HOME > レビュー > 【第183回】JH Audioのイヤホン新シリーズ「Performance Series」登場!3機種一斉レビュー

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第183回】JH Audioのイヤホン新シリーズ「Performance Series」登場!3機種一斉レビュー

公開日 2017/03/24 10:30 高橋 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

ベースにおいては、この曲に限らずなのだが、もうひとつ大きなポイントがある。ベースの重心をボーカルの下に沈み込ませてくれることだ。大雑把なイメージ図で表現してみると……


実際はそんな単純な話ではないが、仮に「ベースの存在感≒この模式図における面積」とイメージしてみてほしい。するとこの模式図における「一般的」と「Roxn的」のベースの面積、実は同じだ。しかしRoxn的な重心の置き方、より低い帯域にベースの存在感を沈み込ませた場合、ボーカル帯域との重なりの面積は見ての通り大幅に減少する。

Roxnはベースやドラムスといった低音楽器を実に大柄に太く厚く表現する。先程の「面積」で言うならば、普通と同じではなくそもそも面積が広いわけだ。にも関わらず歌の邪魔になることはない。それはこういった理由からではないだろうか。

低音楽器を実に大柄に太く厚く表現する

僕はベースをこのようにボーカルの下に沈み込ませてくれるイヤホンがとても好みだ。しかしメジャーなハイエンドイヤモニでこのタイプというと、他にぱっと思い浮かべられるのはShure「SE846」くらい。こういった音作りは難しいのか、それともニーズがあまりないのか……

さて、ベースに邪魔されないボーカルやギターにも目を向けてみると、それら自体も実に好感触だ。ボーカルは男性ボーカルのペトロールズに限らず、悠木碧さん、やくしまるえつこさん、豊崎愛生さんなど、女性ボーカルも心地よく届けてくれる。一言で言うと「透明感よりも肉声感」というタイプのボーカル表現だ。

エレクトリックギターのエッジは、鋭さよりも音のエッジと背景の空気をなじませるように放出される粒子、その豊かさが印象的だ。アコースティックギターも枯れさせすぎず豊かな音色。音楽的な演出が心地良い。

空間表現も個性的でいて秀逸。低域の響きが豊かなのはもちろん、その響きの濃さは中高域でも同様だ。しかし濃いのだがしつこくはない。その良質な響きのおかげか、ドラムスの立体感、奥行きの表現も素晴らしい。

十分にJH!かつモニター的でもあるV2 PRO!

「JH16V2 PRO」「JH13V2 PRO」はROXANNEほど独特ではなく、一般的なモニター系サウンドとの違和感はRoxnほど大きくはない。だが「それは比較対象がROXANNEだからでは?」というところもその通りだ。

特にJH16V2 PRO。低域アジャストを全開にしようものなら、Roxnほど特徴的ではないものの、一般的なイヤモニサウンドの範疇は軽く超えるような低音の響きを出すこともできる。しかしやはり、Roxnと比較すればすっきり系であり、Roxnほど音場表現重視ではなく音像描写側に少し寄せてあり、Roxnをスモーキーとすればそれよりはクリアだ。

Roxnの際立つ特徴として挙げたベースの重心の低さも、こちらはあそこまでは低くはない。重心とそれに連れてベース全体も少し上に来て、ボーカルとの重なりは少し出てくる。しかしベース単体を意識した時にはより聴き取りやすい音域に来るので、その輪郭や動きが見えやすい。そういう意味では「モニターしやすいサウンド」と言えるだろう。だが繰り返すが重心が上がるというのも「Roxn比」の話であり、広く一般的に見ればこの16V2も低重心タイプの方に入るだろう。

そういった違いはあくまでも個性の違いであり、Roxnと16V2にクオリティの上下は感じない。16V2の音の方向性が好みな方にとってこれは、「Roxnより手頃な価格でそれと同格かつ自分好みな音のモデル…お得!」と言えるだろう。とはいっても、その「お得!」というのもあくまでも「Roxn比」であり、絶対的なお値段としては超ハイエンドなのだが…。

次ページJH13V2 PROは3機種の中で最もモニターライクなサウンド

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE