海上忍のラズパイ・オーディオ通信(22)

ラズパイ・オーディオにOS「Moode Audio Player」を導入、そのメリットをチェック

海上 忍

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2016年12月13日

サウンドデバイス側の性能と設定にもよるが、ALSAではこのレイテンシーを数ms以内にまで抑えることができる。macOS/iOSのサウンドアーキテクチャ「CoreAudio」も低レイテンシーで知られており、それがゆえにDTM方面で多くの実績を持つわけだが、ALSAはこれに引けをとらない。GUIなど音楽再生と無関係のプロセスが必要なく、リアルタイムカーネル(スケジューリングがより正確になることが期待できる)という選択肢もある分、むしろLinux/ALSAの方が有利と見てもいいはずだ。

ところで、同じくLinuxを基礎とするAndroid OSはレイテンシーが大きいではないかという指摘もあるだろうが、Android OSは「AudioFlinger」というサウンドアーキテクチャーを使う仕様だ。OpenSL/ESなどのAPIを使い回避する手法も用意されてはいるが、メーカー/機種ごとにサウンドチップやドライバーが異なるうえに、セキュリティの都合もあって仮想マシン層とカーネル層が分離されているAndroid OSでは、統一したアプローチが難しい。オーディオから話が逸れるが、Android向けの「音ゲー」が少ない理由のひとつはこれだ。

LinuxにおけるALSAの概念図

古いジャズ音源をヘッドホンで楽しむ時は「Crossfeed DSP」

ALSAはシステムの低層に位置するソフトウェアであり、GUIの管理ツールを標準装備しないなどエンドユーザにとってはプリミティブな存在だが、それだけに“コンピュータの性能を引き出す”ことに長けている。最新のMoode Audio Playerに用意されている「Crossfeed DSP」は、その好例といえるだろう。

Crossfeed DSPは、その名のとおりクロスフィード処理を行う機能のことで、左右各チャンネルの信号を反対側のチャンネルに対し、わずかに遅延させつつ元のチャンネルに重ねる処理を行う。ステレオ音声に立体感をくわえる効果のほか、ヘッドホンリスニング時の頭内定位を自然な印象にすることができる。同機能を備えるヘッドホンアンプもあるが、Moode Audio Playerではこれをソフトウェアにより実現しているのだ。

といっても、実際の処理を担うのは「BS2B」。Foobar2000向けプラグインも公開されているため、利用したことがあるというWindowsユーザも多いことだろうが、Moode Audio PlayerではこれをALSAプラグインとしてMPDの再生系に組み込んでいる。プラグインはALSAカーネルドライバーと直接やり取りできるためレイテンシーの心配は無用、正確な再生を期待できるところがメリットだ。

しかも、PCMデータであれば対応するサンプリング周波数/量子化ビット数に制約はないため(DSDは不可)、ハイレゾ音源も再生できる。FLAC 192kHz/24bitやWAV 88.2kHzで試してみたが、CPU使用率がやや上昇したものの再生に支障はなく、頭内定位が前方へ移動するクロスフィード処理の効果も実感できた。

自然な定位と音場感を実感。設定も簡単にできる

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