HOME > レビュー > iFI-Audio「Pro iESL」最速レポート ― これまで気づかなかったヘッドホンの新たな魅力にたどり着ける

コンデンサー型に、新たな可能性もたらす「エナジャイザー」

iFI-Audio「Pro iESL」最速レポート ― これまで気づかなかったヘッドホンの新たな魅力にたどり着ける

公開日 2017/07/17 09:42 岩井 喬
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■クリアでS/Nの良いサウンドを実現する「キャパシティブバッテリー電源」

Pro iESLに内蔵される大きな構成要素はふたつ。ひとつはコンデンサー型ヘッドホンに必要不可欠な振動膜にかける数百Vのバイアス電圧供給のために設けられたキャパシティブ・バッテリー電源、そしてもうひとつは固定電極に対して付加される数百Vのドライブ電圧を供給するために用意された、iFIオーディオオリジナルのピンストライプ・パーマロイ・コア・トランスだ。

Pro iESLの内部

バイアス電圧については230V(スタックス・ノーマルバイアス)、500V(ゼンハイザー「Orpheus HE‐90」)、540V(ゼンハイザー「HE‐60」、キングサウンド「KS‐H2/H3/H4」)、580V(スタックス・現行品PROバイアス)、600V(コス「ESP/950」、ジェイド)、そして将来の予備値として用意された620V、640Vの7ステップが用意されている。

バイアス電圧は6ピンのノーマル端子や将来に向けたオプションを含めて7ステップを用意。インピーダンスは通常は64Ω以上を設定する

接続端子はスタックス・ノーマルバイアス用のDIN6ピン端子とスタックス・現行PROバイアス用のDIN5ピン端子、そしてダイナミック型ヘッドホン用の4ピンXLRバランス駆動出力(Pro iCANにも用意されているが、こちらに用意されている理由は、駆動力のある上質なプリメインアンプをPro iESLに繋ぎ、その高いドライブ能力で平面駆動型などの鳴らしにくいダイナミック型ヘッドホンを楽しめるように企画された)を装備。

本機専用に開発されたキャパシティブ・バッテリー電源は、WIMA社製フィルムコンデンサーをパラレルで繋いで構成したもので、1000Vもの容量を誇る。従来のバイアス電圧供給回路は動作ノイズなどの点で理想とは言えなかったが、設計陣が以前バッテリーを備えたヴィンテージなエナジャイザーを試聴した際、この技術開発の上での閃きがあったという。

キャパシティブ・バッテリー電源は筐体左右に用意

ヴィンテージ・エナジャイザーの電源を切った直後、バッテリーに蓄えられたわずかなパワーでも音が出ていたそうで、そのクリアでS/Nの良いサウンドが印象に残っていたとのこと。その要因を検証した結果、辿り着いたのがキャパシティブ・バッテリー電源だ。

一般的な大容量の電解コンデンサーを使う場合、リーク電流も大きいため、一定量のバイアス電圧を常に確保することが難しい。そのために整流回路を工夫する必要があるが、これは動作ノイズの問題もつきまとうため、コンデンサーそのものから別の特性を持つものを選択する必要があったわけだ。

キャパシティブ・バッテリー電源は前述したWIMA社製コンデンサーに必要な電圧になるまで充填を行い、規定量になった段階で充電回路(完全にシールドされた小型トランスと、新型の超高速高電圧整流回路を組み合わせたスイッチングシステムで動作周波数は約750kHz)を完全にシャットアウト。そのままバイアス電圧を維持し続ける構造で、30秒ずつ充填を行う必要があるものの、充電回路が動作するのはほんの数マイクロセカンドほどであるという。

次ページコアテクノロジー(2)「ピンストライプ・パーマロイ・コア・トランス」とは?

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE