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レコードの「本当の音」を聴くために

レコード再生におけるEQカーブとは? 3種類のRIAAカーブを「micro iPhono2」で探る

公開日 2016/11/08 17:38 菅沼洋介(ENZO j-Fi LLC.)
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■アナログレコード再生におけるイコライザーカーブとは?

レコードファンの間で、昨今大きな注目を集めているのが「イコライザーカーブ(EQカーブ)」だ。

本記事では、アナログレコードにおけるイコライザーカーブの役割と、その代表的なカーブである「RIAA」について、iFi-Audioのフォノイコライザー「micro iPhono2」を使って検証した

これまで特にイコライザーカーブを気にすることなくレコードを再生していたという方もいるかもしれない。だがこのイコライザーカーブは、レコードを正しく再生する上で非常に重要な意味を持っている。

当たり前のことだが、CDやハイレゾ音源などのデジタル音源と、レコードやオープンリールテープといったアナログ音源は、音が出る仕組みが大きく異なる。前者が非接触なのに対して、後者は接触型。つまり、アナログ音源は「物理的な接触」を経て音楽が再生される。

レコードの場合、この「物理的な接触」はカートリッジの針先と盤面の間で行われる。盤面の溝に刻まれた凹凸を針先でピックアップすることで、音楽が再生されるのである。

カートリッジの針先が、レコード盤の音溝をトレースすることで音が出るレコード再生。イコライザーカーブは、そんなレコード再生ならではの特徴でもある

アナログレコードと聞いて多くの人がイメージする「サーッ」というノイズ、つまりサーフェイスノイズは、この物理的な接触から生じるものである。

そして、レコードの場合はもうひとつ物理的な問題がある。それは盤面に刻まれる音溝である。

一般的に低域を刻む場合は溝の幅が広くなり、一方で高域の場合は溝の幅は狭くなる。また、音の大小、つまりダイナミックレンジが大きくなるほど溝の幅が広くなり、盤面に収録できる時間が短くなるのだ。

このように音の大小や帯域によって溝の幅が異なるレコードだが、もし仮に何の処理も施さず、そのままの帯域バランスでカッティングを進めてしまった場合はどうなるだろうか。

溝の幅が広くなる低域は、カートリッジの針先でトレースしきれなくなってしまい、溝の幅が狭くなる高域では収録された音楽がサーフェイスノイズに埋もれてしまうことになる。このようなレコード盤ならではの問題を解決するるのが「イコライザーカーブ」というわけだ。

一般的にレコードの盤面に音を刻む際は、低域を小さく、高域を大きくするようにイコライゼーションをかける。これにより全体的な音量を小さくすることが可能で、収録時間を確保できるほか、高域はサーフェイスノイズに埋もれることなく記録することができる。

ただし、このイコライゼーションをかけてカッティングした状態のままで、つまりイコライザーカーブがフラットな状態で再生すると、高域ばかり目立つシャラシャラとした音になってしまう。きちんと音源が記録された当初のバランスで再生するためには、カッティング時とは逆のイコライジングを行う必要があるのだ。これがフォノイコライザーの大きな役割のひとつである。

フォノイコライザーで正しく補正を行って再生して初めて、アーティストや製作者が意図した「音楽」を楽しむことができるのである。

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