画期的な「サイン波形差分同期補正回路」を採用

ラックスマン初のクリーン電源「ES-1200」を検証 ー アクセサリー銘機賞2017 グランプリ機

井上千岳

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2016年12月13日
本機を用いると、ノイズや歪み低減だけでなく、音楽のリアリティが増す

それでは実際に本機を通した音を聴いてみよう。まずは一般的なCDプレーヤーとアンプのシステムを接続して試聴すると、S/Nが向上して音場全体が静かになる。当然と言えば当然だが、周囲の空気からノイズがすっと引いたような雰囲気がある。そしてこれに伴って、様々な事柄が見えてくる。

ピアノではタッチの感触が深い。単に濁りがなくなったというだけではなく、肉質感が増して芯がぎっしり詰まった印象である。硬くなるというのではなく、弾力のある厚みが高まっているのだ。また低音部が最も低い音域まで滲まず、くっきりと明瞭で響きも質感もがっしりと把握されているのも違いと言っていい。バロックでは、ヴァイオリンやチェンバロ、バロックギターなどの手触りが一層緻密になって出てくるのがわかる。音の出る瞬間の感触が、濁りがなくキレもいい。


実際にES-1200を用いた際の本体表示。入力/出力の双方について電圧や歪率を数値で表示してくれる
オーケストラは伸びやかであると同時に、力感も高まっている、ダイナミズムの幅が広がっているということだ。木管楽器などの弱音でも存在感が明確に感じられる一方で、トゥッティのフォルテでは明快な瞬発力が発揮される。その起伏の差が大きいのである。ジャズでもキックドラムの腰の落ち方やスネア、ハイハットの厚みに肉付きのよさが感じ取れる。音が逡巡なく出てくるイメージだ。

アナログでも意外なほど大きな変化が実感できる。S/Nだけでなく解像度もエネルギーも、ちょっと別モノのような出方になっている。音の彫りや起伏が一回りずつ大きくなって、伸びと厚みが増しているのだ。

バロックではヴァイオリンやオーボエなどの古楽器が、粘りと艶やかさを備えて表情に生気がある。消えていたバイタリティが戻ってきたような感触だ。弱音がひっそりとしていながら明瞭なのも、電源と無関係なわけがない。ピアノは輪郭が太く肉質感が厚くタッチが充実している。強弱の凹凸が速いというべきか、表情がいっそう多彩で力強い。

オーケストラは遠近が深まり、上下にも広く伸びている。そしてどの楽器も瞬発的なダイナミズムに富んで起伏がくっきりしているのも印象的である。周囲の静かさがそれを際立たせているのも確かだ。ことによるとデジタル以上に影響が大きいのかもしれない。



一般に電源機器に期待されるノイズや歪みの減少、質感の透明感などに留まらず、音楽のリアリティが明快なものになる。表情が深く、エネルギーの幅が広がって起伏が豊かだ。ピントが明瞭になるため、音像や空間の存在感が一層はっきりする。

一言で言うなら、音のひとつひとつが正しいエネルギーを持ったということである。単なるフィルターなどと決定的に違うのはこの点で、ノイズが取れるだけではなくエネルギーそのものが正確で力に損失がない。それが再現性全般にわたって幅広い音質改善の要因となっている。ES-1200はそうした電源機器である。

(井上千岳)

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