海上忍のラズパイ・オーディオ通信(24)

ラズパイ用DACボード「Terra Berry」開発者を直撃、設計コンセプトや今後の展開を聞いた

海上 忍

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2017年01月25日

「Terra Berry」の設計コンセプトを訊く

ブライトーンの「Terra Berry」は、旭化成エレクトロニクスの「AK4490」を搭載したDACボード。GPIOポートに装着してI2Sでオーディオ信号を転送する点では、他のRaspberry Pi向けDACボードと変わりないようだが、前ページで説明したマスタークロックの扱いはどうなのか。電源の工夫も含め、Terra Berryの企画・設計を担当した古島一博氏に話を訊いた。

まずはDACにAK4490を採用した理由を訊ねたところ、「DSDです。最初はESS ES9018が候補に挙がっていましたが、ちょうど出回り始めたAK4490も検討したところ、性能/スペックと音質の両面で条件に合致しました」と、DSD対応を強く意識した結果だという。

残念ながら、現在のラズパイ・オーディオ(I2S出力)ではOS側の事情でその性能を生かしきれないが、PCM 384kHz再生対応のカーネル/ドライバを収録したディストリビューションが整備されつつある現状を踏まえると、この選択は正解だったのではないだろうか。

Terra BerryではサンプルリレーコンバータIC(AK4137)を搭載しているが、この点については「AK4490はI2Sの信号がダイレクトに入らない仕様ということもあり、I2Sを入力できるSRC-ICを通す方法を採用しました」と、DACの仕様が理由とのこと。ただし、「デジタルフィルタが豊富にあるなど機能豊富で、将来性も加味して決めました」と、このAK4137に決めた理由は他にもあるという。

基板上にはAK4490(DAC)とAK4137(SRC-IC)を確認できる。2系統の水晶発信器も搭載、マスタークロックとして利用する

マスタークロックの扱いについても熟慮したようだ。「ご存知のとおり、Raspberry Piはマスタークロックを持っていませんから、Terra Berry側に44.1kHzと48kHzの2系統のクロックを持たせました。DACはSRC-ICと同期して動作するため、Raspberry Piのクロックには影響されません」とのことで、分類としては前ページで2番目に説明したタイプ(DAC単体ではなくSRCを併用するが)。歯切れよく輪郭が整った音の理由はここにあると言えるだろう。

12VのACアダプタを電源として利用することについては、「入手性を考慮し、12Vタイプを選びました。内部で12Vから5Vに降圧するのですが、発熱を軽減するためにデジタルのDC/DCコンバータを利用しています」という。Raspberry Piへの電源供給はこの方法で行われるが、「音に影響するので、DACボード側ではアナログの3端子レギュレータを採用しました」とのことだ。

なお、フロントパネルの電源ボタンはソフトウェア的な終了処理を行わない(OSのシャットダウン手続きを行わない)仕様だが、こちらについては「Volumioなど最新のLinuxディストリビューションには、そのような手続きを可能にするしくみが用意されていますが、現状では電気的な処理のみ行います」とのこと。この点については、今後のアップデートが待たれる。

Terra Berry発売からしばらくしてケースを追加した理由について訊ねると、「当初はDACボードのみ販売する予定でしたが、古くから付き合いがある大阪・共立電子さんなどで意見を訊くなどしたところ、これは必要だなと考えを変えました」という。自作/コンポーネントオーディオ派から支持されていることが伺える。

Terra Berry発売後に追加された専用ケース

専用ケースには、Terra Berryに上積みする形で装着するDC/DCコンバータ搭載の電源部が付属している

今後の計画については、「いろいろ検討していますが、同じものを作っても売れませんからね…」と、継続的にRaspberry Pi関連製品をリリースすることは確からしい返答だった。これまでも個性的なオーディオ機器を多数開発してきた実績があるメーカーであるだけに、次の製品を楽しみに待ちたい。

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