまでの純正同士で楽しむスタイルとは違う、コンデンサー型ヘッドホンならではの奥深さを堪能できるアイテムだ。その個性はコンデンサー型ヘッドホンの選択肢が広がった現代だからこそ存分に発揮できるはずであり、もうひとつ活況を呈している平面駆動型ヘッドホンをプリメインやパワーアンプでパワフルに鳴らしきるためにも活用したい製品である。

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